6 登録完了とお引っ越し
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
受付嬢「それじゃ、登録料、3人で1,500リル、お願いしますね」
おにぃ「は、はい。これでお願いします。」
そう言っておにぃは大銀貨を2枚取り出します。
受付嬢「2,000リルですね。お釣りが500リル、小銀貨5枚になります」
受付嬢「それとこれが、みなさんの登録証になります。」
米軍のドッグタグみたいなモノが付いたネックレスっぽいモノを3つ、ねぇねがうけとります。
ねぇね「これは、おにぃの、これは私ので、はい、おチビちゃんはこれね」
文字が読めるねぇねにどれが誰用の登録証なのか分けてもらい、全員首にその登録証を装着します。
これで、身分証をゲットできたことになります。
(やったー! これで町で生活できるぞ~!)
そして、おにぃがお釣りを受け取ったところで、ワタシは受付嬢さんに質問してみます。
「受付さん、すいません。質問、いいですか?」
受付嬢「はい、かまいませんよ」
「ワタシたち、お宿をとりたいんですけど、お勧めとかありませんか?」
受付嬢「宿? それなら、ハンターギルドの裏に、1級ハンター向けの宿舎があるけど、どうかしら?」
おにぃ「ハンターギルドの裏?」
「宿舎ですか?」
受付嬢「ええ。この建物の裏庭に、大きな宿舎と広場があるの」
受付嬢「あまり稼げない1級ハンターの救済措置として、そこを低額で貸し出しているのよ?」
「お値段は、おいくらですか?」
受付嬢「宿舎は大部屋で、1日ひとり2リル。広場は自分でテントを用意する必要があるけど、1日1リルよ?」
「広場はひとり当たりの広さとか、決まっているんですか?」
受付嬢「広場に行けば分かると思うけど、ひとり分のスペースが線引きされているわよ」
「ねぇね、おにぃ、いいよね?」
ねぇね「うん」
おにぃ「もちろん」
「それじゃあ、ワタシたちに広場を貸してください」
その場で銅貨3枚払って、広場を借りたワタシたちでした。
そして早速、ハンターギルドの裏庭の広場へやってきたワタシたち3人。
おにぃ「結構広いな~」
400メートルリレーができそうな、学校の校庭ぐらいの広さがある裏庭の広場。
これだけ広ければ、スラムのねぐらから、ガラクタという名のワタシたちの財産を持ってきても大丈夫そうです。
ねぇね「この白線がひとり分なのかな?」
裏庭の広場には、縦横2メートルぐらいの正方形が多数、白線で引かれていました。
「でも、誰もいないね~」
たぶんみんな、宿舎にお泊りしているのでしょう。
裏庭の広場の利用者は誰もいないみたいです。
(この裏庭の広場、小石もゴロゴロしているし、いくらテントを張っても、寝心地とか悪そうだしね~)
(やっぱりみんな、宿舎を選ぶよね~)
時間はまだお昼前。
今からはじめれば、夜までには余裕でお引っ越しを終えることができるでしょう。
「ねぇね、おにぃ、スラムのねぐらから、お引っ越ししちゃいましょう」
おにぃ「おう!」
ねぇね「そうね!」
ということで、スラムのねぐらに戻ってきたワタシたち3人。
ボロボロだけどワタシたちにとっては貴重なお鍋やらお皿やらを、ハンターギルドの裏庭の広場まで運び出さなければなりません。
しかも、最近ワタシが【想像創造】で創り出した【無洗米 コシヒカリ 愛知県産 5kg】や【湯船 FRP製 120×70×80】といった、重たいモノ、大きなものも運び出さなければなりません。
(う~ん、輸送に使えそうなモノ・・・)
(そうだ、アレを創り出そう!)
(【想像創造】!)
そうして創り出したモノは、
【アルミ製折り畳みリアカー ノーパンクタイヤ仕様 全長240×全幅116×全高81cm 質量40kg 耐荷重350kg 89,800円】
これなら、大きな湯船も運べます。
おにぃ「お~、すげぇ~」
ねぇね「この銀色はなあに?」
「これはね、こうして組み立てるとね、じゃじゃーん、荷車になるので~す!」
おにぃ「すげぇ~、ホントすげぇ~!」
ねぇね「この荷車になら、お荷物全部載せられそうだね」
そんな会話をしている時でした。
目の前に突如、ワタシのステータス画面が出てきました。
名前:アミ
種族:人族
性別:女
年齢:5歳
状態:栄養失調
魔法:【なし】
スキル:【想像創造】レベル2(2回/日)
どうやら、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。
(やった! 【想像創造】がレベル2になって、1日2回使えるようになった!)
