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第二試練14 男二人の雑談

「そういえば秋灯、伊扇さんとはどうやって仲良くなったんだい?」


秋灯が座っているオフィスチェアの横でソファに横になりながら九装が聞いてくる。

粘妖の間や鍛錬の間で活躍していた九装だが、どうやら眠る気がないらしい。


「お前と同じだよ。吹っ飛ばされて地面を転がりながら仲良くなったんだよ」


秋灯はreデバイスをいじりつつ九装に答える。

暇つぶしに試練の規定をもう一度読み進めていた。


「それだけってことは無いだろう。私は今の調子だと打ち身と青あざが増えるばかりで仲良くなれると思えないんだ」

「あと一週間もすれば伊扇さんもお前に慣れると思うぞ」

「それは長いなぁ。この試練の方が早く終わってしまいそうだよ」


第二試練の期間は明記されていないが、九装はある程度早く終えられると考えているようだ。


「何かないかい秋灯?伊扇嬢とこう一気に仲良くなる方法は?」

「強いて挙げるなら本音で話すとかかな。俺も伊扇さんとちゃんと仲良くなったのはそのあとだったし」

「そのあと?」

「第一試練が半分経ったくらいで、明音先輩が体調を崩してな。歩くことも難しかったから伊扇さんには先に行くよう伝えたんだ。伊扇さんには無理言って同行してもらってたから」


今思い返しても伊扇を誘ったときは強引だったと思う。

食料を盾に交渉したため最初は罪悪感があった。


「でも伊扇さんは一緒に行くと言ってくれてな。その時に本音を言い合ったから仲良くなれたんだと思う」

「なるほど。ドラマチックな出来事があったんだね。でも白峰嬢が体調を崩すとは、到底想像できないんだけど。普通の風邪でも平気で動けそうだしね」

「試練が始まってから明音先輩が急に魔力を使えるようになってな。身体が拒否反応を示したのか理由は良く分かっていないけど、伊扇さん曰く魔力が多い子供がかかる症状に近いって」

「確かに魔力が多いと幼少期に倦怠感だったり、精神的に不安定になる子供がいるね。ただ、動けなくなるほどの症状は聞いたことがないな」


明音先輩のケースは魔術師のエリートの出でも珍しいと感じるみたいだ。

今は動けているものの、体調についてはまだ注意しておこう。


「九装も本当に仲良くなりたいんだったら、もう少し自分のことを話すことだな。どうせ色々隠してるんだろ?」

「隠し事かい?そんなに後ろ暗いことはしていないつもりだけど」

「明石海峡大橋を切断したのお前だろ?」


秋灯はさも日常的な会話を続けているように平坦な口調で話す。

未だにデバイスの画面から顔を上げていなかった.


「・・どういうつもりだい?」

「九装が初めて話しかけてきたあと俺も色々調べたけど、、お前知りすぎだよ.お前ほど情報を持っている参加者は一人もいなかった」

「それは単に私が必死に情報を集めただけであって、私が犯人の理由にならないんじゃないか」

「犯人ね.別に橋を切断したのは悪いことじゃないだろ」


橋の切断は試練の規定範囲内でできる妨害行為だ.

あれを理由に試練に落ちたものがいるかも知れないが、俺たちはお行儀良く試練を受けているわけではない.


「明石海峡大橋を監視していた人間がいたこと。時間解凍の拡張方法を知っていること。そしてわざわざ俺たちのチームに入ったこと。橋をベッドで飛び越えた俺たちに大方興味があったんだろ」

「それは祝賀会の会場で君たちが近くにいただけであって」

「他にも理由を挙げようと思えば挙げられるけど、お前に認めさせるほどの決め手にはならないかな。それに結局勘だし」

「勘なのかい。それなら私が犯人とは言い切れないじゃないか」

「ただ、確信はしている」


ここで初めて秋灯はデバイスから顔を上げる。

九装の顔は普段の余裕がある雰囲気が崩れシリアスを纏っている。


「もう一度言う。お前が橋を切断した人物だよ」


シリアスな九装と違い、特に力を込めず言い切る秋灯。

長い沈黙のあと、九装は観念したように両手を上げた。


「ふぅ、その通りさ。どうやったかは言うつもりはないが、私が明石海峡大橋を切断した。監視をしていたのも私だよ。君たちがベッドに乗って飛び越えた瞬間は実に驚いた。腹を抱えて笑ったよ。なんせベッドだからね」

「・・他にちょうどいいのが無かったんだよ」

「でも、好奇心に負けて君に接触してしまったのはどうやら間違いだったかな。それで、私を暴いてどうするつもりだい?」

「いや、どうもするつもりはないけど」


九装が認めたことで、一仕事終えた秋灯は机に頬杖をつきながら答えた。

先ほどの緊張感は無くなっていた。


「は?・・ならなんで君は」

「最初に言ったろ。仲良くなるためには本音で話したほうがいいって。これで隠し事が一つ減ったから少しは本音で喋れるんじゃないか。明音先輩や伊扇さんには伝えるつもりはないけど」

「秋灯はまだ私と友好的な関係を続けたいと?」

「そう言ってるつもりだ。この試練仲良くならないと進めなくなりそうだし」

「はぁ、わかったよ。全く心臓に悪いな」


九装もひとまず秋灯の言い分を飲み込んだようで肩の力を抜いた。

微かに纏われていた紫色の魔力は霧散していた。


わざわざ九装と二人きりになった瞬間を狙って問い詰めたが、やっぱり九装が橋を切断した人物だった。

ほとんど推測の域を出ない証拠ばかりだったから、まさか認めるとは思わなかった。


でも魔術師の大家はあの大きな橋さえ両断してしまうらしい。

試練の規定に参加者同士の争いが禁止されていなければ最悪殺されていたかもしれない。


秋灯は気だるさを感じさせるような余裕を見せていたが、その実脇汗でシャツがべっとりしていた。


「でも私ばかり暴かれてフェアじゃないからね。私からも一つ君を追求しておこうかな」


もうすでに雑談の雰囲気に戻っていたが、まだ九装は話しを続けたいらしい。

明石海峡大橋を監視していたと言っていたので、摩擦がないベッドのことを聞かれるのだろうか。

それとも時間解凍の話しをしたときに秋灯が拡張できることに気づいただろうか。


「君はどうしてずっと非魔術師のフリをしてるんだい?」


瞬間、秋灯はポケットに入れていた紙の束に魔力を流しそうになったが、ギリギリ思いとどまった。

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