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53 お庭でお遊び その4

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ご領主さまからの呼び出しという名の、お貴族様によるプレゼントお強請り会、そんな大イベントの翌日。

今日は全く納品がない日です。

おチビで幼児なワタシは、連日のストレスがそろそろピークに達しつつあるので、今日は完全休養日。

今日はどこへも出かけず、お家でゆっくり遊んで過ごすと決めています。


(最近いろいろあって疲れたな~、今日はお家でのんびりしよ~)

(今日はなにしようかな~。また新しい遊具でも創って、みんなと遊ぼうかな~)


そんなことを考えていると、早速おともだちが遊びに来てくれました。


アリス「おはよ~。昨日のブランコ楽しかったから、今日も遊びに来ちゃった~」


見かけによらず意外とアクティブなアリスちゃんが、朝もはよから遊ぶ気満々です。


「アリスちゃん、おはよ~」


ねぇね「いらっしゃ~い」


おにぃ「よぉ、早いな。また、リバーシでもするか?」


おにぃが早速リバーシに誘っていますが、アリスちゃんは違うんです。アリスちゃんはそうじゃないんです。


(きっとアリスちゃんは、体を思いっきり動かしたいんだよ? 発散したいんだよね? いろいろと)


そう思ったワタシは、コッソリおにぃを誘導します。


「おにぃ、アリスちゃんにトランポリンの使い方、教えてあげて?」

「きっと気に入ってもらえるはずだよ?」


おにぃ「そうか? それじゃあそうする」


アリス「とらんぽりん? それってどんなの?」


「ぴょんぴょん飛び跳ねるの。飛んでるみたいで面白いよ?」


アリス「ブランコよりも?」


おにぃ「どっちも楽しいけど、オレはトランポリンの方が好きかな」


ねぇね「私はおチビちゃんが創ってくれたものなら、なんでもみんな好き~」


そんな会話をしつつ、ワタシは次の遊具を考えます。


(う~ん、次の遊具はどうしようかな~)

(楽しい遊びって、やっぱり日ごろの生活では体験できない動きとかだよね~)

(だとすると・・・)

(そうだ! アレを【想像創造】!)



【回転型グローブジャングルジム 高さ2200mm 直径2050mm 484,000円】



(やった~! 創れた~!)


目の前に現れたのは、カラフルな鉄のパイプが球形に組まれたジャングルジム。

しかも、その球形のジャングルジム自体がぐるぐると回転するというオマケつき。

登ってよし、回してよしのお得な遊具です。


ねぇね「あ! またおチビちゃんが何か創ったんだね?」


近くにいたねぇねが早速リアクションです。


「じゃじゃ~ん。これは回転ジャングルジムという遊具で~す」

「登って遊んだり、ぐるぐる回して遊んだり、いろいろできて楽しいよ?」


そんな会話をしているときでした。


女の子「ここなのね? お邪魔するわよ~?」


どこかで聞いたことがある声が、ワタシたちのお家のハンターギルド側の入り口方向から聞こえてきました。

そして間もなく姿を現したのは、金髪サイドドリルが勝気な笑顔を引き立たせている西洋的な美少女と、兵士のような格好をした男性2人。

昨日大きなぬいぐるみをプレゼントしたご領主さまのお嬢様が、護衛を2人ともなって、ワタシたちのお家に凸してきたのでした。


お嬢様「なにこれなにこれ? なんなのここ?」


ワタシたちのお庭をみて、興奮気味に語り掛けてくるお嬢様。

正直、どう接すればいいのかわかりません。


(お嬢様はお貴族様だよね? 普通にお話して怒られないかな?)