今日は先程リアカーを出したので、あと1回、なにかを創り出せることになります。
(ていうか、何気に、ワタシのお名前、【アミ】に変わってるし・・・)
どうやらワタシのお名前は【アミ】で決定しちゃったみたいです。
(ま、まあ、とにかく今は、お引っ越ししちゃわないとね)
気持ちを切り替えて、3人でスラムのねぐらから完全撤退を開始するワタシたちなのでした。
荷物を満載したリアカーを引いて、スラムのねぐらからハンターギルドの裏庭の広場に戻ってきたワタシたち3人。
アルミ製のリアカーのノーパンクタイヤと車軸のベアリングがいい仕事をしてくれまして、おにぃひとりでも全然余裕でリアカーを引けました。
ちなみに5歳児のワタシは体力的にアレだったので、途中からリアカーに乗せてもらいました。
(ワタシを乗せたから、荷物の総重量的には100kg近くになったと思うんだよね)
(それでもおにぃひとりで引っ張ってこれるんだから、このリアカーは当たりだね)
そんなことを考えていると、
おにぃ「オレたちの新しいねぐらの場所、どこにする?」
ねぇね「私、あまり目立たないところがいい」
そんな会話が始まりました。
改めてハンターギルドの裏庭の広場を見渡してみると、手前には小石やちょっとした雑草が生えている程度の比較的整備されている場所があり、更にその奥には、背の高い雑草が生い茂っている場所が見えます。
それを見てひらめいたワタシは、
「一番奥の背の高い草むらとの境目にしよう」
おにぃ「そんなに奥? 草むらが邪魔じゃない?」
「草むらを利用して、目立たないように生活するので~す」
ねぇね「目立たないのは賛成~」
ということで、ハンターギルドの建物から一番遠い場所、2メートル近い背丈の雑草が生い茂る所の手前に陣取ることにしたワタシたち。
その理由は、ちょっと思いついたことがあったからです。
まずは、整備されている裏庭の広場の一番奥、草むらの手前ギリギリに、スラムのねぐらから持ってきたボロ布や木の板などを組み合わせて、テント(のように見えなくもないモノ)を建てます。
そして、そのテントの裏側、奥の背の高い草むらの雑草を踏み倒していき、子供ひとりが通れる道を作っていきます。
そして、草むらを5メートルほど進んだら、そこに、さらに5メートル四方ほどの広場を作っていきます。
(広場といっても、ただ雑草を踏み倒しているだけですけど・・・)
そんな感じで準備ができたら、
(ここは仮住まいだから、移動できて、お家にできるモノ・・・)
(よっし! 外国製の大きなキャンピングカーを【想像創造】!)
(・・・ん? あれ? 創れない?)
(それじゃあ、もっと小さなヤツで、軽トラベースのキャンピングカーを【想像創造】!)
(あれれ? これもダメ?)
(それじゃあ今度は、軽のワゴン車を【想像創造】!)
(むむむっ? これもダメか~)
(もうこの際、中古の安い軽のバンでいいから、【想像創造】!)
【サン〇ーバン 660 4WD 3AT シルバー 走行距離15.5万キロ 148,000円】
「やったー! やっと創れた!」
(【想像創造】って、創れるものとダメなモノがあるみたいだね)
(その差はなんだろう?)
(大きさかな? それとも重さ?)
(でも、軽ワゴンと軽バンは大きさも重さもほぼ一緒だし・・・)
(ん? もしかしたら、お値段かな?)
(あんまりお高いモノは創れないのかな?)
(これは今後、検証してみる必要があるかも・・・)
私がひとり物思いにふけっていると、ねぇねとおにぃが騒ぎ出しました。
おにぃ「な、なんだ? これ」
ねぇね「なあに? このキレイな銀色の鉄とピカピカのガラス窓?」
「これは、またの名を『群馬のポ〇シェ』と一部で呼ばれているかもしれない、リアエンジンの自動車」
「ワタシたちの新しいねぐら、軽パコ(ケッパコ)です!」
ねぇね「ケッパコ?」
おにぃ「なんだ? それ」
「まあ、アレです。雨風しのげる移動可能なお家だと思ってね?」
「これはなんと、イザとなったら移動することができるんだよ?」
おにぃ「へぇ~、なんだかわかんないけど、ここに住めるのか?」
「今からこれが、ワタシたちのお家なのです!」
ねぇね「やったー! キレイなお家~!」
そんな感じで、スラムのねぐらからのお引っ越しは無事終了です。
ハンターギルドの裏庭の広場の一番奥で、草むらの手前のボロテントモドキで生活しているように見せかけて、実際はそのさらに奥の草むらの中、軽パコの中で生活するワタシたちなのです。
(とりあえず、一応、脱スラムできました!) \(^o^)/
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