表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/110

33 はじめてのお客さん

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


マスター「お邪魔するぜ」


「「「いらっしゃ~い!」」」


ワタシたちのお家の玄関(草むらの小道)を通り、折りたたんだリアカーを運ぶワタシたち4人。

そう、4人です。

ここまでワタシたちを乗せてリアカーを引いてくれたお礼に、ワタシたちのお家にマスターさんをご招待したのです。

もちろん、ワタシたち3人にとって、はじめてのお客さんです。


マスター「ほぉ~、結構広いじゃねぇか。外からじゃ分からなかったが、中はちゃんと整備してあるんだな」


おにぃ「そうなんです」


「ねぇねとおにぃの魔法で、除草したんだ~」


マスター「魔法で除草? そいつはすげぇじゃねぇか」


「でしょでしょ? ねぇねとおにぃは凄いんです!」


腰に手をやり胸を張り、『むふぅ~』と自慢げに語るワタシ。


「ねぇねが水魔法で燃え広がらないようにして、おにぃが火魔法で雑草を燃やしたんだ~」


おにぃ「オレ、火魔法は得意なんです」


ねぇね「私、魔法を使うのが好きなんです」


マスター「ほうほう。それは有望だな」

マスター「それで、あの、奥にある車輪がついた鉄の大きな箱はなんだ?」


ねぇねとおにぃのことをもっと自慢したかったのですが、マスターさんの興味は他に移ってしまったみたいです。


おにぃ「あれは、俺たちの新しいねぐら、ケッパコです」


マスター「ケッパコ? また聞いたことがないヤツだな」

マスター「ねぐらってことは、家か? それにしちゃあ、ちいとばっかり小さくないか?」


ねぇね「私たちにはちょうどいい大きさなんです」

ねぇね「それにキレイで快適なんです」


マスター「ふぅ~ん。車輪付きの家ねぇ~」

マスター「青銀の塗料が塗られた金属がベースで、ガラス窓まであるのか・・・」

マスター「多分本来の使用方法は・・・」

マスター「というか、あのガラス、かなりヤバいな・・・」

マスター「まあ、こいつら3人なら、あれぐらいの大きさでも十分家として使えるんだろうな」


またもやブツブツと独り言モードに入ってしまったマスターさんでしたが、取り合えず納得したみたいです。


マスター「それで、あの、網で囲われている、大きなカゴはなんなんだ?」


今度は別のものに興味を示したマスターさん。


「あれは、トランポリンといって、中に入ってぴょんぴょんする遊び道具で~す」


マスター「遊び道具? あんなデカぶつが?」


おにぃ「あの中で飛び跳ねると、すごく高く飛べるんです」


ねぇね「とっても楽しいんですよ?」


マスター「ほぉ~? それは面白そうだな。オレもやってみていいか?」


「「「どうぞ~」」」


ということで、マスターさんがトランポリンでホッピング&ジャンピング開始です。



ぶぁうぃい~ん

ぶぃうぃい~ん

ぶぅうぃい~ん

ぶぇうぃい~ん

ぶぉうぃい~ん



ワタシたちが使う時とは明らかに違う爆音を奏でるトランポリン。

その中で、ひとり満面の笑みを浮かべているマスターさん。


マスター「うおっほぉ~いっ、うわっほぉ~いっ」

マスター「ハッハッハッハッハ。こいつぁ面白れぇ~な」

マスター「まさかオレが、ここまで飛び上がれるとはな!」


強面の、たぶん100kgぐらいあるゴリマッチョの男性が、ワタシたちに向けてニコニコスマイルです。

表情筋を総動員して、面の皮を強引にひきつらせた感じの破顔です。

爆音を伴いつつ両足でホッピングし、最高到達点付近でこちらに愛想たぶんをふりまいています。

時と場所によっては、下手をすると、かなり危険な事案になるかもしれない感じのお顔です。


(きっと、知らない人が見たら、全力で逃げられちゃうんだろうな~)

(まあ、ワタシたちは、マスターさんのこと知ってるから大丈夫だけど・・・)


そんな感じで10数分の疑似空中散歩を楽しんだマスターさん。

とっても満足気です。


マスター「いやぁ~楽しかった。いろいろ知ることもできたし、今日はここにこれで良かったぜ!」


ワタシたち3人が、はじめてお迎えしたお客さん。

お茶を出すとか、そんなオモテナシ的なことは一切できませんでしたが、ご満足いただけたようでなによりです。


「なにもお構いできませんでしたが、よろしければ、またいつでも来てくださいね?」


「「来てください!」」


マスター「おう! また寄らせてもらうぜ!」


片手を上げ、その言葉とともに、颯爽と草むらの小道を帰っていくマスターさん。

時刻はもう、ワタシがいつもお昼寝をする時間です。


「マスターさんって、朝からずっとワタシたちと一緒にいたよね?」


ねぇね「ギルドの偉い人なのに、お仕事とか、大丈夫なのかな?」


おにぃ「きっと暇だったんじゃないか?」


どうやら『マスターさんはわりとお暇』説は、核心をついていたようです。


「ギルドの偉い人は、昼間遊んでても怒られないんだね」


ねぇね「そうみたいね」


おにぃ「だな」


ワタシたち3人の中で、ハンターギルドの幹部職員に対する憧れが、ちょっと弱まったのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