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第二試練17 長ったらしい説明

「まず今回の課題についてどこまで達成するかですが、村人全員を助ける。これを必須条件にします」


九装は不服そうにしているが、誰か一人が《やり直し》を宣言した時点で石碑の前に戻されてしまう。

明音先輩は村人が死んでいると分かったら,必ず《やり直し》宣言するのでこれは最低条件だった。


「全員を助けられたら時間解凍の回数は減りませんし,それに何か特典もありそうなので。一旦九装もそれで納得してほしい。ただ,もし今回の挑戦も失敗したら流石に次は犠牲ありきで考えるしかないです」


今度は明音先輩が不服そうな顔をするが,秋灯は今回の課題は達成できる確立が高いと踏んでいるのでそのまま続ける。


「これまで三回挑戦してきましたが,前回の挑戦はかなり上手く行ったと思います。ただ,北側の方向から夜襲があると気づけなかった。そのため迎撃が遅くなって村人が犠牲になりました。ただ,これで全ての方向からゴブリンが攻めてくること,そして群れの数,攻め方,時間についてもわかりました。あとは俺たち四人をどこに配置してゴブリンの掃討にどれだけ短く対処できるかです」


秋灯は計三回のゴブリンとの戦闘で明音と九装が善戦している間、割と暇だった。

一応戦ってはいたが、あまりゴブリンを集めすぎると秋灯の場合普通に死んでしまう。

適度に逃げつつ、東西南北の襲撃の開始の時刻と掃討にかかるおおまかな時間を計っていた。


「ざっとですがゴブリンが出現する時刻,そしてこちらがどのように動けばいいかを書き起こしています」


秋灯が作成していたメモ紙を見せる。

それぞれ東西南北のゴブリンの数,そして襲撃開始から四人の配置が記載されていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


南側:ゴブリン200体出現 0時

東側:ゴブリン100体出現 0時25分(推定) (南側ゴブリン総数ー100体とほぼ同時に出現する)

西側:ゴブリン100体出現 0時40分(推定) (南側ゴブリン総数−150体とほぼ同時に出現する)

北側:ゴブリン50体出現  1時20分    (南側ゴブリンの総数に関係なく出現する)


0時00分 南側ゴブリン200体出現  九装,明音が迎撃

0時25分 東側ゴブリン100体出現  伊扇が迎撃 足止めに徹する  

0時40分 南側ゴブリン50体(150体撃破) 残りを九装が迎撃 明音東側へ移動

      西側ゴブリン100体出現  秋灯が迎撃 足止めに徹する

0時45分 東側へ明音が到着 明音,伊扇が迎撃

1時00分 南側ゴブリン0体(200体撃破) 九装西側へ移動

1時10分 西側へ九装が到着 九装,秋灯北側へ移動

1時15分 明音,北側へ移動

1時20分 北側ゴブリン50体出現 明音,秋灯が迎撃


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「秋灯、あんたいつの間にこんなの作ってたの?」

「戦闘で役に立てそうもなかったので、一回目の挑戦時の終わりぐらいからですね。俺は結構村人と一緒に逃げてたんで余裕があったんですよ」


ゴブリン襲撃時、村の中は家屋が燃え襲われる村人が泣き叫んでいたりと地獄のような風景だった。

その状況で周りを観察していた秋灯に明音はドン引きした。


「襲撃の開始時刻は0時と仮定して,そこからゴブリンの出現時刻,そしてこちらが何分で掃討できるかおおよそですが出しています。侵攻してくる方角は四つですが,こちらでゴブリンとまともに戦えるのは九装と明音先輩の二人だけ。今まで二人には南側から迎撃を開始してもらい、あとは臨機応変に対応してもらっていましたが、今回はタイムテーブル通りシビアに動いてもらいます」


南側を九装,明音先輩の二人で即時に掃討する。

東側と西側のゴブリンの出現時刻は南側のゴブリンの減少数により前後するので,数が減少してきたら先に明音先輩を伊扇が防衛している西側へ向かわせる。

移動の時間は明音先輩の場合,魔力を纏っていれば2、3分で移動できる。


南側の全てのゴブリン掃討後,九装は秋灯がいる東側へ移動。

九装が東側へ合流した後,秋灯は北側へ移動し,その5分後西側から明音先輩も移動を開始する。

北側の夜襲に関して九装や明音先輩だけでは取りこぼしがでる可能性があるため,広範囲の索敵が可能な秋灯が同行する必要がある。


理論上秋灯の示した時間通りに動くことができたら,村に一匹のゴブリンも通すことなく殲滅できる。

今回の作戦は九装と明音先輩の二人を最大限運用する方法だった。


「この時間通りに正確に動くことは正直難しいです。予測してなかったことも起こるかもしれません。ただ目安としてこのような動きができれば,ゴブリンを効率よく殲滅できます」


「二点気になる点がある。私や白峰嬢の動きについてはまず納得できる。だが,その間伊扇嬢や秋灯,君たちが一人で100体のゴブリンを足止めをすることになる。伊扇嬢であれば魔力で風を起こせるため足止めなら可能だろう。危険が及んでもおそらく自動で暴風が発生するし,逃げることも可能だ.問題は君だ秋灯。君は戦う術を,魔力を持たない。ただの一般人の君がどうやって足止めをするつもりだい」


7階の《束の間》で九装が橋を両断した人物だと暴き,そして九装にどうして非魔術師のフリをしているのか問い詰められた際.二人は約束をした.


これ以上を相手を暴かないこと.そして暴いていない情報を誰にも漏らさず扱いを変えないこと.

