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3 当面の目標

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


おにぃ「すげぇ~、オレ、小銀貨なんて初めて触ったよ~」


ねぇね「私にも触らせて~」


スラムのねぐらに戻ってきたワタシたちは、今、はしゃいでいる真っ最中です(ワタシを除く)。


(貨幣の価値が分からないから、小銀貨とか言われても、よく分かりませ~ん)


そんなワタシの気持ちを知ってか知らずか、ねぇねとおにぃはハイテンション。


おにぃ「早速買い物に行ってこようぜ」


ねぇね「美味しいモノ買お~」


という訳で、今度はお買い物にお出かけなワタシたち3人です。


「何を買いに行くの?」


ねぇね「私、お肉食べたい!」


おにぃ「オレもオレも!」


「じゃあ、町のお肉屋さんに行くの?」


おにぃ「いいや。町のお店はオレたちにモノを売ってくれないからダメだな」


「え? それじゃあ、どこでお買い物するの?」


ねぇね「スラムにある屋台のお店に行くのよ」


「屋台のお店?」


ねぇね「そう。何でも売ってるのよ」


そんな会話をしつつ、歩くこと5分程。

やってきたのはスラムの外れ。

町との境目に近い、比較的綺麗な場所にある、掘っ立て小屋のようなお店です。


店主「よう、坊主ども、なにか要りようか?」


おにぃ「肉を売ってくれ」


店主「肉だぁ? お前ら、金はあんのか?」


ねぇね「今日はあります。大丈夫です」


店主「そうか、それじゃあ、これなんかどうだ? 野ネズミの干し肉だ」


おにぃ「それ、いくら?」


店主「そうだな~、この大きさなら、3リルってとこかな」


ねぇね「買います、それ買います!」


店主「即決とは豪勢だねぇ~。それじゃあ、はいよ。銅貨3枚と交換だ」


おにぃ「ついでに黒パンも3つくれ」


店主「黒パンは1個1リルだ。合計で6リルだな」


おにぃ「それじゃ、これで」


店主「まいど~」


そんな感じでお買い物が進められていきます。


(う~ん、1リルはちっちゃい銅貨1枚、それが手のひらぐらいの丸パン1個分の価値なんだ~)

(とすると、1リル=1ドル(120~140円)ぐらいなのかな?)


ワタシの中で、貨幣価値が徐々に明確になっていきます。


(ということは、さっきのはちみつは、大体2万円ぐらいで売れたってこと?)

(ほぇ~。結構なお値段ですね~)

(ねぇねとおにぃが驚くわけだ~)


そんなことを思いながら、買い物を終えてねぐらに戻るのでした。


その日の夕食は、炊いた無洗米と干し肉でかなりリッチな感じになりました。


おにぃ「うんめ~、肉なんて久しぶり~」


ねぇね「美味し~、ホント美味し~」


「しょっぱい干し肉と、甘いお米が合うね~」


ワタシも久々の動物性タンパク質に舌鼓を打ったのでした。



翌朝、屋台のお店で購入した硬い黒パンをかじりながら、ねぇねとおにぃに今後のことを相談します。


「ねぇね、おにぃ、ちょっと聞いて欲しいお話があるのです」


ねぇね「なあに?」


「ワタシたちの今後のことなのです」


おにぃ「今後?」


「今のままだと、ここの生活、スラムから抜け出せないのです」


ねぇね「それは、そうでしょうね」


「だから、目標を決めて、少しずつ、生活を改善していきましょ?」


おにぃ「改善? どうするんだ?」


「まずはですね? 身ぎれいにしましょう!」


ねぇね「身ぎれいに?」


「そうです。ワタシたち、はっきり言って、汚いのです」


ねぇね「スラムにキレイな人なんていないでしょ?」


おにぃ「まあ、そりゃそうだ」


「汚いから、町のお店にワタシたちは入れてもらえないのです」

「身ぎれいにすれば、ちゃんとお客さんとして扱ってもらえると思うのです」


ねぇね「う~ん、そうなのかな~?」


「きっとそうなのです。だから、まずは、身ぎれいにすることから始めましょ?」


おにぃ「身ぎれいって言われてもな~、どうするんだ?」


「まずは毎日体を洗うこと。そして、お洋服を洗濯すること」


ねぇね「お洋服を洗濯したら、着るものがなくなっちゃうよ?」


「そうです。だから、まずは、もう一着お洋服を買いましょう」


ということで早速お買い物に出かけます。

行き先は、何でも売ってるスラムの屋台のお店です。


店主「よう、坊主ども、昨日も来たが、今日もなにか要りようか?」


ねぇね「お洋服が欲しいの」


店主「服だぁ? 高いぞ、そんなもん。金あるのか?」


「とりあえず、見せてほしいのです」


店主「お? おチビ、いたのか。まあ、見るだけならタダだもんな?」


そんな会話の後、子供服と思しきものを店の裏から持ってきた店主さん。

女の子用の小さなワンピースが3つと、男の子用の長ズボンと長袖Tシャツのセットを見せてもらいました。


「これは、全部でおいくらですか?」


店主「そうだなぁ、着古したヤツだし、買い手もあまりいないからなぁ~」

店主「全部合わせて150リルってとこかな?」


ねぇね「ひぃ~」


おにぃ「たけ~」


(ワンピース3つと長ズボンと長袖Tシャツ、5点で150リル)