そんな思いがワタシの表情に出ていたのか、お嬢様から気軽な感じで話しかけられてしまいました。


お嬢様「みんな同じ年ごろなんだから、気軽に話しかけてちょうだいね?」

お嬢様「私の名前はベアトリス。『ビー』でも『トリス』でも、好きなように呼んでちょうだいね?」


そんな、見た目と違ってかなり気さくなお嬢様。

ワタシは警戒レベルを数段階さげて、普通に話しかけてみることにしました。


「それじゃあ、ビーちゃん様って、呼んでいいですか?」


ベアトリス「え? 『ちゃん』の後ろに『様』がつくの? なんだかかぶってない? 別にいいけど」


一応お許しをいただいたみたいなので、質問を続けることにします。


「ビーちゃん様は、なにしにワタシたちのお家に来たの?」


ベアトリス「そう、それなんだけど、昨日、あなたたちが乗って来たっていう、足で漕いで進む乗り物? それを見に来たの」


どうやらビーちゃん様の目的は、三輪自転車みたいです。


(あれだけ堂々と領主館に乗り付ければ、目立つのも当然ですよね~)


ということで、早速三輪自転車を見てもらおうと思ったのですが、


ベアトリス「でもその前に、この草むらの中にある大きなモノは一体何なの?」

ベアトリス「見たことがないモノばかりなんですけど?」


ビーちゃん様はワタシたちのお庭にある、遊具たちに興味津々のご様子です。

それならば、とうことで、一緒に遊んじゃいましょう!


