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44 指名依頼の完了報告

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


【マダムメアリーの薬店】からの指名依頼は、とても有意義な時間を過ごせました。

まずは、今回の依頼主であり人生経験豊富そうなオトナのメアリーさんに、ねぇねとおにぃが将来有望な魔法使いだと認めてもらえたこと。

これはとても素晴らしいことです。

それにワタシは、メアリーさんとふたりだけで楽しくお話することができました。

ワタシがオトナのひとと1対1で長くお話しするのはたぶんはじめてで、とてもうれしかったです。

そして最後には、なんと、アリスちゃんというはじめてのお友達もゲットできちゃいました。

いいことずくめで、気分もほっぺも緩ませながら、ねぇねとおにぃと手をつないでハンターギルドに戻ってきたワタシたち3人なのでした。


時刻はいつもの夕方少し前。

早速、受付のアイリーンさんに、指名依頼の完了報告です。


「「「こんにちは~」」」


アイリーン「はい『シュッセ』のみなさん、おかえりなさい。依頼はどうでした?」


おにぃ「無事に終わりました」


ねぇね「これ、完了報告書です」


アイリーン「はい、承りますね」

アイリーン「報酬の処理はいつも通り、ということでよろしいですか?」


「すいません。今回は現金でお願いします」


今回の指名依頼の報酬は、50リルと、それほど多くありません。

なので、わざわざハンターギルドに預入はせず、現金として持っておこうと思ったのです。

税金と手数料を引かれた40リル、大銅貨4枚をおにぃが受け取ります。


おにぃ「ありがとうございます」


ねぇね「ございます」


これで依頼達成。

ワタシたち『シュッセ』は、なりたて1級ハンターにしては異例の、指名依頼をこなしたチームとなったのでした。

ちなみに今の私たちの手持ちの現金は、2,577リル、大銀貨2枚と小銀貨5枚と大銅貨7枚と銅貨7枚

全然減ってません。


(まあ、ワタシたちがお金使うのって、今のところ、マスターさんのところでお夕飯を食べるぐらいだしね~)


