5 ハンターギルド
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
思わぬ大金を手にしたワタシたち3人は、その足でハンターギルドを目指します。
「ハンターギルドの登録料にいくら必要なのか分からないけど、これだけあれば、足りるよね?」
ねぇね「そうよね」
おにぃ「たぶんな」
ハンターギルドの場所は、おにぃがよく知っているみたいで、
おにぃ「ハンターギルドはこっち、早く行こうぜ」
そんな感じでおにぃに手をとられ、小走り気味に移動するワタシ。
本当は町の様子を歩きながらゆっくり見たかったのですが、ワタシが町の様子を楽しむ時間はあまりありませんでした。
しばらく歩くと、明らかに周りの建物とは様子が違う、立派な建物が目に入ってきました。
おにぃ「あそこ、あの一番デカい建物がハンターギルドなんだ」
石造りのその建物は、日本の昔の銀行とか、明治時代の政府関係の庁舎を彷彿とさせます。
(なんだかお役所みたいなところなのかな?)
大きな木製の扉を開いて中に入ると、向かって正面に受付カウンターのようなところが5つ。
その手前は円形の机と椅子が十数セット整然と並べられています。
右手奥にはバーのようなカウンター席があり、その近くの机では、食事をしている人たちが数人見受けられます。
(思ってたよりキレイで整然としてますね)
(これなら、酔っ払いに絡まれるなんてイベントは、ないかな?)
そんなことを考えていると、
ねぇね「どこに行けばいいのかな」
おにぃ「とりあえず、奥に行ってみようぜ」
女性「あらあなたたち、ハンターギルドは初めて?」
紺色の制服を身にまとった、キャリアウーマン的な美人さんが話しかけてくれました。
(この人は受付嬢さんかな? 案内係さんかな?)
おにぃ「オレたち、ハンターギルドに登録したいんですけど」
ねぇね「よくわからないので、詳しく教えてください」
女性「新規登録ということでいいのかしら?」
「はいです」
女性「あら? おチビちゃんもいたのね?」
女性「新規登録なら、一番左の受付窓口で聞いてみてね?」
ねぇね「わかりました」
おにぃ「ありがとうございます」
ということで、早速一番左の受付へ移動です。
おにぃ「すいません、新規登録について、聞きたいんですけど」
受付嬢「は~い。新規登録ですね?」
ねぇね「はい。お願いします」
受付嬢「ハンターギルドは、12歳以上ならだれでも登録できます」
受付嬢「登録すると最初は1級からはじまって、貢献度が上がると2級3級と上がって、ハンターの上限、最高峰は5級になります」
「え? 12歳?」
「12歳じゃないと、ダメなんですか?」
受付嬢「ん? あら、おチビちゃんも登録するのね?」
受付嬢「12歳未満は、仮登録という形での登録は可能よ?」
「仮登録?」
受付嬢「そう。まあ、見習いみたいな扱いになるわね」
受付嬢「だから、単独で依頼は受けられなかったり、12歳まで1級のままだったり、ちょっと制限がかかるわね」
「なるほど」
(12歳になっていないと、一人前の扱いはされないけれど、一応、登録はできる、そんな感じですかね)
ねぇね「あの、登録には、お金がかかりますか?」
受付嬢「ええ。市民証があれば、100リル。そうでない場合は、500リル必要です」
おにぃ「500リルか~」
ワタシたちは、市民証を持っていません。
なので、登録料はひとり500リル、3人で1,500リルということになります。
(けっこうお高いですね~)
(手っ取り早く身分証だけ欲しい、なんて考えてる人にはハードル高いですね~)
(逆に、そういうのを防ぐために、お高くしてるのかな?)
そんなことを考えながらも、お返事はひとつです。
「ワタシたち3人の登録、お願いします」
おにぃ「お願いします」
ねぇね「します」
受付嬢「それでは、こちらの登録申請書に、必要事項を書いてくださいね」
受付嬢「あっ、代筆は必要だったかしら?」
ねぇね「大丈夫です。私が書きます」
受付嬢「そう? それじゃ、お願いしますね?」
そんなやり取りの後、登録申請書を読み始めたねぇね。
そんなねぇねをタダ見ているだけのワタシとおにぃ。
ワタシは、生まれてこのかた、教育というモノを受けていないので、文字を読めませんし、書けません。
(まあ、前世の記憶を取り戻してからは、日本語とか、英語なら少しぐらいは分かるけど・・・)
おにぃは、多少なら文字を読めるみたいですが、書けるのは自分の名前だけみたいです。
ねぇねはスラムに来るまではかなりちゃんとした教育を受けていたみたいで、読み書きは完璧です。
ちなみに、おにぃとねぇねには、ちゃんとしたお名前があり、
おにぃのお名前は【マルコ】で、お歳は15歳
ねぇねのお名前は【シエル】で、お歳は13歳
らしいです。
ワタシはかなり小さいときにスラムに捨てられていたみたいで、名前があったのかすら分からない状態です。
ねぇね「とりあえず、名前と特技、アピールしたい場合は得意魔法とか書けばいいみたい」
ねぇね「どうする?」
おにぃ「なるほどな。それじゃ、得意魔法は書いておこうか」
ねぇね「いいの?」
おにぃ「オレの得意魔法っていったって、普通の火魔法だけだしな」
ねぇね「じゃあ、書いておくね」
おにぃ「よろしくな」
そんなねぇねとおにぃのやり取りを見上げながら、ちょっと焦り始めたワタシ。
(あれ? ワタシのお名前、どうすればいいの?)
(まさか、【おチビ】で登録はしないよね?)
そんなワタシの不安をよそに、ねぇねが書き終えたワタシの登録申請書を見せてきます。
ねぇね「おチビちゃんのお名前は【アミ】にしておいたわ。お友達って意味なの」
(え? ワタシのお名前だよね? ワタシに相談とかは?)
そんな感じで、ねぇねの独断先行で、ワタシのお名前は【アミ】に決まってしまったのでした。
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