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人の灯りが消えた世界で  作者: 糸間 ゆう
第二試練 白亜ノ塔
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第二試練27 北側準備2

その後、途中だった柵の補強を開始する。

北側の出入り口に落ちていた木片を置いて、針金で補強していく。

中からも出られなくなってしまうが、村の人は村長の家に避難しているので問題ない。


「ほら明音先輩そっち持ってください」

「これを巻けばいいのよね」

「そうです。もう少し引っ張って」


手持ちの針金を全て巻き付け、なんとか設置を終える。

伊扇や九装が通るかもしれないが、その時は頑張ってどかしてほしい。


「どうせ村には入れさせないんだから、良くない?」

「万が一がありますから」


これまでゴブリンたちは意外にも柵自体を壊すことは少なかった。

律儀に村の出入り口を狙ってきていたので、ここを塞いでしまえば時間稼ぎができる。

北側に明音先輩が間に合っている以上、50体程度のゴブリンに突破されることは無いと思うが、微妙に時間があるので何かせずにはいられなかった。


「後何分くらい?」

「残り7分ですね。ここはゴブリンの撃破数と関係ないので、予定の時間通りだと思います」


柵の補強も終えて、あとは待つだけ。


北側のゴブリンは他の個体と違って肌が黒く、気配を消して近づいてくる。

他の方角だと松明を掲げてあからさまに襲ってきたのに、ここだけ足音を殺したり、匍匐前進してくる個体もいる。

明音先輩の視力なら普通に見つけられそうだが、万が一を考えて秋灯も来た。


「明音先輩、魔力って目とか耳に集められます?」


ふと思いついたので明音先輩に聞いてみる。


「やったことないけど、たぶんできるわよ。なんで?」

「九装が目に魔力を集めて視力を上げていたので先輩も同じことが出来るかもと」

「ふーん、そんなこともできるのね」


やってみるわと、先輩が身体に力を入れる。

ふんふん唸りつつ、身体からうっすら赤い魔力が漏れ出す。

眉間にしわが寄って歯を食いしばっているが、これはアレだな。

トイレで力んでいるときとか、きっとこんな顔になるんだろう。


「むぅぅぅうううう」

「難しいですか?」

「むぅ。九装君にできて私にできないはずがないわ」

「敵視しすぎじゃね?」


九装をライバル視しているのか、悔しそうな顔だ。

南側では仲良く戦ったはずなのに、二人の交友深度は諦めるしかないかもしれない。


「ちょっと失礼」

「きゃっ!急に触らないで。びくってなるでしょ!!」


明音先輩の目元に軽く触れるが、すごい勢いで飛びのかれた。

そんなに驚かれるとちょっと傷つく。


「いいから。触れられている箇所に集中して魔力を集めてみてください」

「むず痒いんだけど」


再度頬骨あたり手を添える。

明音先輩は口をむにむにさせているが、大人しく集中する。

薄赤色の魔力がこっちまで飛んできてちょっと煙たい。


「おお!草原の奥まで見え・・・・・・・・・酔うわねこれ」

「厳しいですか?」

「見えすぎてきぼち悪い」


頬を膨らませて吐きそうな顔になっている。

まだ慣れていないのか、それとも明音先輩の視力が元から良いからか。

なんにせよこれでは戦いながら使うのは難しそうだ。


「それなら耳はどうですか?」

「ちょっと待って・・・・」


その後、魔力の纏い方を試した結果耳ならなんとか強化できることが分かった。

五感の強化は思ったより慣れが必要なのかもしれない。

魔力を使いすぎてもあれなので、ここらへんで一旦やめておく。


「風の音が大きいわ」

「俺も声を張りますけど、聞こえない場合は使ってください」

「うるさい」


先輩の視力を高めて、一人で倒しきってもらおうとしたが、流石にそこまでうまくいかなかった。

ただ戦場を索敵した結果をどう伝えようか悩んでいたので、聴力の強化はちょうどいいかもしれない。


ブツクサ文句を垂れているが,これで一応の準備は整った。


「さてそろそろですね。大丈夫そうですか?」

「ええ。村の人全員助けて、気持ちよく次に行くわ!」


北側の襲撃開始時刻まで残り一分。

肌を黒くし草原に隠れようと、不可視の天の目にはすべて見えている。

秋灯は目を瞑りながら草原全体に自分の意識を延ばしていく

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