11 常設依頼
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翌朝、朝一は混み合うので、ちょっと遅めにハンターギルドに来たワタシたち3人。
ねぇね「あった~! 【ジョシュア雑貨店】の依頼、見つけたよ~!」
あまり人がいないスキに掲示板に近づき、早速お目当ての依頼を見つけました。
おにぃ「なんて書いてあるんだ?」
ねぇね「えっとね~・・・」
常設依頼
依頼主:【ジョシュア雑貨店】店主 ジョシュア
依頼内容:以下のモノを以下の対価で求む
【ニホンセイ はちみつ ブレンディッド】1gあたり2リル(容器は要相談)
【ニホンセイ ローズ石鹸】1個あたり100リル
【ニホンセイ ラベンダー石鹸】1個あたり100リル
【ニホンセイ カモミール石鹸】1個あたり100リル
納品場所:【ジョシュア雑貨店】
納期:随時(入手できたモノがあれば、その都度納品場所へ納品してください)
ねぇね「・・・って書いてあるよ」
「よかった~。はちみつだけじゃなくて、ちゃんと石鹸も依頼されてる~」
おにぃ「やったな! でも、常設依頼ってなんだろうな?」
ねぇね「ずっと依頼が続くってことかな?」
「わからないことは、受付さんに聞いてみようよ」
「「おー!」」
ということで、いつもの受付のお姉さんがいる窓口にやって来たワタシたち3人。
受付嬢「『シュッセ』のみなさん、いらっしゃい」
「「「おはようございます」」」
受付嬢「早速だけど、常設依頼の説明でいいかしら?」
おにぃ「お、お願いします」
人が少なかったこともあり、掲示板付近でのワタシたちの会話は受付のお姉さんに筒抜けだったらしく、窓口に着いて早々、説明してくれました。
受付嬢「まずは最初に、依頼の種類から説明するわね?」
受付嬢「依頼は大雑把に分けると3つになるのかな?」
受付嬢「普通の依頼、指名依頼、常設依頼、大きく分けるとこんな感じかな?」
受付嬢「普通の依頼は、期限とか条件とかがあって、窓口で依頼の受注処理をしてから仕事を始めるタイプね」
受付嬢「依頼の受注処理は、掲示板の依頼書をはがして窓口に持ってきて、申込手続きをするの」
ねぇね「へぇー」
受付嬢「指名依頼は、特定の個人やチームが名指しされている依頼で、これも窓口で依頼の受注処理をしてから仕事を始めるの」
受付嬢「受注処理は普通の依頼と同じで、掲示板の依頼書をはがして窓口に持ってきて、申込手続きをすることになるわ」
受付嬢「まあ、指名依頼の場合は、事前にこちらから声をかけさせてもらうことの方が多いけれどね」
おにぃ「指名か~。すげぇ~な~」
受付嬢「そして常設依頼は、その名の通り、継続的に求められている依頼のことね」
受付嬢「常設依頼は、窓口で依頼の受注処理しなくても、いつでも仕事を始めていいの」
「なにも手続きしなくて、すぐに始めちゃっていいんですか?」
受付嬢「ええ。完了報告書や納品報告書といった、終わったと証明できるものを窓口に提出すれば、その場で依頼完了手続きができる依頼なの」
「簡単でイイですね!」
(ふぅ~ん。普通の依頼は、掲示板から依頼書をはがすタイミングで、誰が受注したのかバレるよね?)
(でも常設依頼は窓口で完了報告だけになるから、バレにくいかも・・・)
(うん! これは、目立たずコソコソやりたいワタシたちにとって、かなりありがたいかも!)
