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4 町に住むために

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


はちみつを売った帰りがけにスラムの屋台のお店に寄って、3人の靴(サンダルに近い)と野ネズミの干し肉と黒パンを買ったワタシたち3人。

これで見た目はほぼ町の子供に見えるようになりました。


(それにしても、靴もけっこうなお値段でしたね~)


サンダル3足で120リル、干し肉と黒パンを合わせて126リルの出費です。

これで残金は118リル、小銀貨1枚と大銅貨1枚と銅貨8枚です。


(これでとりあえず、最低限の身嗜みは整ったよね?)

(あとは・・・)


ワタシとしては、一刻も早くスラムから抜け出したいと思っています。

なので、町に住みたいと、ねぇねとおにぃに主張してみます。


「ねぇね、おにぃ、ワタシたち、キレイになったでしょ?」


ねぇね「ん? そうね」


「それに、お金も稼げたでしょ?」


おにぃ「そうだな」


「このお金で、町のお宿にお泊りできないかな?」


おにぃ「あ~、それは無理だな」


「え? なんで?」


ねぇね「私たち、身分証がないから、お宿にお泊りできないの」


おにぃ「市民証かどこかのギルドの会員証がないと、相手にされないんだ」


ねぇね「市民証は、市民権が必要だし・・・」


どうやら、お金があってもスラムからは簡単に抜け出せないみたいです。


「そうなんだ・・・」

「ギルドの会員証は?」


おにぃ「商業ギルドは、偉い人の推薦が必要だって聞いたことがある」


ねぇね「ハンターギルドなら制限なく入れるって、聞いたことがあるかも」


おにぃ「でも、登録費が必要だったんじゃなかった?」


ねぇね「そういえば、そんなこと聞いたことがあるかも・・・」


「それじゃ、明日、はちみつを売りに行ったあと、ハンターギルドに行ってみようよ」


おにぃ「そうだな」


ねぇね「聞いてみるだけ、聞いてみましょう」


ということで、明日の行動予定が決まりました。


そして翌日。


ねぇね「こんにちは~」


おにぃ「買取お願いしま~す」


今日は朝から例の親切な町のお店にはちみつを売りに来ました。

しかも、お店の正面から堂々と入店してです。


(なんだか、やっと人間らしくなった気がするよ)


そんなことを思いながら、店内を見渡します。

店舗内は、小皿やカトラリーといった小物類、根菜や小麦といった主食類、いろいろなモノが雑然と並べられています。

カウンター奥の棚には、小さな壺類がこちらは整然と並べられており、きっと高級品なんだろうと想像できる扱いの違いでした。


(あの壺の中身はお塩とか? 香辛料とか? ワタシたちの蜜もあの中にあるのかな?)


そんなことを思っていると、いつものふくよかな女性と、こちらもふくよかな男性が現れました。


女性「あら、いらっしゃい」


ねぇね「こんにちは」


おにぃ「今日も蜜を持ってきました」


女性「昨日の今日で、また採れたのかい?」


おにぃ「採れたというか――」


「わぁわぁ~、そ、そうです! 毎日採りに行っているのです!」


おにぃが余計なことを口走りそうでしたので、慌てて会話を遮るワタシ。


(危ない危ない。おにぃにワタシのスキルのこと、ちゃんと口止めしとかなきゃだった!)


そんなことを考えていると、


男性「ん? この子らか? 最近蜜を持ってくるスラムの子供ってのは」


女性「そうなの。でもスラムっぽくないでしょ?」


男性「あぁ。身ぎれいにしているようだね」


おチビなワタシが男性をじっと見つめていると、その視線に気づいたのか、ちょっと屈んでワタシに話しかけてくれる男性。


男性「私はこの店の店主でジョシュア。隣は妻のジェーンだ」

ジョシュア「君達が持ってくる蜜はとても良いモノだったので気になっていたんだよ」

ジョシュア「利益をもたらしてくれるお客さんは大歓迎だよ」


そう言って、ワタシに笑いかけてくれました。


(ワタシたちがスラム出身と知っていてこの対応、この人はイイ人みたいですね)