(1点平均30リル、大体4,000円ぐらいかな?)

(たしかに中古のお洋服にしてはお高く感じますね~)

(でも、見た感じは綺麗だし、必要経費ですよ!)


ということで、


「買います。全部くださいな」


ねぇね「え?」


おにぃ「ホントに? 買うの?」


「うん。今後のための必要経費なのです!」


店主「なんだか知らねえが、買うんだな?」


「はい。お願いします」


店主「それじゃ、150リルだ」


おにぃ「はい。小銀貨と、大銅貨5枚・・・」


ねぇね「あぁお金が・・・」


店主「まいど~」


ワタシの野望、スラム脱出の第一歩は、こうして進められたのでした。


その日から、毎晩寝る前にはお湯で体を洗い、朝はお着替えをしてお洗濯をすることにしました。

ねぇねもおにぃも、身ぎれいにすると見違えるようになり、履物を見なければ、スラムの住人とは思えません。


(もう少しお金が溜まったら、靴も買い替えましょう)


ちなみに、その日にワタシが【想像創造】で創り出したモノは、



【湯船 FRP製 120×70×80cm 54,800円】



前世ではごくごく一般的だった繊維強化プラスチック製の湯舟です。

これにねぇねの魔法でお水を張り、おにぃの魔法で温めてお湯にしてお風呂に入ったのです。

久しぶりのお風呂、思わず長湯になってしまったのは言うまでもありません。

そして翌朝は、湯船に再度お湯を張り、その中でお洗濯をしました。


その日は朝から【想像創造】で



【植物石鹸 100g 88円】



を創り出し、洗濯にこれを使いました。


(とりあえず石鹸で、体だけじゃなくて、お洋服も洗っちゃうことにしましょう)


そして洗濯物をねぐらに干したら、今日は、また例の親切な町のお店にはちみつを売りに行くことにします。


(1日間隔をあけたから、またはちみつを採ってきても、そんなに不思議じゃないよね?)


ということで、今日もまずはお店の裏口からスタートです。


ゴンゴンゴン


おにぃ「すいませぇ~ん。買取お願いしま~す」

ねぇね「すいませぇ~ん」


しばらくすると、以前と同じ、ふくよかな女性が裏口から出てきました。


女性「はいよ。あら? あんたたち、随分と見違えちゃったじゃない」


ねぇね「えへへぇ~、身ぎれいにしてみました」


女性「うんうん、いい心がけだね」

女性「普段から、そうしていれば、きっといいことがあると思うよ」


ねぇね「はい」


女性「それで、今日は何を持ってきたんだい?」


おにぃ「今日もこれ、甘い蜜です」


女性「おとといのヤツと同じかい?」


おにぃ「そうです」


女性「それはいいね。また見せてもらっていいかい?」


おにぃ「もちろんです」


ねぇね「お願いします」


そんな感じで前回同様、別の器に移し替えながら重さを量ってくれる女性。


女性「今回は102gだったから、204リルでいいかい?」


おにぃ「それでお願いします」


ねぇね「ありがとうございます」


女性「じゃあ、これね」


おにぃが小銀貨2枚と、銅貨4枚を受け取り、ねぇねがボロボロの器を受け取ります。

このタイミングで、ワタシは女性に話しかけてみます。


「すいません、ちょっとよろしいでしょうか?」


女性「ん? なんだい? おチビちゃん」


「あの、ワタシたち、身ぎれいにしたんで、お店に入ってもいいですか?」


女性「ん~、キレイになってるし、他のお客さんに迷惑をかけないのなら、いいわよ」


ねぇね「ホントですか?」


おにぃ「ありがとうございます!」


「それじゃあ、また蜜が手に入ったら、お店の正面からお願いに来ますね?」


女性「ああ、蜜は大歓迎だからね。期待して待ってるよ」


そんな感じで、次回のはちみつの取引の予約を取り付けることができました。

それも堂々と、お店の正面から入っての取引です。


(スラム脱出計画、また一歩前進です!) (^_^)v


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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