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人の灯りが消えた世界で  作者: 糸間 ゆう
第二試練 白亜ノ塔
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第二試練19 南側防衛開始

「意外だったよ。君がこの作戦を呑んだことが」

「急に何よ。九装君は何か文句があるの?」


東西の防衛柵の強化を終え,襲撃開始まで残り5分となった。

村の南側。柵から距離をとり,村の外の小高い丘の上で九装と明音が合流した。


「いや私はないよ。精度の違いはあれど,この作戦に似た提案しか私にもできないからね。襲撃時刻と我々の掃討力を加味すれば最高ではないが,最善と言っていい作戦だ」

「ならいいでしょ」


二人の仲はこの階層に滞在してだいぶ険悪になった。

考え方が根っこから違うのか、意見がことあるごとに食い違っていた。


「この作戦で一番危険なのは秋灯だ。彼は頭は回るが,戦闘面では一般人と変わらない。今回のような課題であれば指揮や裏方に注力すべきだ」


九装は好奇心を含め秋灯を高く買っている。

この課題で戦っている姿ーー正確には逃げている姿ーーを見たが特に評価を変えていなかった。


7階の束の間の時点で、秋灯の隠し事についてはなんとなく勘づいていた。

おそらく魔術、それに関係する技術を持っている。

そして、それを特に白峰明音に隠したがっていること。


西側の戦闘で危険な目に合えば秋灯も隠している何かを使わざる負えない。

だからこそ明音の移動先を伊扇がいる東側へ指定し自分から遠ざけたのだろう。


「世界の時間が止まってから一番長く秋灯と行動を共にし、彼の身を案じている白峰嬢がこの計画を呑んだことが意外だったのさ」


秋灯の隠し事に気づているのか。それとも魔力が使えない一般人として見えているのか。

白峰明音の秋灯に接する態度は歪に見える。


「私は四国に来るまで何回も秋灯に助けられてきたわ。無茶を言ったこともある。今回も私と風穂野が村の人全員を助けたいなんて言わなかったら秋灯が無理をすることをもなかった。あいつ一人だったらさくっと村人見捨てて先に進んでたでしょうね」

「それが分かっていてなぜ」

「あいつは私のわがままを叶えようとしている。だから私もそれを信じる」


明音の顔には罪悪感も焦りもなかった。

九装にとって白峰明音は現実が見えておらず理想を言っているだけのように感じられたが、秋灯とセットにした場合もしかしたら違うのかもしれない。


「秋灯が立てた作戦がどんなものでも私はそれを支持するわ。秋灯は私の頭脳なんだから。そして実行するのが私」


世界の時間が止まって一カ月。同じ高校に通っていたらしいが、接点はなかったらしい。

試練が始まってから短い期間でここまで信頼関係が築けるものなのか。


「それに、ここのゴブリンをさっさと倒せば九装君が秋灯の元へ早く行けるんでしょ。なら一瞬で倒すわよ」

「全く。君たちがそこまで信頼しあっているとは。羨ましいものだね」

 

九装たちの前方で,微かな赤い光が見えだす。

ゴブリンが持っている松明が,丘の遠く先でいくつも光っていた。


同時に村の櫓から鐘の音が響く。村の自警団がゴブリンの群れを発見したサインだ。

ここから本格的に課題が始まる。


「九装君は奥の方のゴブリンをお願い。私は近くの群れを狩っていくわ」

「了解した。手早く片付けようじゃないか」


九装が返事をしたと同時に明音が丘から飛び出す。

身体には淡い赤色の魔力を纏っていた。

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