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58 謝罪会議

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


マスター「さっきはすまねぇ。もっと早く気が付くべきだった」

アイリーン「遅くなって本当にごめんなさい」

ここはいつもの会議室。

ワタシたち3人が教会からの指名依頼を断ったことによって発生したひと騒動。

それがようやく落ち着いたところで、今度は会議という名のお詫び会が急遽開かれてしまいました。

前にも会ったことがあるハンターギルドのお偉いさんたちに取り囲まれて、平謝りされているワタシたち3人です。

支部長ローガン「『シュッセ』の3人、相済まなかった。この通りだ」

そう言って頭を下げたのは、この中で一番偉い、ハンターギルドの支部長さんです。

支部長ローガン「職員からの報告で、状況はおおよそ把握しておる」

支部長ローガン「ハンターギルドの職員がお主ら3人の意向を無視し、おのが都合を押し付けてしまった」

支部長ローガン「あまつさえ、ギルド脱退まで強いようとしたことは、こちらの重大な過失だ」

支部長ローガン「後ろ盾になると約束していたにもかかわらず、この仕打ち」

支部長ローガン「本当に申し訳ないことをした」

支部長さんの動きに合わせて、全員でワタシたちに頭を下げる、ハンターギルドの幹部の皆さん。

なんだかいたたまれなくなってしまいます。

おにぃ「だ、大丈夫です。オレたちは平気です」

ねぇね「そうです。大丈夫です。ね? おチビちゃん」

ワタシ「うん。ハンターギルドを辞めなくていいなら、ぜんぜんへーき!」

ハンターギルドは、ワタシたち3人がようやく手に入れた、それなりに居心地のいい居場所です。

身分証のこともありますし、全てなかったことにするには、あまりにももったいないモノです。

そこを辞めなくて済むのであれば、教会のお偉いさんに睨まれようが、ワタシたちにはどうでもいいことなのです。

支部長ローガン「そう言ってもらえるのはありがたい」

支部長ローガン「だがこのままお主らに何も償いなしともいかんじゃろうて」

支部長ローガン「もちろん原因を作ったあの職員には処罰を下し、お主らと金輪際関わらせることはせぬ」

支部長ローガン「他になにか、ハンターギルドに、してほしいことや、要望はないかの?」

支部長ローガン「できる限りのことはさせてもらうつもりじゃ」

一番偉い人にそこまで言ってもらえると、逆にちょっと委縮してしまいます。

すると、ねぇねとおにぃが要望を口にしました。

ねぇね「わ、私は、さっきのあの人、神様のお名前を勝手に使っている人と、二度と会いたくありません!」

おにぃ「オレもです! というより、教会のやつらと、顔を合わせたくない! です」

思いのほか強い口調のふたりに驚いてしまいましたが、ねぇねとおにぃが嫌だといっていることは、ワタシも嫌です。

だから、ワタシの要望もねぇねとおにぃと一緒です。

ワタシ「ワタシ、今後『一切』、ワタシたち3人が教会と関わり合いにならないようにしてほしいです」

ワタシ「それでいいよね? ねぇね? おにぃ?」

おにぃ「もちろん! おチビ、ありがとう!」

ねぇね「うん。教会に行かなくても、神様はどこでも見ていらっしゃるもの」

副支部長イーサン「しかし、それについては大丈夫だと思いますよ?」

副支部長イーサン「異端者認定などと口走っているくらいですし、教会側から接触してくることは恐らくないと思います」

ワタシ「いいえ、違うんです。ワタシは『一切』関わり合いになりたくないんです」

アイリーン「ふふん? りょーかいよ! それはあなたたちの納品物も含まれるってことでいいのよねっ?」

ワタシ「はいです!」

さすが、仕事ができるプロの受付さん。

ワタシの意図を完璧に理解してくれます。

副支部長イーサン「でも申し訳ありませんが、ハンターギルド自体が組織として教会との関係を完全に断つことはできません」

副支部長イーサン「そこはご理解ください」

ワタシ「そこは平気です。あくまで、ワタシたち3人と教会だけのお話ですので」

これでお話は終わりかな? と思ったら、マスターさんから質問が飛んできました。

マスター「それで、異端者認定の方はどうするんだ?」

購買部ハンナ「異端者認定なんてされちまったら、買い物とか、生活に支障をきたすかもしれないよ?」

これについては大丈夫です。

スラムにいたワタシたちは、今まで町のひとにまともに相手してもらえませんでした。

つまり、異端者認定されようが、何も変わらないのです。

おにぃ「あの、それは今までと変わらないので平気です」

ねぇね「もともと、町のお店のほとんどで、まともに相手してもらえませんでしたし」

マスター「そ、それにしたってよ・・・」

おにぃ「教会が何を言おうと、オレは気にしません」

ねぇね「また優しいお店を探していけばいいことですし、きっと大丈夫です」

そのとき、ふと、ひらめいちゃいました。

ワタシ「あっ! そうだ! どうせなら、異端者とか言ってモノを売ってくれないお店、そんないじわるするお店に、おなじことを味わってもらいましょ~!」

マスター「どういうことだ?」

ワタシ「さっきの教会と同じで、そんなお店はワタシたち、『一切』関わり合いになりたくないで~す!」

アイリーン「教会の言いなりになっているお店には、『シュッセ』関連の商品は渡さないってことね?」

購買部ハンナ「それなら私にお任せだよ? そういった情報は購買部が把握しているからね?」

マスター「つまり、教会派と全面対決か!」

副支部長イーサン「そうなると、ハンターギルドが国王派であると捉えられかねませんが?」

購買部ハンナ「いちハンターの扱う商品の売り先ごときで、ハンターギルド自体が判断されるってのかい?」

副支部長イーサン「ですが、『シュッセ』が提供する物品の影響力、今後どうなることかわかりませんよ?」

アイリーン「確かに、この後のお願いも含めると、多大な影響力になる可能性は十分にあるでしょうね」

マスター「ハンターギルドは国を跨いだ中立組織だ。そこは何とでも言い訳できるだろ?」

ハンターギルドの幹部さんたちが、喧々諤々のお話し合いをはじめてしまいました。

(なんだか派閥争いみたいなのが出てきちゃいましたよ?)

(やっぱりどこにもそういうのあるんだね~)

そんなことを思っていると、支部長さんがまとめてくれました。

支部長ローガン「うむ、相分かった。『シュッセ』の3人が例え教会から異端者認定されようが、ハンターギルドは庇護すると約束する」

支部長ローガン「そして今後一切、教会及び教会派に属する者達に、『シュッセ』と『シュッセ』が扱うモノを関わらせないと誓おう」

ワタシたち「「「ありがとうございます」」」

なんだか途中、よくわからない派閥争いみたいなお話も出てきましたが、結果として、おにぃが嫌いな教会とそのお仲間さんたちと離れられることになりました。

良かった良かった。

(*^ー゜)v


(派閥争いといえば、ワタシ、ご飯派なんだ~)

(でも、ギルドの食堂でマスターさんが出してくれるお夕飯、パンしか見たことがないんだよね~)

(今度お米探してみようかな~)

(それとも【想像創造】でワタシがお米を普及させちゃおっかな~)

(お米を食べてもらえれば、きっとご飯派は増えると思うんだよね~)

(*´∀`*)


オトナの皆さんが真剣に議論している中、ひとりだけ違う派閥争いを画策するおチビちゃんなのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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