「それじゃあ、ビーちゃん様も一緒に遊びましょ?」


ベアトリス「え? アレって、遊び道具なの?」


「うん、そうなの。まずは、あの大きなカゴみたいなヤツ。トランポリンって言うんだ~」


ベアトリス「とらんぽりん?」


「そうそう。今からおにぃとアリスちゃんが遊ぶところだったから、一緒にどうぞ?」


おにぃ「お、オレが、使い方を説明する、しますです」


アリス「よ、よろしくお願いします」


ベアトリス「よろしくね? そんなにかしこまらなくてもいいわ。みんなで楽しく遊びましょ?」



ばよぉ~ん

びよぉ~ん

ぶよぉ~ん

べよぉ~ん

ぼよぉ~ん



ベアトリス「あはははっ! うはははっ!」


スカートをひらひらとたなびかせ、金髪ダブルドリルもぴょんぴょんと飛び跳ねさせ。

豪華なドレスなどもろともせず、トランポリンの中心付近で軽快に跳ね上がるビーちゃん様。

ドレスのスカート丈がかなり長くて幸いでしたが、下手をしたらパンちら案件でした。

さすがに遠慮したのか、おにぃとアリスちゃんはトランポリンの端でおとなしくポヨポヨ揺れている程度です。



スルル~


「うっひょ~」


続いてすべり台に突入したビーちゃん様。

まるでサッカー選手のスライディングタックルのような勢いです。



きぃ~こぉ~

ぎぃ~こぉ~


「そ~れ! そ~れ!」


さらにブランコに移動したビーちゃん様。

スカートを全く気にするそぶりも見せず、軽快に立ち漕ぎです。


そして最後は、本日出したてほやほやの回転ジャングルジムです。


「これはまず、おにぃ以外のみんなは中に入るかどこかにつかまってね?」


ベアトリス「そうなの? わかったわ」


ビーちゃん様はジャングルジムのてっぺんに鎮座し、アリスちゃんは中に入って外枠の鉄柱に寄りかかり、ねぇねはワタシを抱き寄せてジャングルジムの中央底に座りました。


「それじゃあ、おにぃ、このジャングルジムを回してね?」


おにぃ「ん? 回すのか? わかった」

おにぃ「いくぞ~? そーれっ」



ゴロゴロゴロゴロ

ぐるぐるぐるぐる


ベアトリス「ふわぁ~、なにこれ? 回ってるわ! 私の世界が回ってるわ!」


アリス「きゃぁ~、まわるぅ~、たのしぃ~」


「うわ~い。ねぇね、回ってるよ? 楽しいね?」


ねぇね「あわわわ、あわわわ、目が回る~」


「おにぃ、ある程度回ったら、おにぃもジャングルジムに飛び乗ってね? とっても楽しいよ?」


おにぃ「そうなのか? わかった、やってみる」


こんな感じで全ての遊具について説明し終わる頃には、ビーちゃん様はご機嫌でした。


ベアトリス「凄いわココ。楽しいことがいっぱい!」


「でしょでしょ?」


ベアトリス「ええ。もうずっとココにいたいくらいよ!」


そんな会話をしていると、今までずっと近くに控えていた護衛さんが声をかけてきました。


護衛「お嬢様。そろそろ御帰宅のお時間ですので」


ベアトリス「え~? もうそんな時間なの~?」

ベアトリス「まあ、約束だししょうがないわね」


どうやらビーちゃん様のタイムリミットが迫ってきたようです。

ということみたいなので、お別れのご挨拶でもしようかなと思ったのですが、


ベアトリス「それじゃあ、最後に昨日の足で漕いで進む乗り物を見せてくれるかしら」


今日、ビーちゃん様がここへ来た目的、三輪自転車が最後のメニューのようです。

早速おにぃに頼んで、お庭の隅に置いてあった



【オトナの三輪車 マウンテントライク24インチ 7スピードギア リアショッピングバスケット付き シルバー 43,900円】



を持ってきたもらったんですが、明らかにビーちゃん様には大きすぎです。


(さすがにオトナ用だけあって、これ、子供には大きすぎて乗れないよね~)

(それなら、もうちょっと小さい三輪自転車を、【想像創造】!)



【折りたたみ式三輪自転車 前輪20インチ・後輪18インチ 大容量前後カゴ付 3段ギア 耐荷重200kg シルバー 49,800円】



前世の記憶で高齢者が使っていたこれなら、子供でもなんとか乗ることができるでしょう。


ベアトリス「これ、もしかして、わざわざ私用に創ってくれたの?」


「これならビーちゃん様でも乗れるでしょ? もう帰るお時間みたいだし、これに乗って帰ってね?」


ベアトリス「え? これくれるの? おチビちゃん、ありがとう!」


ということで、ビーちゃん様には、そのまま乗って帰ってもらいました。


(三輪車って、誰でも簡単に乗れるから、便利だよね~)


そして嵐が去ったワタシたちのお庭。


おにぃ「なんだか驚いたな」


ねぇね「あのお嬢様、いろいろなところで見かけるよね」


ビーちゃん様はいろんなところで目撃されているみたいです。


アリス「私、ちょっと疲れちゃった。今日はもう帰るね?」


「うん。また今度ね~」


アリス「あ! そういえば、今度また指名依頼をするから来てほしいって、おばあちゃんが言ってた」

アリス「また一緒にポーション作ろうね?」


ねぇね「うん。とっても楽しみ」


おにぃ「またな~」


「バイバ~イ」


ということで、今日のお庭でのお遊戯会は解散なのでした。

今日はゆっくりするつもりだったワタシ。

でも、ご領主さまのお嬢様の登場というサプライズがあり、ちょっと気疲れしちゃいました。


(でも、新しいおともだちができちゃったかも!)

(ビーちゃん様、また遊びに来てくれるかな?)

(また一緒に遊んでくれるといいな~)


疲れも気にならないくらい、新しい出会いに期待でワクワクなワタシなのでした。

そんな楽しい今日の締めくくりに、昨日から創りたかったものを【想像創造】します。



【ミケネコさん 顔だけクッション 60cm×40cm 3,980円】



「ねぇね、これ、ねぇねにあげるね?」

「昨日、ビーちゃん様にあげたぬいぐるみのちっちゃいヤツだけど、もらってね?」


ねぇね「え? どうして・・・」


昨日、領主館の謁見の間でワタシが創り出した、大きなネコの抱き枕ぬいぐるみ。

創り出してすぐ、その大きなぬいぐるみにポフッと抱き着いていたビーちゃん様。

その姿を、うらやましそうに見つめていたねぇねのことを、見逃すワタシではありません。


「昨日渡せなくて、ごめんね?」


ねぇね「うんん。そんなこと・・・。おチビちゃん、ありがとう!」


そう言って、丸っこいぬいぐるみに抱き着き、頬ずりするねぇね。

以前、はちみつを食べたかったのに我慢していたねぇね。

あの時は、スラム脱出のことで頭がいっぱいで、大切なひとの気持ちに気づいてあげられなかったワタシでしたが、今は違います。

もう、そんな過ちは繰り返さないワタシなのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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