39 ポーション作り実践
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
「まずは1番の壺の粉を23mg、2番の壺の粉を11mg、・・・」
クマさんとネコちゃんのノートを片手に、ちまちまと精密はかりで重さを量りながら材料を用意するワタシ。
フラスコや精密はかりの文字が日本語(アラビア数字)なので、ワタシにしか読めないため、計量関係の作業はすべてワタシがやることになってしまいました。
(あれ? 今日の指名依頼はワタシは戦力外で、ただねぇねとおにぃを応援するだけだと思ってたのに・・・)
そう思いながらも手は休めず、準備を進めます。
「ねぇねはこのガラス容器、ビーカーの、この目盛りまで魔法でお水を入れてね」
ねぇね「うん、わかった」
・・・
ねぇね「これでいい?」
「そうそう、完璧。それじゃあ、次は、こっちの容器に移し替えて、おにぃの出番だね」
おにぃ「ん? オレか?」
「この容器のお水にさっき量った粉末を入れて、おにぃの火魔法で温めるんだけど」
おにぃ「さっき見てたとおりでいいんだろ?」
「そう、ワタシが止めるから、それまで加熱してね?」
おにぃ「りょーかい」
・・・
そんな感じの作業が進み・・・
「「「できた~!」」」
ワタシたちだけで作ったポーションが出来上がりました。
「できたね~」
おにぃ「意外と簡単だったな」
ねぇね「でも、ちゃんとできてるのかな」
ねぇね「色もちょっと、メアリーさんが作ったのと違う気がするし・・・」
おにぃ「そういわれると、ちょっと違う気がするな」
ねぇね「もしかすると、失敗かも」
「え?」
ねぇねからの『失敗』という単語を聞いて固まってしまうワタシ。
(ガーン Σ( ̄ロ ̄lll))
ワタシ的には手順どおり行って完璧だと思っていました。
自信があっただけに、かなりショックは大きめです。
そんな会話をしていると、メアリーさんが休憩から戻ってきました。
メアリー「どうだいあんたたち、ポーションはできたかい?」
おにぃ「はい。できました」
ねぇね「ただ、ちょっと色が変で」
メアリー「ん? 色が変? ちょっと見せておくれ」
ねぇね「これです」
ねぇねがメアリーさんに出来立てほやほやのポーションが入った容器を渡します。
メアリー「どれどれ? ん? お? ほう。これはいいじゃないか。いい出来だよ」
「「「よかった~」」」
失敗かな? と言われてかなり不安だったのですが、メアリーさんから逆に称賛され、ほっと一安心。
予想外の細かな計量作業をしたこともあり、ちょっと気疲れしちゃったワタシなのでした。
メアリー「これはいいポーションだよ!」
メアリー「色が濃くて、魔力が豊富なのが一目瞭然だよ!!」
失敗だったのではと戦々恐々だった、ワタシたち3人だけで作ったポーション。
今回の指名依頼の依頼主である【マダムメアリーの薬店】店主のメアリーさんに見てもらうと、こんな感じで絶賛してくれました。
興奮しているのか、メアリーさんの糸目が、いつもよりちょっとだけ広く見開かれています。
メアリー「きっと、使った魔法水に含まれている魔力が豊富だったんだろうね」
メアリー「それに火魔法による加工の時も、魔力の損失が少なかったんだろうね」
メアリー「いやぁ~今回の指名依頼は大当たりだね。ふたりとも将来有望だよ」
「大当たりですか? 将来有望ですか?」
メアリー「そうともそうとも。こんな効果が高そうなポーションを作れる魔法使いを発掘できたんだから、大当たりってもんだよ」
メアリー「ふたりは魔法使いとして間違いなく成功するだろうさ」
「大当たりだって! 有望だって! よかったね? ねぇね、おにぃ」
おにぃ「お、おう」
ねぇね「うれしいけど、なんだかちょっと照れくさいかも」
そんな会話をしていると、今までずっと無言でワタシたちの作業を見物していた孫娘のアリスちゃんが、最初の挨拶以来、はじめて口を開きました。
アリス「あ、あの、今度は私も一緒にポーション作り、やらせてください」
メアリー「ああ、それはいいね。今日はもう私はお休みにしよう。若いみんなでポーション作りをするといいよ」
本来、ワタシたち3人は、あくまでポーション作りのお手伝いです。
なので、アリスちゃんと一緒にポーションを作るのは、当然問題ありません。
ということなので、お返事は決まっています。
「もちろんです」
おにぃ「一緒にがんばろうぜ」
ねぇね「よろしくね」
アリス「よろしくお願いします」
ということで4人でポーションを作ることになったのですが、ワタシはちょっとお疲れ気味です。
先程のポーション作りで、細かな計量関係の作業をすべてひとりでやったことで、いろいろ気疲れしてしまったみたいです。
(また計量関係の作業を全部ワタシがやならないとダメなのかな~)
(アリスちゃんも加わるんだからワタシはもう・・・)
(そうだ! ワタシじゃなくても計量ができるようにすればいいんだ!)
ということで、早速準備にとりかかります。
先程使っていたプリティーなノートと鉛筆で、こちらの数字とアラビア数字の対応表を書き出します。
おにぃ「ん? おチビ、なにやってんだ?」
「えっとね、これは、このガラス容器とはかりに書いてある外国の数字をここの数字に置き換えてるの」
ねぇね「この左の外国語が右の数字と同じ意味なの?」
「そうそう。だから、このノートを見ながらガラス容器とはかりを見れば、量を量れるでしょ?」
ねぇね「そうね。きっとできると思う」
「それじゃあ、この外国数字の置き換え表と、さっきの手順書を見てポーションを作ってみて?」
「今度はワタシは見てるから、アリスちゃんとねぇねとおにぃでやってみてね?」
おにぃ「わかった」
ねぇね「うん」
アリス「やってみます」
ということで、この後の作業はみんなに丸投げ。
ワタシはちょっと休憩とばかりに、お部屋の隅にある長椅子に向かうのでした。
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