スラム出身のワタシたちには、お金の使い方というか、そもそも何を買うべきなのかすらわかりません。

食べ物以外にお金を使うという発想というか、知識というか、そういった情報があまりにも足りないため、お金はたまっていくばかりです。



アイリーン「それでは今日の指名依頼について、別室で詳細に報告してもらっていいですか?」


ということで、またもお馴染みの2階の会議室に通されたワタシたち3人。

会議室に入って、前回と同じ場所に座ろうと移動すると、前回ワタシが座った椅子の上に、厚めのクッションのようなものが敷いてありました。

アイリーンさんを振り返ると、右目で軽くウィンクが返ってきました。

たぶん、前回のお話合いの時、私の着座位置が低かったので、その対策をしてくれたのでしょう。

さすが、仕事ができるプロの受付さん。

細かい心配りもばっちりです。

そんな優しさ満点座り心地満点のクッションの上に、おにぃにぽすんと座らせてもらい、報告会スタートです。


アイリーン「『シュッセ』の皆さん、まずは初指名依頼の達成、おめでとうございます」


「「「ありがとうございます」」」


アイリーン「提出していただいた【マダムメアリーの薬店】からの指名依頼完了報告書では、大変好評価でした」

アイリーン「特に魔法の評価、魔力量と魔力制御の精度が極上だと評価されています」

アイリーン「最初の指名依頼ですし、とても素晴らしいと思います」

アイリーン「それで最後に確認なんですが、報告書の最後に、『今後、継続的に指名依頼を発注する』、とありますが、これは了承していますか?」


おにぃ「はい」


ねぇね「大丈夫です」


「帰り際、メアリーさんから今後も来てほしいと、お話をもらったので、報告書に書いてもらいました」


アイリーン「なるほど。それなら問題なさそうですね」

アイリーン「それでは今後も、【マダムメアリーの薬店】からの指名依頼を受けるということで、お願いしますね?」


「「「はい」」」


アイリーン「私からは以上ですけど、『シュッセ』の皆さんから、報告とか相談とか、些細なことでもいいんで、何かありませんか?」


おにぃ「えっと、いいですか?」


アイリーン「ええ、もちろん」


おにぃ「実はおチビがいろいろモノを創り出して、ポーションを作るときに使っちゃったんですけど」


アイリーン「いろいろ、ですか?」


おにぃ「はい。キレイなガラスでできた、水の量を量る器とか、ちょっとの重さを正確に量れるはかりとか」


ねぇね「あと、見たことがないカワイイ紙のノートとか、同じ模様の鉛筆だとかもありました」


アイリーン「それらは今ここに?」


「いいえ。アリスちゃんにあげちゃいました」


アイリーン「アリスちゃん?」


ねぇね「薬店のお孫さんです」


おにぃ「オレたちと一緒に、ポーション作ったんです」


アイリーン「なるほど。おチビちゃんが出したモノは、全部そのアリスちゃんが持っている、そういうことですね?」


「いいえ、違います。メアリーさんにもあげました」


アイリーン「メアリーさんにも同じものを?」


「メアリーさんには、【拡大鏡】と【そろばん】です」


アイリーン「【拡大鏡】は言葉からなんとなく想像できるけど、【そろばん】って?」


「手でパチパチする計算機です」


アイリーン「パチパチ? 計算機?」


「慣れるととっても早く計算できますよ?」


アイリーン「うん。全然わかんない」

アイリーン「はぁ~もう。とりあえず、一度直接【マダムメアリーの薬店】に行って、全部見せてもらってきます」

アイリーン「ひぁ~もう。ハンターギルドが後ろ盾になっている以上、すべてこちらで確認しておかなくちゃ・・・」

アイリーン「ふぁ~もう。おチビちゃんの創り出すモノがどんな影響があるか分かったものじゃないし・・・」

アイリーン「へぁ~もう。あれだけ何かあったらお話してって言っといたのに・・・」

アイリーン「ほぁ~もう。でも依頼の後の報告だから、しょうがないと言えばそうなんだけど・・・」


最初、丁寧だったアイリーンさんの口調。

お話の途中から徐々にくだけて親し気な感じに変わるのはいつものことです。

でも今日は、さらになんだか投げやりのような、ちょっと男性的な口調になっています。


(およ? アイリーンさん、なんか口調がいつもと違うよ? もしかして怒ってるのかな?)

(最後はなんだかブツブツ独り言みたいになってるし・・・)

(うむうむ。これはもしかして、ちょっとご機嫌ナナメなのかもしれないね?)

(そうだ! こういうときは、オトナの世界の対応で、山吹色のお菓子の出番だよね?)

(あとで、なにかアイリーンさんの好きそうなモノを、こっそりプレゼントしちゃおう!)

(賄賂を贈って、ご機嫌取りだ~!)


そんなことを思っていると、アイリーンさんがお話を続けます。


アイリーン「他には、何かありますか?」


おにぃ「と、特にないです」


ねぇね「だだ、大丈夫です」


ねぇねとおにぃもアイリーンさんの変化を敏感に感じ取ったようで、ちょっとビビり気味にお返事です。


アイリーン「どうやら私はこれからいろいろ確認しなければならないことができたみたいなので、今日はこれで解散にしますね?」

アイリーン「でも最後に私から一つだけ、言わせてね?」

アイリーン「なにかあったら、しようとしたら、ま・ず・先・に、相談してほしいな~」

アイリーン「特におチビちゃん! よ・ろ・し・い・かしら?」


「はぁ~い!」(あとで賄賂を贈りま~す!)


おにぃ「おチビ、絶対わかってないだろ」


ねぇね「あのお返事は、信用できないかも」


仕事ができるプロの受付アイリーンさんは、おチビな5歳児のちょっとズレた言動に、いろいろ振り回されちゃうのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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