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106 オトナたちの画策(別視点)

Mノベルズ様より、書籍発売中です。


ハンターギルドへの納品の対価があまりにも巨額過ぎて、おチビちゃんたち3人が目を回してしまう前日のこと。

場所はハンターギルドオーレリア支部の3階にある支部長室。

日没直後のこの部屋にハンターギルドの主だった幹部が勢ぞろいして、緊急報告会が開かれているところです。


支部長「それでは皆の衆、報告してもらおうかのう」


副支部長「分かりました。まずは、商業ギルド関連の進捗について、報告させていただきます」

副支部長「商業ギルドによる、我がハンターギルドオーレリア支部の買収は、動産、不動産共に完了済みです」


支部長「うむ。それで見掛け上、我がハンターギルドオーレリア支部は、商業ギルドの手に渡ったことになるのう」


副支部長「はい。そして次のステップ、商業ギルドからの買戻しについてですが、不動産につきましては、前回の『シュッセ』の納品物の売却益から、1億5千万リルを投資資金として預かることにより、完了済みです」

副支部長「近日中に、商業ギルドから関係書類が送られてくることでしょう」

副支部長「また、その他の部分、特に人件費や当面の運転資金につきましても、今回の『シュッセ』の納品物で、十分賄えると思われます」


ハンナ「ええ。多分、1年分以上は余裕で確保できるはずだよ」


支部長「うむ、重畳至極。これで計画通り、我がオーレリア支部はハンターギルドから金銭的に独立したことになるのう」


副支部長「その通りです」


支部長「資金面については問題なさそうじゃのう」

支部長「人手の方はどうかの? ある程度の要職を任せられそうな人材は確保できそうかの?」


アイリーン「はい。現在、『シュッセ』の3人と親しい人物を中心に接触しているところです」

アイリーン「商いや営業活動に強いご夫婦、それとベテランの薬師、こちらの方々からは前向きな返答をいただいています」

アイリーン「この方たちなら、王都本部からのひも付きの代わりに十分なりえるかと」


支部長「うむ。今はとにかく、分野を問わず頼れる人材が必要じゃ。引き続き、よろしく頼む」


アイリーン「はい」


支部長「町の住民の囲い込み状況はどうかの?」


マスター「ああ。例の【三輪自転車】と【リアカー】を餌に、現在篩にかけているところだ」

マスター「大店や古くからの商店は、ちいとばっかりアレみてぇだが、まともなヤツは教会を敵視しているから、問題ないだろうよ」


支部長「うむ。無理をして、善からぬ輩まで引き込むでないぞ?」


マスター「言われずとも分かってらぁ。それより、例の手筈はどうなんだ? 目立った動きが見えねぇようだが?」


支部長「そこは抜かりない。既にご領主さまには口頭でご了承いただいておる」

支部長「後は正式な書類が来るのを待つだけじゃが、たぶんワシ宛てではなく責任者へ通知されるじゃろうから、もしかすると既に受け取っておるかもしれんのう」


マスター「するってぇと、粗方片はついたってことか?」


支部長「そういうことじゃ」


ハンナ「やったじゃないかい! これで王都のバカどもの言いなりにならなくて済むわね?」


副支部長「ええ。不愉快な教会からの横槍ともおさらばです」


マスター「よっしゃー! これでアイツらにも、確固たる立場ってヤツを持たせてやれるな!」


アイリーン「ちょっと早いけど、前祝いに、これでパァーっとやっちゃいましょうか!」


マスター「お? その箱は、さっき親方たちと一緒におチビからもらった、例の『山吹色のお菓子』ってヤツか!」


ハンナ「もしかして、お酒かい? いいね、いいねぇ!」


アイリーン「そうよ? 何でも、『アワアワした』お酒らしいわよ?」

アイリーン「しかもそれが、18種類も入ってるらしいの。信じられる?」


支部長「ほう。『アワアワした』のう。それを聞く限り、エールなのかのう?」


副支部長「エールが18種類も? それは興味深いですね」


マスター「支部長の爺さん、コップ借りるぜ?」


支部長「ああ。構わぬよ」


アイリーン「あ、私はこのグラスを使うから、コップは不要よ?」


副支部長「まさかそれは、全てガラスでできたコップなのですか? 何と美しい!」


ハンナ「何だって? そんな貴重なモノ、どうやって・・・」


アイリーン「凄いわよね? でもこれね、このお酒の箱の中に、『オマケ』として入っていたのよ?」


支部長「これほどのモノが、『オマケ』扱いとはのう」


マスター「まあ今更だろ? そんなもん。それより、祝杯の準備はいいか?」


アイリーン「それでは支部長、音頭をお願いしますね?」


アイリーン「うむ。これから我らの雇い主となる『シュッセ』の3人に、乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


ぐびっぐびぃっ


マスター「っかぁ~。うめぇ~!」


ハンナ「っぷっはぁ!」


支部長「ほぅほぅ。これはエールとはちと違うのう。ピルスナーかのう」


副支部長「ん~。冷やせばもっと美味しくなりそうですね~」


アイリーン「あっ! みんな全部飲み干さないでよ! 私、18種類全て制覇するんだから~」



同時刻、王都にあるハンターギルドロータル王国王都本部の一室にて。


職員「本部長、教会から至急のお手紙です」


王都本部長「うむ。見せてみろ」

王都本部長「・・・」

王都本部長「まったく、面倒なことよ・・・」


職員「いかがなさいました?」


王都本部長「田舎の弱小支部が教会に楯突いた。面倒だが、早急に処置せねばなるまい」

王都本部長「早馬を走らせろ、行先はオーレリアだ。支部長及び幹部職員の自主退職を『命令』してこい」


職員「自主退職の『命令』ですか?」

職員「ですが、支部の人事権は支部にしかないはずで――」


王都本部長「ああ。だから、あくまで自主退職なんだ」

王都本部長「それと、受け入れないようなら、オーレリア支部ごと潰すと脅しても構わん」


職員「りょ、了解です」


王都本部長「まったく、これだから政治というものを知らない田舎の連中は・・・」

王都本部長「金と権力に阿る、こんな簡単なことが何故理解できないのか・・・」



日没直後の時間。

おチビちゃんがねぇねといっしょにキャッキャとお風呂に入っている、ちょうどそのころ。

この国の端と中央で、そんなオトナたちの思惑が錯綜していたのでした。


Mノベルズ様より、書籍発売中です。

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