19 感謝の気持ち
Mノベルズ様より、書籍発売中です。
講習を全て終えた日の夜、軽パコの中で明日の納品物を【想像創造】しているときでした。
「まずは、はちみつ、【想像創造】」
「続いて、石鹸ギフトセット、【想像創造】」
そんな感じでいつもの納品物を創り出した直後でした。
目の前に突如、ワタシのステータス画面が出てきました。
名前:アミ
種族:人族
性別:女
年齢:5歳
状態:低栄養状態
魔法:【なし】
スキル:【想像創造】レベル3(3回/日)
どうやら、スキルのレベルアップをお知らせしてくれたみたいです。
(やった! 【想像創造】がレベル3になって、1日3回使えるようになった!)
今夜は2回【想像創造】したので、あと1回、なにかを創り出せることになります。
(およ? 状態が【栄養失調】から【低栄養状態】に変わってる?)
(これって、少しは改善されたってことでいいのかな?)
どうやらワタシ、多少なりとも健康に近づいているみたいです。
(まあ、それはともかく、あと1回はなにを【想像創造】しようかな~?)
ということで、早速、ねぇねとおにぃに相談です。
「ねぇね、おにぃ、なにかワタシに創り出してほしいモノある?」
ねぇね「ん? どうしてそんなこと聞くの?」
「ワタシのスキルが成長して、もう1回、なにか創れるようになったの」
おにぃ「へぇー、凄いじゃん!」
ねぇね「おチビちゃんは凄いのね!」
「えへへぇ~。それで、なにかほしいモノ、ない?」
ねぇね「うんとね、私、お世話になった女将さんに、ジェーンさんにお礼がしたい!」
おにぃ「なら、ジョシュアさんにもだな!」
ねぇね「そうね、そうだよね。おふたりになにか贈り物ができたらいいな!」
「【ジョシュア雑貨店】のご夫婦に贈り物だね?」
「なにがいいのかな~?」
おにぃ「やっぱり食いものじゃないか?」
「それはワタシたちだけじゃないのかな~」
ねぇね「私、ふたり一緒のモノがイイと思う」
ねぇね「同じモノをふたりで一緒に身に着けられるとイイと思う!」
そんな感じで、その晩ワタシたち3人は、ちょっと遅くまで、喧々諤々には程遠い、ゆる~い議論を交えたのでした。
そして翌日の納品が終わったタイミング。
ジョシュア「今日もご苦労さん。はい、今日の分の納品報告書ね」
ねぇね「ありがとうございます」
そんなやり取りがあった後。
ねぇね「あ、あの、今日はおふたりに、受け取ってほしいモノがあるんです!」
ワタシたち3人を代表して、ねぇねが切り出します。
ジョシュア「ん? 新商品の提案かな?」
ねぇね「ち、違います。えっとですね、以前困ってた時、ジェーンさんからパンとかチーズとか分けてもらえて、とっても嬉しかったです」
ねぇね「それで、そのお礼と言うか、感謝の気持ちとして、これを受け取ってください!」
そう言ってねぇねが差し出したのは、
【セ〇コー ペアウォッチ 機械式自動巻き腕時計 ブラックシルバー ピンクゴールド 10気圧防水 ステンレスベルト 49,280円】
黒銀と桃金のペアの腕時計です。
男性用も女性用も同じ意匠ですが、女性用が二回りほど小さい造りになっています。
自動巻きだから電池いらず。
10気圧防水だから、水仕事も気にせずできます。
オールステンレスなのでタフで、傷にも強くなってます。
ジェーン「え? も、もしかして、これ、時計、なの?」
ジョシュア「まさか、こんなに小さな時計だなんて・・・、本当に?」
「はい。これは、腕時計といって、その名の通り、腕にくっつけておく時計です」
ジョシュア「アッハッハッハ。こんな凄いモノ、聞いたことがない」
ジェーン「イヤイヤそんな凄いモノ、もらえないよ!」
ねぇね「ずっと、お礼をしたかったんです。だから、ぜひ、もらってください」
「「もらってください!」」
そんな感じでしばらく押し問答っぽいことがありましたが、最終的にはワタシたちの説得に応じて? もらってくれることになりました。
ワタシから使い方と着け方のレクチャーを受けてもらい、夫婦そろって左手首にペアウォッチを着けてもらいます。
「時間の調整はここをこうして、時報の鐘の音に合わせてくださいね?」
ジョシュア「なるほど、わかったよ。ありがとう」
ジョシュア「それにしても、高級品なんだろうに、なんだか申し訳ないね」
ジェーン「嬉しいんだけど、なんだかもらい過ぎな気がするよ」
ねぇね「そんなことないです! 本当に困っているときに分けてもらったあの時の黒パン、本当に嬉しかったです!」
ねぇね「あの時の感謝の気持ちは、ずっとず~っと忘れません!」
普段は物静かで控えめなねぇねですが、今日はいつもと違います。
ねぇねの過去に何があったのか、ワタシと一緒に生活する前なのか後なのか。
詳しいことは分かりませんが、ねぇねにとって、とっても大切で印象深い出来事があったことは確かです。
今日のお礼では、ワタシたちの中で一番張り切っていたねぇね。
(ねぇね、ちゃんとお礼できて、よかったね)
涙声もそのままに、ジェーンさんに一生懸命お礼をしているねぇねの姿を見ながら、そう思ったのでした。
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