54 教会からの指名依頼
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ビーちゃん様の凸を受けた翌朝。
昨夜、残り2回使えた【想像創造】で、そろそろ残り少なくなっていたワタシたちの朝食のかなめ
【無洗米 コシヒカリ 愛知県産 5kg 2,280円】
と、ご飯をより美味しくいただくために、ついに、アレに手を出してしまったワタシ。
【カレーパウダー S&〇 特製カレー粉 400g 赤缶 1,285円】
この黄金のパウダーと無洗米を一緒に炊き込んで、今朝の朝食は、具のないカレー炊き込みご飯です。
おにぃ「うぉ~、なんだ~? これ、すごくいい匂いするぞ~?」
ねぇね「嗅いだことない匂いだけど、おいしそ~」
ワタシ「でしょでしょ? カレー粉は何でもおいしくしちゃうんだ~」
カレーが嫌いな子供はいません(たぶん)。
今朝は、朝カレーと洒落込んでみたワタシたち3人なのでした。
そんな、ちょっとだけリッチな朝食をかっ込み、朝の少し遅い時間に【ジョシュア雑貨店】へやってきたワタシたち3人。
今日はいつものはちみつと石鹸の納品日なのです。
ワタシたち「「「こんにちは~」」」
ワタシたちのご挨拶と同時に、お店の奥から、ジョシュアさんとジェーンさんが笑顔で出迎えてくれました。
ジョシュア「いやぁ~、いらっしゃい!」
ジョシュア「おとといはありがとうね! ご領主さまには、とても満足していただけたようだよ」
ジェーン「本当にありがとうね。もう、あんたたちには感謝の言葉しかないよ」
そんなお言葉をいただいて、ワタシたちも笑顔です。
ワタシ「お役に立てて、よかったです」
おにぃ「よかったです」
ねぇね「ジェーンさんに喜んでもらえて、うれしいです!」
特にねぇねは満面の笑顔。
そんなねぇねが可愛かったのか、ジェーンさんも思わずねぇねの頭をナデナデなのでした。
ちなみに、【ジョシュア雑貨店】での納品物は、
【はちみつ ブレンディッド 1200g 4,800円】
【ハーブソープ お歳暮ギフトセット ローズ6個 ラベンダー6個 カモミール6個 2,500円】
の2つを1つにまとめた、
【ジョシュア雑貨店納品セット はちみつ ブレンディッド 1200g、ハーブソープ お歳暮ギフトセット ローズ6個 ラベンダー6個 カモミール6個 7,300円】
として【想像創造】できちゃいました。
何回も想像しているからなのか、理由は定かではありませんが、1回の【想像創造】で済むので、とっても助かります。
そんな感じで朝からとっても気分がいいワタシたち。
【ジョシュア雑貨店】での納品を終えると、ルンルンと足取りも軽く、ハンターギルドにやってきました。
その目的は【ジョシュア雑貨店】の納品完了報告をするため。
そして今日は、ハンターギルドへの納品日でもあります。
ワタシ「まずは【ジョシュア雑貨店】の常設依頼完了の報告をして、ハンターギルドへの納品は、そのあとマスターさんに声をかければいいのかな?」
おにぃ「そうだな」
ねぇね「最初の納品の時はマスターさんだったもんね」
そんな会話をしつつ、いつもの受付に向かったのですが、アイリーンさんは席を外しているみたいで見当たりませんでした。
どうしようかと悩んでいると、たまに見かける若い受付の女性、アイリーンさんの部下のイライザさんが、受付で男性とお話していました。
男性は黒い宗教関係者を思わせる服装で、明らかにハンターギルドに来たお客さんです。
(お客さんが来てるみたいだし、先にマスターさんのところに行った方がいいかな?)
そう思っていたら、ワタシたちの姿を目にしたイライザさんが、受付から大声でワタシたちを呼び始めました。
イライザ「あ! 『シュッセ』の3人ちょうどよかった! こっち来てこっち!」
男性のお客さんのことは気になりましたが、依頼の完了報告をしてもらえそうだったので、渡りに船とばかりに、イライザさんのところへ向かいます。
ワタシたちが受付窓口に到着すると、そのお客さんらしき男性とイライザさんが、ワタシたちをよそに会話をはじめました。
中年男性「この子供たちが例のハンターですか?」
イライザ「はい、そうなんです」
中年男性「ふむふむ。なるほど。まあいいでしょう」
イライザ「それでは?」
中年男性「ええ。先程お話したとおりに進めてもらって構いません」
なんだかよくわかりませんが、ワタシたちにチラチラと目線を向けつつ、お話が進んでいるようです。
すると、ワタシの右手がちょっと痛くなりました。
どうやら、ワタシと手をつないでいたおにぃが手に力を込めたみたいです。
ワタシが不満を表明するために、おにぃの顔を覗き見ると、なんだかとても怖いお顔になっています。
(おにぃがあの男のひとを睨みつけてる? なんだろう、なにかあったのかな?)
