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人の灯りが消えた世界で  作者: 糸間 ゆう
第二試練 白亜ノ塔
82/206

第二試練31 北側防衛4

「お疲れ様です先輩」

「お疲れ秋灯」


最後の一匹を倒した明音先輩に声を掛ける。

あれだけ苦戦したホブゴブリンたち五匹にほとんど無傷で勝利した。

棍棒を振り回し、甲冑ごとなぎ倒していく様子は見ていて衝撃を受けた。

今回の課題でこれまでと段違いで強くなったように感じる。

棍棒を持った明音先輩は鬼に金棒という表現がぴったりだった。


「流石に疲れたわね」

「そうですね」


草原の上にぺたりと坐っている明音先輩の横にしゃがみこむ。

南側から始まってずっと戦い続けていたが、流石に先輩も疲れたらしい。

最後は謎に出てきたホブゴブリンだったし。


「ちょっ、先輩!頭から血がでてるじゃないですか」

「こんなのかすり傷よ」


今になって気づいたが、先輩の頭に黒く乾いた血がついている。

索敵ばかりに頼りすぎていた。


「あんたの方がひどいわよ」

「あー、これは着られないですね。服の替えどうしよう」


秋灯の着ていた服は、ホブゴブリンの攻撃を受け流す過程で擦り切れていた。

上着のパーカーはほとんど布切れに近い。


「そうじゃんなくて。身体、傷だらけじゃない」

「これはさっきのでかいゴブリンの攻撃を躱していたので。でもそこまで酷くないですよ」

「ちゃんと逃げなさいよ」

「いやいや全力で逃げてましたよ。見たでしょ俺の走りっぷり」

「そうじゃなくて、もっとちゃんと・・」


課題がようやく終わったのに先輩のテンションがやけに低い。

口をへの字に曲げていて何かを言いたそうな表情だ。


「えっと、村に入られるとまずかったというか。でもちょっと注意を引いただけで」


なんで俺は弁解しているんだろう。

いつも直球で物を言ってくるのに、しおらしい先輩は見えていて不安になる。


「あんまり危ない真似しないで」

「先輩のほうが危なかったような」

「私は強いからいいのよ。でもあんたは強くないでしょ」

「ぐさりと来ることを言いますね」


今回の課題で思い知ったが、今後戦闘が増えれば足手まといになる。

《魔術擬き》も《赤帝空拳》も先輩の前では使わないと決めているが、これからどうしようか。


「まぁなんにせよ無事に終わったからいいじゃないですか」


考えるのは後にして、一旦課題が終わったことを喜ぶ。

妙にしんみりした空気になってしまったているが、寝たらスッキリするだろう。


その後、黙ったままの先輩をちらちら見つつ、これは話しかけてはいけないと察する。

気まずい空気のまま九装と伊扇が来るのを待った。


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