第二試練15 13階 防衛の間
束の間を出てから四日が経過した。
8階以降も歌唱の間や迷路の間、警泥の間など学校で仲良くなるために行われるレクリエーションのようだった。
時間解凍についても回数の増減がほとんどなく,特典もまだ一度も使用していない。
ここまで12階層までの攻略は数時間で済ませてきたが、現在攻略中の13階にだいぶ手こずっている。
すでにこの階に到着してから三日以上が経過している。
幸い食料や寝床には困らないが、課題が厄介なだけあって精神的に疲れてきた。
九装はともかく明音先輩や伊扇は限界に近い。
■13階 防衛の間
《死んだ者一人につき 時間解凍−1》
13階はこれまで登ってきた階層とは雰囲気がだいぶ違った。
まず部屋の広さは一階と同じくらいかそれ以上あり,近くの壁しか確認できない。
また、これまで無機質な白一色だった階層が、足元はくるぶしくらいまである草原と天井には青い空。
そして太陽が昇っている。
壁にも空や地面の映像が映し出されていて一瞬見ただけでは壁とは思えない。
最初,見渡す限り草原の風景を見たとき白亜の塔から別の場所に飛ばされたと勘違いした。
石碑にはいつものように文章が刻まれていたが,内容はこれまでと違い物騒だった。
死んだ者。つまりこの階層には死の危険が存在していた。
「はぁはぁ,また最初からね」
「今度は北側の防衛柵を厚くしましょう。奇襲を受けたら今のままでは対応できないです」
「それだと別の箇所の防衛が疎かにならないかい?ある程度人数を絞らないと守り切ることはできないと思うよ」
「で、でもそれだと村の方が・・・また犠牲になってしまいます」
この階層は草原の中にポツンと村がある。
村の中には民家が三十軒ほど並んでいてその中に宿屋や酒場が用意されている。
日本の平屋と違い石材やレンガで出来ていて、見た目はRPGゲームに出てくるような欧州の建物に近い。
その他、牛や馬などが飼育されていたり畑があったり、村の外周は胸あたりの高さまである厚い板柵に囲まれている。
そしてこの村の中には人が暮らしている。
外観は全く人間のそれであり、東洋人のような顔立ちで簡単な会話もできる。
試練の内容や複雑な言葉には反応してくれないが、村のつくりや挨拶などは返事をしてくれる。
おそらくこの試練のために用意されたNPCのような立ち位置なのだろう。
魂があるかまではわからないが、高性能なAIのように感じられる。
秋灯達は旅人の設定で、村を訪れ宿屋に宿泊する。
こちらがほとんど会話をしなくてもゲームのストーリーのように勝手に泊まる流れになっている。
そして宿泊した夜。村は緑褐色の肌に覆われたゴブリンに襲われる。
ゲームに出てくるような小学生くらいの身長でやせ細った身体を持つ化け物。
秋灯たちはゴブリンから村を守り切れば課題は達成となる。
逆に村人を全員殺された場合課題は未達成となる。
また四人のうち誰かが、《やり直し》を宣言した場合、課題が未達成となる。
未達成となった瞬間、四人は石碑のある場所まで飛ばされ、この課題はやり直しとなる。
再度村まで歩いて半日過ごしたのち深夜ゴブリンに襲われる村を守らなければならない。
これまで通算三回挑戦し全て失敗に終わった。
一度目は試練の内容が分からず、夜中に宿屋で目を覚ますとゴブリンが村を襲っていた。
村人がゴブリンに殺される光景はNPCであっても酷く凄惨なものだった。
二度目は試練の内容を理解してゴブリンの撃退にあたったが、けっこうな数の村人が殺されてしまった。
石碑に刻まれた文章通りであれば亡くなった村人の人数分時間解凍の回数が減るため《やり直し》を宣言した。
三度目についても最初はうまく防衛出来ていたが、四方の囲まれた柵のうち北側を突破された。
二度目とは違う場所から侵入され迎撃が遅くなり村人を殺されてしまった。
亡くなった村人は5人だけだったが、明音先輩は《やり直し》を宣言した。
これで計四回石碑の前に立ったことになる。
今度こそもう失敗できない。
■13階 防衛の間
《死んだ者一人につき 時間解凍−1》
・村人が死んだ数=時間解凍回数減少
・シナリオは自動で進行する(宿泊⇒襲撃)
・《やり直し》を宣言できる
・村人を全員殺された場合課題が未達成
・村人が一人でも生き残っていれば課題が達成
その場合、【村人が死んだ数×(-1)=時間解凍回数減少】する