第二試練41 20階 想痛の間
20階 想痛の間
《痛み全てに耐えよ 時間解凍数 変化なし》
階層の中央に白い小屋が四つ等間隔に並んでいる。
綺麗な立方体の形で、一片だけドアが取り付けられている。
窓もなくて、のっぺりした壁に囲まれていて室内が確認できない。
ただ、外観からはこれまで塔の中で見てきた建物の中で一番簡素なつくりだ。
いつもの石板には《想痛の間》と刻まれていた.
その下の説明書きには痛みに全て耐えよと記されているが、想い痛み。
字面から嫌な雰囲気が漂ってくる。
小屋の扉にはそれぞれ《LEVEL1〜LEVEL4》の表記が刻まれ,その下に一応の説明文が書かれていた。
LEVEL1:瞬痛 タンスの角に小指をぶつける痛み
LEVEL2:鈍痛 ボクサーに鳩尾を殴打される痛み
LEVEL3:激痛 バイクに追突される痛み
LEVEL4:想痛 過去の経験の中の重い痛み
痛みは小部屋の数と同じ四段階。
一人一つの小部屋に入ってそれぞれ痛みに耐えなければいけないらしい。
「これはまた、嫌な課題だね」
九装がぽりぽり頬を掻きながら,苦い顔をしている.
扉の説明文からLEVEL1やLEVEL2の内容はなんとなく痛みの度合いが想像できるが,LEVEL3に関しては実際にバイクに轢かれたら下手すれば死にかねない。
痛みを体験するだけで実際身体に傷を負うわけではないと思うが,最悪ショック死する可能性もある。
「えとえと、これって全部の部屋に入らなければいけないんでしょうか?」
「そうだろうね.人数分の四部屋用意されているわけだし」
「どれも嫌だけど,LEVEL 4の説明がよくわからないわね!」
「自分が体験した中の痛みを思い出す、とかじゃないかい?」
三人が小部屋の説明文について考えている間、秋灯は後ろで黙っている。
いつもと違い、この課題に関しては誰よりも深刻な顔をしていた。
ーーまずい。LEVEL1〜3はともかくLEVEL 4はまずい。
問題は誰がどの部屋に入るか。
もちろん誰も強い痛みを体験したくないが,九装はともかく,明音先輩や伊扇は率先して自分からレベルが高い痛みを選びそうだ。自分たちで誰がどの部屋に入るか決めなければならないなら,この二人をどうやって説得するか。
ーー明音先輩に昔を思い出させるのはまずい。
二人とも性格が良いだけに、今回ばかりは都合が悪かった。
【部屋を選択する順番はこちらで指定させていただきます。名前を呼ばれた方は,入室する部屋の前にお立ちください】
抑揚のない機械音声が階層全体に響く。
どうやら部屋に入る順番は勝手に決められてしまうらしい。
「明音先輩。それと伊扇さんも順番が先でもLEVEL 4は選ばないでください。高いレベルは俺と九装が入ります」
焦りを隠しつつ、三人へ宣言する。
一番ベストなのは九装がLEVEL 4の部屋に入ることだが、自分からは入らなそうだ。
「秋灯は私をそこらへんの女子だと思っているの?痛みがどれだけあっても私なら耐えられるわよ!」
「わ,私も大丈夫です!男女関係なくここは公平にじゃんけんで決めた方が、、」
「おいおい秋灯,私はできれば低い方がいいのだけど」
「こういうのは男が率先して受けるものだと思います。九装も普段紳士を気取っているならこういう所でも、らしく振る舞え」
秋灯の言葉にそれぞれ予想通り反論してくる。女性陣はともかく,九装は黙れ。
今の状況に一人だけ焦っているが,それでもなんとか平静を装う。
秋灯は次のアナウンスで自分の名前が呼ばれることを祈った。
【一番目は鐘ヶ江秋灯さんです.どの部屋を選択しますか?】
「よっし!!」
最初に自分の名前が呼ばれて思わずガッツポーズをする。
明音と伊扇が後ろで何かを叫んでいるが,構わず走って扉の前に立つ。
「LEVEL 4でお願いします」
【承知しました。部屋の中に入室後、五秒が経過しましたら痛みが発生します.なお身体的外傷は生じないためご安心ください】
扉からガチャリと解錠の音が鳴る。秋灯は一瞬目を瞑って覚悟を決める。
ドアノブを回し,静かに部屋の中に入った。
後ろで明音先輩が「覚えてないさいよ!」と叫んでいる。
部屋から出た後が怖かったが,今は気にしていられなかった。
LEVEL1:瞬痛 タンスの角に小指をぶつける痛み マジで痛い
LEVEL2:鈍痛 ボクサーに鳩尾を殴打される痛み 息ができない
LEVEL3:激痛 バイクに追突される痛み 普通に死ぬ
LEVEL4:想痛 過去の経験の中の重い痛み ただのトラウマ




