第二試練10 開錠
再度階層全体をくまなく探索し、だいたい一時間。
見つけた鍵は全部で三つ。本棚の上、人体の彫像の手のひら、そして最後の鍵は真球の頂点に置かれていた。
流石に時間が止まった引き出しの中にあるような意地の悪い置かれ方はしていなかった。
「うーん棚の鍵じゃないからしら?ほらギザギザが似ているわ」
「いやこれは球の鍵じゃないかい?持ち手の意匠が一番似ているよ」
「うーーん。似ているようで、どれも違う気がしますぅ」
置かれていた場所で鍵を呼び合っているが、どれも刃先や形状が若干異なっていた。
石碑の前でうんうん唸る四人。
鍵はその場から動かせないため記憶を頼りに石碑の絵と似ている鍵を考察していた。
「上の階層に続く扉には特にヒントになるようなものが無かったので、手がかりはこの石碑くらいですよね」
「そうねぇ。この石碑の見た目で判断するしかないわよね」
三つの鍵と共通点があったりなかったり。
石碑の絵だけでは細部の作りが抽象的でわかりづらい。
「ねぇ。悩んでてもしょうがないから多数決にしましょう!間違ってたらもう一回解凍すればいいわ」
「それもそうですね。もしかしたらどの鍵でもいい可能性もありますし」
判断がつかないので一旦多数決をとる。
結果は球の鍵が秋灯と九装で二票。棚の鍵が明音先輩で一票。
伊扇は判断がつかないらしく票を放棄した。
「むぅうう、多数決だから仕方ないけど、私は棚の鍵だと思うわよ」
「まぁまぁ。間違ってたら次は棚の鍵にしましょう」
「どうやら我々は気が合うようだね秋灯!これで交友深度が上昇したんじゃないかい?」
「九装うっさい」
大仰な手振りの九装を制しながら球体の上に置かれた鍵の方へ歩いていく。
「次の解凍は、、、」
「わ、私がやります!最近あんまり解凍してなくて緊張しますが・・」
宣言通り伊扇が解凍の準備をする。
球体は直径が2m弱くらいとそこそこ大きい。
reデバイスの指定する範囲を間違えると最悪、鍵が解凍されない可能性がある.
普通の方法ならまず間違えないのだが、わちゃわちゃしている伊扇を見ていると心配になる。
「・・・時間解凍.で、できました!」
伊扇がぴょんとジャンプし球の鍵を取る.時間は問題なく動いている。
鍵を手にこちらに戻ってきた伊扇を明音先輩が撫でているが、目つきが小動物でも愛でてるようだ。
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「さて問題はその鍵が鍵穴に通るかですが・・・」
上層階へ続く扉の前.
見た目は一階の扉と同じように両開きの作りだが、一点金属の錠前が扉の前についている。
もちろん扉の時間は止まっている。
「九装じゃんけんしようぜ」
「えっと秋灯.ここは回数が多い君からやってくれる流れじゃないかい?」
後ろに控えていた九装だが、まだ自分の番じゃありません、みたいな顔をしていた.
「ここは公平にじゃんけんだろ」
「君の方が回数が多いじゃないか。私はたったの三回しかないのだけど」
「まだ特典を使ってないから俺も三回だけだ.回数は同じだろ」
「いやそれは屁理屈じゃないかい」
時間解凍を渋る九装.
秋灯自身、時間解凍をするのは別に構わないのだが、ここで九装に釘を刺しておきたい。
もし九装との交友深度が上昇した場合、他の三人が特典を使い切っていて九装だけが回数を持っていたら何を言い出すかわからない.
それに、
「なんかお前だけ解凍しない流れになるのは気に食わん」
「ぶっちゃけたね君.ひどくないかい」
伊扇から九装の家のことを聞かされたが、秋灯は特に態度を変えなかった。
ただ澄まし顔をしている九装をいじりたかった。理由の大半はそれだけだ。
「こら秋灯.あんまり九装君をいじめるんじゃありません」
「・・・・・君呼びだと?」
明音先輩が諭してくるが、九装の呼び方に衝撃を受ける。
秋灯は出会った最初からぶっきらぼうに呼び捨てにされていたのに。
明音と九装の交友深度が上がればいいと思っていたが、これはちょっともやもやする。
「白峰嬢、助かるよ.君からも言ってやってほしい」
「九装君は話していて胡散臭いし、なんか信頼できないし、弱みを握られたらつついてきそうだけど」
「えっと白峰嬢?」
「でもあんまり弱い者いじめをするのはダメよ.可哀想でしょ」
「弱い者?・・九装家の人間である私が?可哀想?」
今度は九装が衝撃を受ける。
明らかに落ち込んだ表情をしているが、とりあえず秋灯のもやもやは晴れた。
「わかりました.でも九装、次はお前の番だからな.流石に0回まで使いきれとは言わないけど、後2回ぐらいはどこかで使ってもらうぞ」
「・・・うん.もうそれで構わないよ」
落ち込む九装を流しつつ、扉の前に立つ.
九装に見られているため範囲の拡張は行わない.
そういえば普通の時間解凍をするのは試練の開始以来だな.
秋灯はreデバイスを起動し扉全体を範囲に入れる.
解凍を一瞬で終え、扉の時間が動きだす.
「あ、秋灯さんコレ」
「ありがとうございます」
秋灯は伊扇から鍵を受け取り、鍵穴に挿し込む
閊えることなくすんなり入ったそれをガチャリと左に回した.
「開いたの?」
「みたいです.この鍵で正解だったみたいですね」
扉を押してみるが、確かに開く.
扉の先には一階と同じように長い螺旋階段が続いていた.
■今回の課題【探索の間】について
《鍵を探し出せ 時間解凍+-》
・実はどのカギを使っても扉を開けるができる。
・宝探しのレクリエーションをさせて参加者の仲を良くする目的があったりなかったり。
・白亜ノ塔の課題は階によって意地が悪いものが多い