受付嬢「あ、そうそう。常設依頼が終わったら、ちゃんと魔力証明付きの報告書をもらってきてね?」
「魔力証明?」
受付嬢「魔力証明を付けると、魔力を通した本人以外修正できなくなるの」
受付嬢「だから、偽造防止になるのよ?」
「わかりました。いろいろ説明ありがとうございました。早速、行ってきます」
「「ありがとうございました」」
ということで、早速納品に向かうワタシたち3人。
昨夜、2回目の【想像創造】で出しておいた【はちみつ ブレンディッド 1200g 4,800円】
それと、昨日の1回目の【想像創造】で出した
【ハーブソープ お歳暮ギフトセット ローズ6個 ラベンダー6個 カモミール6個 2,500円】
の残り、【ローズ石鹸】【ラベンダー石鹸】【カモミール石鹸】各々5個ずつを持って、ジョシュア雑貨店に向けて出発です。
「「「こんにちは~」」」
ジェーン「あら、こんにちは。今日は早いね~」
ジョシュア「やあ、いらっしゃい。早速、納品に来てくれたのかい?」
おにぃ「はい」
「あの、常設依頼にしてくれて、ありがとうございます」
「常設だと、周りにバレずにコッソリ依頼をこなせるので、とてもありがたいです」
ジェーン「ん? どういうこと?」
ジョシュア「私はただ、何度も依頼をかけるのが面倒だったから常設依頼にしただけなんだけど?」
「え? そうだったんですね?」
「てっきり、依頼の受注受付をしなくてもいいように、気をつかってくれたのかと・・・」
ジョシュア「ごめんごめん。私はハンターギルドの細かい手続きは知らないんだよ」
「いいえ、でも、結果的に助かりました。ありがとうございます」
ジョシュア「そうかそうか。まあ意図しなかったことだけど、結果的に君達に恩恵があってよかったよ」
ジョシュア「それじゃあ、早速、品物を見せてもらえるかな?」
おにぃ「はい。お願いします」
ねぇね「します」
・・・
ジェーン「【ニホンセイ ローズ石鹸】【ニホンセイ ラベンダー石鹸】【ニホンセイ カモミール石鹸】全部5個ずつだね?」
「はい、そうです」
ジョシュア「【ニホンセイ はちみつ ブレンディッド】が1200g」
ジョシュア「ガラスの器は高額だから、依頼書にはあえて金額は書かなかったけど、これ、器はどうする?」
ジョシュア「前と同じ値段になるけど、こちらで買い取ってもいいのかな?」
「そうしてもらえると、ありがたいです」
ジョシュア「わかった。それじゃあ、器も含めて全て買い取らせてもらうということで・・・」
【ニホンセイ はちみつ ブレンディッド 1200g】がガラスビンも込みで、12,400リル。
【ニホンセイ ローズ石鹸】【ニホンセイ ラベンダー石鹸】【ニホンセイ カモミール石鹸】の3種類が5個ずつで、1,500リル。
合計で、13,900リルになりました。
(ワタシの価値観だと、13,900ドルぐらいだから・・・、1,668,000~1,946,000円ぐらい? 凄い金額だね!)
ワタシが頭の中でそんな金勘定をしていると、
ジョシュア「ちょっと確認をしておきたいんだけど、いいかい?」
「はい、なんでしょう」
ジョシュア「これは、どのくらいのペースでどのくらいの量を納品できるのかな?」
「えっと、とりあえず、今日ぐらいの量なら、毎日お届けできます」
ジェーン「あら、毎日? 凄いわねぇ~」
ジョシュア「それはありがたい。実は早速、大口の顧客に売り込みをかけていてね」
ジョシュア「場合によっては一気に需要が増えるかもしれないんだよ」
「大口ですか?」
ジョシュア「ああ。ここだけの話だがね? ここの領主館に売り込んでいるのさ」
「領主館? それって・・・」
ジョシュア「ご領主様が住んでいる館のことさ。そこで働いてる職員はお金持ちが多いからね」
ジェーン「なによりご領主様、お貴族様のお目に留まれば、それはもう凄いことになるだろうね!」
「「「お貴族様!」」」
ジェーン「まあ、うまくいけばの話さ」
ジョシュア「儲けることだけを考えれば、教会に売り込むのが一番なんだろうけどね」
ジョシュア「でもいくらお金を積まれても、教会にだけは持ち込む気にはなれないんだよね」
ジョシュア「神様じゃなくてお金を崇めていそうな連中なんて、願い下げだからね」
ジェーン「ホントだよ。お布施や寄付という名目で、あちこちで強請りや集りまがいのことをやりたい放題」
ジェーン「神様の名を出せば何でも許されると思っているんだからね~、アイツら」
ジェーン「あんな強欲な輩が聖職者だなんて、世も末だよ」
おにぃ「教会・・・」
(よよ? この町の教会は、嫌われているのかな?)
(ジョシュアさんとジェーンさんのお話からすると、教会のひとはお金が大好きなのかな?)
(それに、おにぃもなんだか顔色が変わったみたいな・・・)
ジョシュア「まあ、教会のことは置いておいて、出来る限りでいいんで、なるべく多く納品してくれるとありがたいよ」
「わ、わかりました」
ジョシュア「それじゃあ、はい。これが納品報告書。確認してね?」
そう言ってジョシュアさんが差し出してきたのは、キレイな縁取り模様がされた、ワタシの顔の大きさほどの厚紙。
(小さいけど、なんだか小学校の卒業証書みたいかも・・・)
ここはもちろん、ねぇねの出番。
その厚紙はおにぃが一旦受け取りますが、そのままねぇねにスルーパスです。
ねぇね「【ジョシュア雑貨店】常設依頼 納品完了報告書」
ねぇね「下記の通り納品があったことを証明します・・・」
・・・
ジョシュア「その納品報告書をハンターギルドの受付に提出すれば、その場で料金を受け取れるはずだよ」
ねぇね「これは、魔力証明付きですか?」
ジョシュア「もちろんさ。偽造できないようになっているから安心してくれ」
「ありがとうございました。また明日もこの時間ぐらいに来ますので、よろしくお願いします」
「「します」」
そうして、お店をお暇したワタシたち3人なのでした。
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