10 チーム
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ハンターギルドの裏庭のお家、軽パコに戻ってきたワタシたち3人。
買ってきたお洋服などの荷物を軽パコの助手席スペースにおいて、しばらく休憩です。
おにぃ「これからどうする?」
ねぇね「もう、ジョシュア雑貨店からの依頼、出てるかな」
「そんなに早くは出せないよ・・・」
「・・・ワタシ、ちょっと・・・、眠くなって・・・」
5歳児でおチビなワタシには、今日の午前中の活動だけで、体力的にいっぱいいっぱい。
ちょっとお昼寝タイムが必要なのでした。
そしてワタシがお昼寝から目が覚めた時、時刻は夕方よりちょっと前、そんな感じでした。
「・・・あ、寝ちゃってた・・・、ごめんね?」
ねぇね「ん? 起きたの? 大丈夫よ?」
おにぃ「そうだぞ。おチビはまだ小さいんだから、もっと寝ててもいいんだぞ?」
「大丈夫・・・、起きます」
「ねぇね、おにぃ、とりあえず、ハンターギルドに行かない?」
「今の時間なら、すいてると思うよ?」
ねぇね「そうね、今なら依頼の掲示版をちゃんと見られるかも」
おにぃ「今日の分の広場の使用料とかも、払わないとだしな」
「ついでにご飯も食べちゃおうよ」
「「お~!」」
そんな会話の後、ワタシたち3人はハンターギルドに入ります。
まずは、朝、ラッシュで見られなかった掲示板に向かいます。
「ねぇね、掲示板の文字、読んで」
おにぃ「オレたちができそうなヤツだけでいいぞ」
ねぇね「わかった」
ねぇね「・・・」
ねぇね「う~ん、こっちは、魔獣の素材で、こっちは動物のお肉で・・・」
ねぇね「ここから左が、植物とかの採取の依頼みたい」
ねぇね「それで・・・」
ねぇね「まだジョシュア雑貨店の依頼は来てないみたい」
おにぃ「そっか~」
「まあ、今日お話したばかりだもんね。しょうがないよ」
ねぇね「そうね」
ということで、今度は裏庭の広場の使用料を払いに、受付に行きます。
おにぃ「すいません、オレたち1級で、昨日から裏庭の広場借りてるんですけど、今日も借りたいんです」
受付嬢「ん? はいはい。昨日登録した子たちね?」
おにぃ「そうです」
受付嬢「それじゃあ、3人で3リル、いいかしら?」
「あの、すいません。10日分とか、一気に支払うのはアリですか?」
受付嬢「もちろんかまわないわよ? でもあなたたち、お金は大丈夫なの?」
おにぃ「大丈夫です」
ということで、10日分で30リル、大銅貨3枚を支払ったワタシたち。
この時点で残金は8,927リル、大銀貨8枚と小銀貨9枚と大銅貨2枚と銅貨7枚になりました。
(今日はお洋服とか靴とか、出費が多かったけど、まだお金は大丈夫そうだね)
そんなことを思っていると、受付のお姉さんがワタシたちに問いかけてきました。
受付嬢「あなたたちは、3人でずっと行動するのかしら?」
おにぃ「そのつもりです」
受付嬢「それなら、チームを結成しておいた方が、便利でお得よ?」
ねぇね「チーム?」
受付嬢「そう。依頼をチームで受けると、個人で依頼を受けるより、ひとりひとりが得られる功績値がお得になるの」
受付嬢「それにチーム全員に均等に功績値が振り分けられるから、昇級が一緒にできたり・・・」
受付嬢「ああでも、12歳になるまでは1級のままだから、そこは理解してね?」
最後はおチビなワタシ向けのお言葉みたいです。
(まあ、12歳以下は試用期間なんでしょうから、しょうがないですよね)
おにぃ「チームにするには、どうすればいいんですか?」
ねぇね「お金がかかったりするんですか?」
受付嬢「チーム申請用紙に必要事項を記入して提出すれば終わりよ? お金もかからないわ」
おにぃ「それじゃあ、お願いします」
例によって、申請用紙は読み書きができるねぇねが受け取ります。
ねぇね「チーム名と構成員全員の名前、あとは、主な従事業務だって。どうする?」
おにぃ「従事業務?」
「それは、とりあえず、採取でいいんじゃないの?」
おにぃ「そうだな」
ねぇね「それで、チーム名はどうするの?」
(あれ? ねぇねってば、ワタシのお名前の時は独断先行でちゃっちゃと決めちゃったのに、チーム名はみんなの意見を聞くんだ・・・)
(よし、それじゃあ、ワタシのお名前のリベンジで、チーム名はワタシが良い案を出しちゃうぞ~)
そんなこんなで、
「『出世』なんて、どうかな?」
ねぇね「シュッセ?」
(ん? ねぇねの発音、アクセントが前寄りで、ちょっと変に聞こえるけど、まあいいか)
「そう、『出世』。高い地位になって世に認められる、そんな意味なの」
おにぉ「おぉ~、なんだかオレたちの今の目標、そんな感じだな」
ねぇね「『シュッセ』、響きもイイし、いい名前だと思うわ。じゃあ、申請用紙に書いちゃうね」
早速申請用紙を書き上げたねぇね。
それをおにぃが一旦受け取り、受付のお姉さんに提出します。
おにぃ「オレたちのチーム、『シュッセ』で登録お願いします」
受付嬢「『シュッセ』ね? なんだかいい響きね」
ねぇね同様、おにぃも受付のお姉さんも、『シュッセ』のアクセントが前寄りでした。
どうやらこの国の言葉遣い的にそうなっちゃうみたいです。
(ワタシ的には、日本語の『出世』じゃなくて、別の外国語を聞いてるみたいに感じるね)
(でもなんだか逆にカッコいいかも!)
ということで、ワタシたちのチーム名は『シュッセ』に決まりました。
これでハンターギルドでやるべきことは終わりです。
「今日もお食事食べてく?」
「「もちろん!」」
ということで、昨日と同様、食堂に向かいます。
3人でバーカウンターの方へ向かおうとしたとき、人がほとんどいない時間帯だったのが良かったのか悪かったのか、今までのワタシたちのやり取りをずっと聞いていた人物が話しかけてきました。
マスター「よう、坊主ども。いや、今日からは『シュッセ』と呼んだ方がいいのか?」
マスター「今日も日替わりでいいか?」
まさか聞かれているとは思っていなかったワタシたちは、固まってしまいました。
マスター「ハッハッハ。悪ぃ悪ぃ。お前らの話、全部聞こえちまってたわ~」
ちょっとからかい気味の口調な強面マスター。
おにぃ「きょ、今日も、日替わり2人前、お、お願いしまっす!」
「「しまっす!」」
今日の日替わりメニューの内容を確認する余裕もなく、ワタシたち3人は顔を真っ赤にして、昨日と同じテーブル席につくのでした。
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