つまり秋灯は九装を橋の両断ができるほど魔術が使える人物として扱わず、九装もまた秋灯を魔術師として扱わない.九装は少し魔術が得意な紳士もどきで,秋灯は魔力の魔の字も知らない一般人として.

今も九装は秋灯を非魔術師として扱い気遣うそぶりを見せている.


「村の中に自警団の組織があってその人たちならある程度戦える.南側の襲撃から大体40分で西側が襲撃されるからその間に戦える人を集めて西側に移動してもらうつもりだ」


0時以降であれば村人の配置を自由に動かせる.

本来自警団なる組織は襲撃開始時刻とほぼ同時に南側を防衛しに行く.

一,二回目の挑戦時は200体のゴブリンに真っ先に蹂躙された人たちだが,統制が取れれば役に立つはずだ.


「色々穴がありそうだけど,一旦それで納得しよう.それで二点目だがどうして君が北側に行く必要があるのかい?夜襲に関しては近接が得意な明音嬢が行くのはわかるが,君は必要なのかい?」


あくまで非魔術師として秋灯を扱いつつ作戦の問題点を突いてくる.


「俺は魔力は使えないけど広範囲の索敵ができる.北側のゴブリンは位置が見えづらいし,一匹でも逃すと村人が犠牲になる可能性がある.明音先輩のフォローはどうしても必須だ」

「索敵ねぇ.それを使ってこれだけの情報を集めていたのかい?」

「あぁ.見えてなくても半径100mくらいなら建物や地形,人が何人いるかがわかる」


九装にずっと隠していたが、今回の課題なら仕方がない。

時間解凍の拡張についても勘づいていそうだったので今更な感じがする。


「その索敵とやらは一体どうやって身につけたんだい?」

「試練が始まってからいつの間にかできるようになってた。魔力を使ってないから魔術関連の技術じゃないと思うけど、原理は自分でもよくわからん」


索敵は時間解凍の範囲を広げるためいつの間にかできていた技術だ.

視覚ではなく別の感覚.第六感のようなものなので原理を説明しようにも秋灯自身よくわかっていなかった.


「にわかには信じられないが、実際これだけの情報を集めていたことだし信じるしかないね」

「魔術みたいな奇跡みたいな力を使う九装でも信じづらいのか?」

「魔術は体系化された技術だよ.過去の術師の研鑽の積み重ねであり原理と証拠が存在する.魔力を使用して索敵する術式はあるが,君のそれはどうやら違うようだしね」


本当にこれは何なんだろう。

現役の魔術師である九装が驚いているのは意外だ。


「索敵能力・・天の目,全知覚,不可視の遠見,」

「何ぶつぶつ言っているの秋灯?」

「いえ、そろそろこれにも技名みたいなものをつけようかなと。索敵能力じゃ味気ないかなって」

「はいはい,馬鹿なこと言ってないで話を進めてくれる?」


明音先輩が呆れたような顔でこちらを見てくる.

技名があったっていいじゃないか。


「九装の疑問に答えたので,あとは確認だけですが,伊扇さん.東側の足止めを20分間一人で行わないといけない計算なんですが大丈夫そうですか?」

「えとえと,最初の方はゴブリンもまばらですし,多分持ち堪えられると思います!」


これまで三回の挑戦で伊扇の風の調整は精度が増してきている.

普段暴発する突風を自分の意思で放つことができるようになったので足止めなら安心して任せられる.

戦闘向きな性格であればもっと活躍できたかもしれない.


「明音先輩は南側から最終的に北側まで移動していただきますが、時間管理が大分シビアですけど,行けそうですか?」

「大丈夫よ!ある程度南側を片付けたら東に移動して,そこが終わったら北に向かえばいいのよね」

「時計はちゃんと確認してくださいよ」


九装や伊扇に明音先輩の移動時間について言い含めておこう.


「九装は、、まぁお前なら大丈夫か.がんば!」

「私だけ軽いなぁ.もっとちゃんと確認してもらいたいんだけど事実、僕は割と余裕だからね」


九装はこの中で一番戦闘に秀でている.普段使う魔力の弾丸やその他炎や雷などの魔術も使用していた.

身体の強化も普通に行なえるのでまず命の危険はない.


「そんなことよりあなたよ秋灯.九装君は納得してたけど,本当に大丈夫なの?」


秋灯の戦う姿はこれまで酷かった。

納屋に置いてあった鍬を武器にゴブリンに振るったり、村に侵入させまいと囮になり全力で草原を駆け回ったり.

5匹ぐらいのゴブリンに羽交締めにされたこともあった.

三回の挑戦の中、明音先輩や伊扇に何度も助けられていた。

同じく心配なのか伊扇もこくこくと頷いている。


「これまで諸々そつなくこなしてきた俺ですが、今回の課題では無様を晒してきました」

「いや秋灯って結構不器用よ」

「なんたる醜態.なんたる不覚.培ってきた自信が大暴落しています」

「秋灯さんって時々へんになりますね」


「ですが、今回の挑戦はもう大丈夫です!襲撃時のどさくさで戦える村人を指揮すれば俺は彼らを手足のように扱ってみせます.一人の犠牲者も出さず30分間ゴブリンをけん制して見せましょう。そう、俺には”不可視の天の目”がありますから!」

「不可視?何それ?、、あぁ索敵のことね」


明音先輩と伊扇がちょいちょい話を遮ってきたが無視して最後まで言い切った.

魔術師の大家.九装家お墨付き索敵能力の名前に文句をつけないでほしい.


「魔術を使えば索敵は結構できたりするんだけど、黙っておこうかな」


九装の呟かれた言葉はテンションが上がっている秋灯に届くことはなかった.

驚いた理由は魔力を使わないことだったが、胸にしまっておくことにした.

秋灯の索敵能力の技名に意味はない。

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