(それじゃあ、こちらも、それに見合った対応をさせていただきましょう)


ということで、おにぃにサインを送るワタシ。

ワタシのサインを見たおにぃがおもむろに取り出したのは、



【はちみつ ブレンディッド 1200g 4,800円】



のビン丸ごと。

中身は2回の買い取りで200gほど減っていますが、約1000gのはちみつを、透明なガラスビンごと買い取りに出してしまおうということです。

これは、朝、スラムのねぐらで3人で話し合ったのです。


「お店の正面から入って、とても対応が良ければ、残りのはちみつ、ビンごと全部売っちゃいましょう」


ねぇね「え? ビンごと? このビン、とっても珍しいと思うよ?」


おにぃ「そんなことして大丈夫か? 危なくないか?」


「だからね? お店の人の対応次第なの」

「大丈夫と思えるほど対応が良ければ、ビンごと売っちゃいましょ?」

「でも逆に、あからさまに対応が悪ければ、そのまま何も売らずに帰っちゃうの」


ねぇね「え? 何も売らないの?」


「対応が悪かった場合だよ?」

「でも、もしそうなったとしても、今まで通り、裏口に戻ればいいだけでしょ?」


おにぃ「そうだな。それなら、問題ないな」


ねぇね「そうね」


朝、こんな会話をしておいたのです。


ジョシュア「こっ、これは! もしかして、ガラスビン、なのか?」


「そうです。その中に、今まで売りに持ってきていた蜜が入っています」


ジョシュア「こっ、これを、全部売ってくれるのか?」


「はいです。おいくらで買い取ってくれますか?」


ジョシュア「ちょっ、ちょっと時間が欲しい。これをもう少し調べさせくれ」


「もちろんです。お気がすむまでどうぞ」


そんな感じでビンを調べ始めた店主のジョシュアさん。

女将さんのジェーンさんもビックリ顔です。


ジェーン「あんたたち、凄いモノ持ち込んできたね~」

ジェーン「こう言っちゃアレだけど、盗品とかじゃないだろうね?」


「それは神様に誓って」


ねぇね「私も誓います」


おにぃ「それはおチビが――」


「わぁわぁわぁ~、しょ、商売のネタは明かせないのです!」


またも余計なことを言いそうになったおにぃを遮るワタシ。


ジェーン「そりゃそうだね。盗品なら、こんなに堂々と売りに来やしないだろうし」

ジェーン「そもそもこんな透明なガラス、ここいらじゃ見たことないもんね」

ジェーン「疑ったりして悪かったね」


そんな会話をしていると、


ジョシュア「待たせてすまなかったね。とりあえず――」


ということでお値段の説明がはじまりました。

中身のはちみつは、今まで通りの買い取り率で、1g2リル。

1,001gだったので、2,002リルになりました。


そしてビンの方は、


ジョシュア「こんな透明で、表面が滑らかなガラスは見たことがないよ」

ジョシュア「しかも、ピッタリと閉まる金属製の蓋までついてるなんて」

ジョシュア「本来ならもっと凄い金額がついてもおかしくはないだろうけど、うちの店ではこれが精一杯だ」


ということで、ガラスビンの買取のお値段は、10,000リルを提示されました。

1万リル、元の世界では1万ドルぐらい? 約120~140万円ぐらいの価値がありそうです。


(うひょ~、ただのガラスビンに凄い金額ですね~)


もちろんワタシたちに否はありません。


おにぃ「そ、それでお願いしまっす」


ねぇね「お願いします」


買取の合計金額は12,002リル。

小金貨1枚と大銀貨2枚と銅貨2枚を受け取ったワタシたち3人。

手持ちの合計金額は12,120リル。

小金貨1枚と大銀貨2枚、小銀貨1枚と大銅貨1枚と銅貨10枚が手持ちの全財産です。



注釈:

大金貨100000リル

小金貨10000リル

大銀貨1000リル

小銀貨100リル

大銅貨10リル

銅貨1リル


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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