40 メアリーおばあちゃんの悩み事
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
「んう~ん・・・ん?」
お部屋の隅にある長椅子に座ったまでは覚えているのですが、そこからの記憶がありません。
どうやらワタシ、その長椅子の上でお昼寝を満喫してしまったようです。
メアリー「おやおや、起きたのかい?」
同じ長椅子に腰かけていたメアリーさんから声をかけられました。
「・・・すいません、寝ちゃいました」
メアリー「いいんだよいいんだよ、おチビちゃんは寝るのが仕事みたいなもんなんだからね?」
そんな会話をしつつ、周りを見渡してみると、ちょっと離れた作業机では、アリスちゃんとねぇねとおにぃが、まだポーション作りをしているみたいです。
そして、ワタシと同じ長椅子に座っているメアリーさんは、文字と数字がびっしりと書かれた表のようなものとにらめっこしています。
「あの、なにを見てるんですか?」
メアリー「ん? これは薬草類の納品報告書だね。今月分をまとめたものなのさ」
メアリー「でも最近は歳のせいか、文字を読むのが大変でね。特に小さい文字は見にくくてしょうがないよ」
どうやらメアリーさんは、年齢からくる、いわゆる老眼になってしまっているようです。
先程から、報告書を顔に近づけたり遠ざけたり、目を凝らしては眉間にしわを深めています。
(う~ん。ここはメアリーさんに老眼鏡でもプレゼントしちゃおうかな?)
(あ、でも、視力って、ひとによって違うよね?)
(メガネだと、ピントが合わないかもしれないよね~)
(それじゃあ、アレにしよう! 【想像創造】!)
【読書用卓上拡大鏡 倍率切り替え機能付き(2倍 5倍 10倍) 据え置き・手持ち可能タイプ 5,280円】
(これなら少しは文字を読みやすくなるんじゃないかな?)
そう思ったときでした。
目の前に、ワタシのステータス画面が出てきました。
名前:アミ
種族:人族
性別:女
年齢:5歳
状態:発育不良 痩せすぎ
魔法:【なし】
スキル:【想像創造】レベル4(4回/日)
どうやら、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。
(やった! 【想像創造】がレベル4になって、1日4回使えるようになった!)
今日は3回【想像創造】したので、あと1回、なにかを創り出せることになります。
(あ! 状態が【低栄養状態】から【発育不良 痩せすぎ】に変わってる!)
(これって、一応、健康になってるってことなのかな?)
(まあ、それはともかく、今はメアリーさんに【拡大鏡】をあげなくっちゃだね)
「メアリーさん、メアリーさん、これ、使ってみてください」
メアリー「おや、なんだい? どこから出したんだい?」
メアリー「ん? これはもしかしてガラスかい?」
メアリー「いやでもそれにしちゃぁ、キレイで透明だし、それにやけに軽いんだね」
「これは【拡大鏡】といって、これをとおして見ると、大きく見えるんです」
「こうやって、その報告書の上に【拡大鏡】を持っていくと」
メアリー「ほぉ~、これは凄いねぇ」
メアリー「報告書の文字が大きく見えるよ」
「でしょ? これを使えばちゃんと報告書が読めるでしょ?」
「今日は楽しい指名依頼をしてくれたので、そのお礼です」
「もらってくださいな?」
メアリー「え? いいのかい? これはかなり高価なんじゃないかい?」
「今日は、ポーションの作り方とか、ねぇねとおにぃの魔法の将来性とか、とってもうれしいことを教えてもらえたので、そのお礼をしたいんです」
「ぜひ、受け取ってください」
メアリー「そうかい? ありがたいのは確かだけど、でもなんだかもらい過ぎのような気がするよ」
「う~ん。それじゃあ、ひとつ、ワタシのお願い、聞いてもらえますか?」
メアリー「いいともいいとも。なんだい?」
「また今日みたいに、ねぇねとおにぃにポーション作りの依頼をしてほしいんです」
メアリー「ん? そんなことでいいのかい? もちろんお願いするつもりだよ」
メアリー「定期的に来てもらえるよう、依頼を出すつもりだったんだ」
メアリー「ポーションには他にもたくさんの種類があるからね」
メアリー「あのふたりに覚えてもらうことは、まだまだ山ほどあるよ」
「やったー!」
メアリー「もちろん、おチビちゃんも一緒に来ておくれ?」
「はい。ありがとうございます!」
うんうんとうなずくきながら、にこやかに微笑むメアリーさんの糸目は、いつも以上にさらに細められるのでした。
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