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人の灯りが消えた世界で  作者: 糸間 ゆう
第二試練 白亜ノ塔
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第二試練22 張りきった結果

最終的に村人の男性40人が武器を手に取った。

老人や子供を除きほぼ全ての戦える村人が残ったことになる。


東側の襲撃時刻まで残りわずか。

明音先輩が張り切りすぎて、ゴブリンを倒しすぎてないといいのだが。


秋灯は村人を東西の二つのグループに分ける。

東側が伊扇が防衛するので、村人の中で特にガタイのいい4人を選出した。

あまり多すぎても彼女の風に巻き込まれてしまうが、ゴブリンが近くに迫ったとき彼女の身を守ってくれる村人が必要だ。


「秋灯さん、気をつけてくださいね。本当に、気をつけて、無理そうならちゃんと逃げてくださいね」

「大丈夫です。伊扇さんこそ無理しないように。あと村人の方をくれぐれも巻き込まないようにお願いします」


伊扇に再三心配されるが、ようやく東の柵へ向けて出発した。

村人は残り36人。配置や戦闘の仕方などを説明しつつ、秋灯たちも移動を始める。

日々の畑仕事で鍛え上げられたマッチョな彼らの先頭に立つと居心地が悪い。


西側の戦闘は基本足止めが主だ。

約30分間、犠牲者を出さずにゴブリンが村に入るのを食い止めなければならない.

三人一組を基本とし、一匹ずつゴブリンを退けていく.

最初の方はゴブリンもまばらなため、草原の奥で撃退しつつ、数が増えてきたら緩やかに後退する予定だ.

命を大事に、危なくなったら逃げる旨を村人に厳命していく.


「へっ!軍師様がついてくださるんだ。あんな緑人ども俺一人だけでも十分だ」

「俺は先月子供が生まれたばかりでさぁ。絶対に死ねないんだ」

「私もまだ孫の顔を見ていない.まだまだ死ぬ訳には行かない」


ナチュラルに死亡フラグを立てる村人達。お前らの思考ルーチンはどうなっているんだ。

適度に会話をしつつ、秋灯の不安が募っていく。

広場で士気を上げすぎたかもしれない。


演説は思ったより受けが良すぎた。秋灯がどこかの国のお偉いさんだと本気で信じている。

自警団だけは指揮に入れたかったが、それ以外の村人も予想以上に集まってしまった。

幸い伊扇にも村人をまわせたので、結果としては良かったが。

彼らの言葉を聞いていると、最悪命を賭して戦いそうな雰囲気を感じる。

それはこの課題が達成できないので止めて欲しいのだが、 今の雰囲気に水を刺すのもどうかなと思う。

背中で村人の熱気を感じつつ、秋灯だけ冷めきっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


「ふぅーーーーー。あらかた片付けたけど、不味いかしら?」

「予定の時刻よりだいぶ早く殲滅してしまったから、伊扇さんはともかく秋灯はまずいかもね」

「・・・・・やりすぎたわね」

「・・・・・やりすぎたね」


南側のゴブリン200体。まだ草原の奥でまばらに出てくるが、ほぼ全てを撃退していた。

時刻は0時30分。予定では50体近くゴブリンが残っている計画だったが、明らかに少ない。


「とりあえず白峰嬢は東側へいきたまえ。私は残っているゴブリンを片付けつつ、様子を見て西側へ向かうよ」


ゴブリンの総数は200体だが、出てくる時間にばらつきがある。

現状草原にはゴブリンがほとんどいないが、これから10匹20匹くらいは出てくる可能性がある。


「いくつ倒してたか数えておけばよかったわね」

「一応ざっくり計算していたけど、だいぶ遠くの方に炎弾を放ってしまったからね。数えていた数字に自信がないね」


明音はともかく、九装もテンションが高かった。

これまで使用してなかった大きめの規模の魔術を使ったが、明音の戦っている姿に気分が乗せられた。

今回の作戦、秋灯の命が割と本気でかかっていることも大きい。


「風穂野のところへ行くけど、九装君もできるだけ早く秋灯のところへ向かってね」

「あぁ了解したよ」


明音が再び魔力を纏い、身体が赤色に覆われる。

同時に地面に足形を残し、急加速。この戦闘を経てさらに魔力の扱い方が上手くなった気がする。


「さて、私はどうしたものかな」


草原をぼんやりと眺めつつ、残っているゴブリンに対し、手慰みに魔力弾を放つ。

東西の戦闘はおそらく開始されている。

全力で魔力を纏えば明音並みの速さで秋灯の元へ駆けつけられるだろう。

しかし、と九装は考える。

 

遠くの方でゴブリンの一団が出現する。

数は10体程度なので、総数の200体まであの群れで終わりか次があるかくらい。

 

秋灯の救援に行くのは決めていたが、タイミングが難しい。できれば彼の隠し玉を使わせたい。

本人は最後まで認めなかったが、秋灯は魔術を使える気がする。


魔力は常時、身体の周りを循環している。

それはごくごく微量で、言い換えれば生命エネルギーのようなものなので、本職の魔術師でも感知することは難しい。

ただ、魔力の扱い方が習熟している九装はその小さな流れを感知できる。


魔術師と非魔術師の違いは魔力の循環の流れが異なる。

非魔術師は普段魔力に触れていないため、微細な魔力、生命エネルギーの出が悪く循環効率が悪い。

血管が詰まっているようなイメージを非魔術師から受けることが多い。


逆に魔術師は魔力の循環がよく、全身に行き渡っている。例えば血流がサラサラしていて健康的な状態だ。

秋灯の魔力量は、一般人と同程度かそれを下回っているため滞留している魔力を感知するのは大変だったが、循環の仕方は魔術師と変わらない。魔力を扱っていなければ、あの流れにはならない。


7階の《束の間》に滞在していた時、橋を切断した人物だとバレてしまったため、できれば秋灯の隠し事を把握しておきたかった。


「かといって、秋灯が死ぬのは勿体ないし・・」


戦闘が苦手なのは本当みたいなので、救援に向かうタイミングを九装は測っていた。


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