ワタシ「ねえ、おにぃ。手が痛いよ?」
おにぃ「え? あぁ、ごめんごめん。ちょっと力んじゃったかも」
ワタシ「うん平気だけど、おにぃどうしたの?」
おにぃ「いや、別に、どうもしてないさ」
そんな会話をしていると、中年男性との会話が終わったのか、受付のイライザさんがワタシたちに話しかけてきました。
イライザ「おめでとう! 『シュッセ』にとって朗報ですよ?」
イライザ「こちらの方は教会からおみえの助祭様でね? あなたたちのために、指名依頼をしてくださることになったの」
イライザ「あなたたちが領主館に納めている『黄金色の蜜』を御所望なのだそうよ」
助祭「そういうことだ。神のお導きに感謝を」
どうやらワタシたちが【ジョシュア雑貨店】経由で領主館にはちみつを納めていることを教会のひとが突き止めたみたいです。
(まあ、特に隠していたわけじゃないから、いつかはバレるとは思ってましたけどね~)
そんなことを考えていると、意外な人物から強い口調の言葉が発せられました。
おにぃ「オレは! 教会のためになんて! 絶対に! ヤダ!」
ビックリしておにぃの顔を覗き込むと、助祭様と呼ばれた男性のことを、まさに親の仇のように睨みつけていました。
(おにぃ、さっきからどうしたんだろう。このひとと昔なにかかあったのかな? それとも教会?)
そんな考えが浮かびましたが、なんにせよ、おにぃが嫌なことをワタシが引き受けることはあり得ません。
なので、ワタシもキッチリお返事しておくことにします。
ワタシ「イライザさん、ワタシ、おにぃが嫌なら、その指名依頼は受けません」
ワタシ「ねぇねもいいよね?」
ねぇね「もちろん」
イライザ「え? おチビちゃん何言ってるの?」
イライザ「教会からの指名依頼だよ?」
イライザ「こんなチャンス、一生に一度ぐらいに稀なんだよ?」
受付のイライザさんが、信じられないとばかりに語り掛けてきますが、ワタシには響きません。
ワタシにとっては、おにぃが嫌ならそれが答えなのです。
ということで、ワタシ的にはそれでお話は終わったと思ったのですが、ここで助祭様と呼ばれていた中年男性が会話に入ってきました。
助祭「お前たち、神のご意思に背くと言うのか?」
どうやら彼にとって、はちみつをゲットすることは、神様のご意思のようです。
(神様って、甘党なんだね~)
そんなことを思っていたら、ワタシ以外からの反論がはじまりました。
ねぇね「そんなの、神様のご意思でもなんでもではありません」
ねぇね「神様のお名前を、そんなことのために使って、恥ずかしくないんですか?」
ねぇね「神様は私たちの行いを、いつでも見ておられますよ?」
おにぃ「教会の腐った連中が、ただ甘い蜜を食べたいだけじゃないか」
おにぃ「それのどこが神様の意思だって言うんだ」
おにぃ「もしそれが本当に神様の意思だというんなら、そんな神様、願い下げだ!」
ねぇねもおにぃも、言う時は言うタイプのようです。
助祭「くっ。生意気な。この私に、なんとも靦然たる物言いよ」
助祭「もはやお前たちは神の教徒ではない。異端者として認定し、この町で生活できぬようにしてくれようぞ!」
イライザ「ちょ、ちょっと待ってください」
イライザ「助祭様、どうか、どうかご慈悲を」
イライザ「あなたたちも、すぐに発言を撤回して、謝りなさい」
なんだかいろいろヒートアップしてきましたが、とりあえずワタシは疑問に思ったことを聞いてみます。
ワタシ「あの、異端者認定? それってどうなるの?」
イライザ「教会から異端者とされてしまったら、この町で人として生活できなくなっちゃうわよ?」
イライザ「買い物もできなくなるし、食事も宿泊も、何もかも拒否されちゃうのよ?」
「え? それだけ? それでおしまいなの?」
意外と大したことないな、そんな感想がワタシの口をついて出てしまいました。
イライザ「え? それだけってどういうこと? 大変なことじゃない!」
「だってワタシたち、つい先日まで、この町でひととして扱ってもらえませんでしたよ?」
「今だって、ちょっと怪しいぐらいですし」
そう、スラム出身のワタシたち的には、今までと全く変わらない扱いです。
むしろ、異端者というひと扱いされる分、以前の全くひと扱いされていなかった状態よりは、多少マシなのかもしれません。
ということで、教会から異端者認定されようが、特に問題なさそうです。
ワタシ「教会とか神様とかよくわかりませんが、おにぃが嫌なその指名依頼は絶対に受けませ~ん」
ワタシ「ワタシたちを異端者認定したければ、どうぞご自由に~」
ねぇねとおにぃ最優先のワタシは、きっぱり拒否なのでした。
(〃>_<〃)
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