45 山吹色のお菓子
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
【マダムメアリーの薬店】からの指名依頼を受け、ポーション作りを体験したり、久しぶりにそろばんをしてメアリーさんと楽しい時間を過ごしたり、アリスちゃんというはじめてのお友達ができた日の翌日。
今日は、【ジョシュア雑貨店】への納品もハンターギルドへの納品もない、全くのフリーな一日です。
ワタシはもうガツガツいかないと決めているので、今日はねぇねとおにぃと一緒にのんびりするつもりです。
(まあ、興味を惹かれる依頼があれば受けてみてもいいかな? それぐらいのスタンスです)
今朝はとりあえず、昨日の依頼完了報告会での一件、ぷんすかアイリーンさんへのフォローをしておきたいと思っているワタシ。
そのあたりの説明をねぇねとおにぃにもしておきます。
「ねぇね、おにぃ。ちょっと聞いてほしいのです」
おにぃ「ん?」
ねぇね「なあに?」
「あのね? 昨日の指名依頼の完了報告会のとき、アイリーンさん、最後にちょっとぷりぷりしてたでしょ?」
おにぃ「ああ、怒ってたっていうか、イライラしてた感じだったかな」
ねぇね「たぶんおチビちゃんのせいだと思うけど・・・」
「それでね、今日、今から、アイリーンさんにお詫びの意味を込めて、オトナの根回しをしようと思うの」
ねぇね「オトナの根回し?」
おにぃ「なんだそれ?」
「こちらの都合を聞いてもらえるように裏からコッソリする、オトナの常套手段なんだ~」
おにぃ「じょうとうしゅだん?」
ねぇね「よくわからないかも」
「そうなの。オトナにしかわからないことなの」
おにぃ「ふぅ~ん」
ねぇね「それで、なにするの?」
「贈り物をしま~す」
おにぃ「また何か創るのか?」
「そうで~す」
「ということで、例のヤツ、【想像創造】!」
【シングルモルトウィスキー ざきやま リミテッドエディション2017 43度 700ml ギフト限定 化粧箱 10,000円】
ワタシが創り出したのは、前世で見たことがある有名な贈答用のお酒。
(アイリーンさん、前にお酒が好きそうなこと言ってたし、きっとこれで正解のはず!)
おにぃ「ん? なんだかいつもより、だいぶ小さいけど」
ねぇね「もっと、バーンって、大きいのが出てくると思った」
「ふっふっふっ。これは贈り物ですから、そんなに大きくないのです」
胸をはり、なぜか自慢げなワタシです。
おにぃ「それで、これはなんなんだ?」
「これがオトナの贈り物。山吹色のお菓子です」
ねぇね「え? お菓子なの?」
ここでねぇねが「お菓子」という単語に食いつきをみせました。
(あ! そうだよね。お菓子と聞けば、やっぱり食べたくなるよね)
(でもごめんね、これは違うんだよ、これは・・・)
「ごめんね、ねぇね。これはオトナのひと用なの」
「だから子供のワタシたちは口にできないの」
ねぇね「オトナ用・・・そうなんだ・・・」
ちょっと残念そうなねぇね。
ねぇねのカワイイお顔がしゅんとしてしまいました。
「そうだ! アイリーンさんのとこ行ったら、そのあと、町のお菓子屋さんに行ってみようよ」
「アイリーンさんにおすすめのお菓子屋さんを聞いてみようね?」
ねぇね「うん、それはとっても楽しみ!」
お洋服を買いに出かけて以来、町に買い物に出かけていないワタシたち3人。
いまだに小さな子供たちだけで買い物に行くと、不躾な目線にさらされるので、あまり足を向けたくないというのが本音です。
でも今日は違います。
ねぇねがお菓子を食べたそうにしてるのです。
ここはお菓子屋さんに行くしかないでしょう。
ということで、さっさとアイリーンさんへの用事(オトナの根回)を済ませて、そのあとは町ブラしちゃいましょう。
いざ、ハンターギルドへ出発です。
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