37 ついでに確認
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【マダムメアリーの薬店】からの指名依頼を受けることになったので、なにか注意しておくべきことがあるのか確認しておきます。
「アイリーンさん、指名依頼を受けるとき、なにか気を付けることとかありますか?」
アイリーン「指名依頼だから、ということで言えば、特にないわね、大丈夫よ」
「そうなんですね」
アイリーン「ただ今更なんだけど、指名依頼は、受けると大きな実績値になる分、断る時はちょっと厄介なの」
「断ると、厄介なんですか?」
アイリーン「ええ。正当な理由がない限り、断ると実績にペナルティーが科せられちゃうのよ」
おにぃ「え?」
ねぇね「そうなんだ」
アイリーン「でもまあ、指名依頼を断ることって滅多にないことだから、そんなに心配しなくていいと思うわよ」
「へぇー、そうなんですね」
はじめて指名依頼を受けるワタシたちには、あまり実感がないお話です。
個室にいる今なら周りを気にせずお話ができるので、以前から気になっていたこともついでに聞いてしまいます。
「ところでワタシたち『シュッセ』は、ハンターギルドの庇護下にいるんですよね?」
アイリーン「そうね。先日の会議で決まったとおり、ハンターギルドは『シュッセ』の後ろ盾になります」
「それって逆に言うと、ワタシたちはハンターギルドの指示に従わなければならないってことですか?」
アイリーン「う~ん、そこは正直難しいのよね」
アイリーン「我々ハンターギルド側としては、そうしてもらえるとありがたいんだけど、だからといって、ギルドがハンターの行動に制限をかける訳にはいかないと思うのよね」
アイリーン「だから、なにかあったとき、こちらからの相談を聞いてほしい、といった感じかしらね」
アイリーン「逆もまたしかりで、なにかあったら、とにかくこまめにいろいろ相談してくれるとありがたいわね」
「なるほど」
アイリーン「まあ、依頼関係は必ず受付を通すでしょうから、その時私にいろいろお話ししてね?」
おにぃ「分かりました」
ねぇね「ました」
ここでワタシは、一番確認しておきたかったことを聞いてみます。
「あの、今更なんですけど、ワタシたち、ギルドの庇護下に入る前から、納品の常設依頼を受けてますけど、これはいいんですか?」
アイリーン「正直に言えば、その納品もギルドに預けて欲しいのは確かね」
ねぇね「え? ジェーンさんの、ジョシュア雑貨店の納品、できなくなるの?」
ねぇね「ジョシュア雑貨店の納品だけは、ずっと続けたい! です・・・」
急に立ち上がり、声を張るねぇね。
かと思えば、急に尻づもみ。
顔色は青ざめ、かなりショックを受けているみたいです。
アイリーン「そこは今までどおりで大丈夫よ?」
アイリーン「ギルドがハンターから依頼の仕事を奪うことなんて許されないことですからね」
おにぃ「いいんですか?」
ねぇね「よ、よかった~」
ぽすんと椅子にへたり込むねぇね。
気が抜けたような、安心したような、そんな脱力した感じです。
スラムを抜け出せた今のワタシたちがあるのは【ジョシュア雑貨店】のおかげです。
今後も関係を続けたいと思うのは、ねぇねだけではなくワタシたち3人の共通の想いです。
「よかったね~」
おにぃ「あの店は、オレたちにとって、特別だもんな!」
ねぇね「うん!」
ねぇねに笑顔が戻って、一安心です。
アイリーン「ただ先程も言ったとおり、なにかあったら、どんな些細なことでも、すぐに相談してね?」
「「「わかりました」」」
そんな感じで、はじめての指名依頼を受けるついでに、いろいろ教えてもらったワタシたちなのでした。
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