第二試練4 一階
身体の浮遊感がなくなり光が収まる。
秋灯は周りを確認するが、隣には明音、伊扇、九装の全員がいる。
今度は遅延なく転送されたようだ。
「ここが白亜の塔の中なの?何もないじゃない」
「す、すっごく広いですぅ」
明音先輩と伊扇が感想を述べる。
周りはなんの凹凸のない地面に10m以上ある高い天井。
視界のずっと先に壁らしきものが見えるが、遠すぎて距離感が分からない。
見渡す限り白一色の世界に呆然とする。
「これはすごいね。まさしく神に造られた建物のようだよ」
九装が感嘆を漏らすが、周りの光景が異様に感じられる。
余りにも何もない空間のため目がチカチカしてくる。
「とりあえず、第二試練の規定をみましょうか」
四人とも自分のreデバイスを取り出し中身を確認する。
守位天使の言った通り第二試練の規定が送られていた。
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【第二試練"白亜の塔"】
合否事項:白亜の塔を制覇すること
(制覇条件につきまして、いくつかご用意しております。塔の探索と同時に制覇の条件についてご考察ください。)
試練期間:未定(2025年11月10日~)
(各チームの制覇状況により試練期間は前後いたします。)
試練規定
第1項 - 参加規程
1.試練の参加は四人一チームで行う。
祝賀会会場内にて四人のチームを作成し端末画面に登録を行う。
2.第二試練終了までチームの人員の変更はできない。
3.一チームに一つ白亜の塔が割り当てられる。他のチームの接触は行えない.
第2項 - 時間解凍数上限変更に関する規定
1.時間解凍回数は、初期状態では三回となる。
2.塔を制覇していく過程で課題が出題されるが、達成により時間解凍回数は増減する。
3.時間解凍数の保有数の上限はない。また個人の時間解凍数がゼロになったとしても試練の不合格とはならない。
4.チーム内の時間解凍数がゼロになり、塔を登ることが不可能になった場合不合格となる。
5.時間解凍回数は時間経過で補充されない。
第3項 - 交友深度に関する規定
1.参加者間の交友深度が測定される。
2.reデバイスに登録されたメンバーの親密度を表示する。
3.交友が深まった数値を上限を50%とし、自信を除くメンバーを表示する。
4.数値の増加に伴い各特典が配られる。
5.時間解凍数は親密度により増える場合がある.
6.チーム内から親密度の数値が減少し0%より下回りかつ回復が認められない場合該当する参加者は不合格となる。
第4項 - reデバイスの機能追加、削除に関する規定
1.時間解凍回数表示機能 追加
2.交友深度に関する表示機能 追加
3.時間解凍回数上限(3回) 削除
4.時間解凍回数補充(一日3回) 削除
以下、第一試練と同規定
第5項 - 行動規定
1. 試練内での他の参加者への暴行、略奪、その他悪意ある行為は禁止さる。以下禁止例を示す。
故意による人の身体を傷つける傷害行為。
故意による人の財産を破損、窃盗する窃盗行為。
故意による人の知識、尊厳を傷つける侮辱的行為。
人身的保全についに基本的に日本憲法に準拠する。
第6項 - 能力規定
1. 自身の能力の使用を認める。
2. 魔術、魔力、異能、権限、武具、神具、魔具等使用を認める。
3. 己の所有している異能であれば一才制限しない。
4. なお、"参加者同士の争いの禁止に関する規定"が優先される。
第7項 - 禁制の解放に関する規定
1. 地球全土における禁制の段階的解放
2. 時間経過、場所、空間を要因として比率で解放
3.現在の平均解放率12%
推奨事項
1.仲良く試練に挑むことを推奨する
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「なるほど。第一試練と違ってけっこう複雑ですね」
「試練の達成条件が良く分からないわね。もっとちゃんと書いてほしかったわ」
「えっとえと・・交友深度?が表示されているみたいですね。なんですかねこれ?」
「時間解凍回数がネックだろうね。日をまたいでも補充されないみたいだし、課題?とやらの達成で増やせるみたいだね」
四人とも規定を一読し、それぞれ気になった点を挙げていく。
「試練の達成について載ってないので、とりあえず塔を登ってみますか。制覇が登ることなのかはっきり分からないですが」
「そうだね。現状それくらいしかやれることがない」
「えとえと、私もそれでいいと思います!」
「・・・・・・・・・」
全員の顔を見つつ秋灯が提案するが、明音先輩だけ明後日の方を向いて黙っている。
眉間にしわが寄っていて、すごく目つきが悪い。
「えっと明音先輩?」
「あれは・・扉かしら?」
明音先輩が見ている方角を確認するが、白一色の地面と壁があるだけで扉らしきものは見えない。
「あっちね。大きな扉があるわ」
一点を凝視しその方向を指差す。
秋灯には全く見えないが、本人は見えているようだ。
「明音先輩、視力もいいんでしたっけ?」
「左右どっちも2.0よ。子供の頃から全く変わってないわ」
「マサイ族みたいですね、あなたは」
明音先輩の身体能力の高さに以前から驚かされていたが、視力もいいらしい。
野生児のような生活でも送っていたのだろうか。
伊扇、九装にも見えているか確認したが二人とも首をふる。
秋灯自身も白い地面としか認識できないが本人が強く確信していることもあり先輩が指す方向へ進むことにする。
「時間解凍の回数についてみんなどうだろうか。白峰嬢、伊扇嬢も三回のストックとなっているかい?」
「ええ。3の数字が表示されているわ」
「は、はい!私もです」
歩きつつ九装が聞いてくるが、伊扇はまだ緊張している。
風が出てないだけましだが、早めに慣れてほしい。
「なんで俺には聞かないんだよ?というか近いな」
「君の画面は横目で確認していたからね.それにつれないこと言わないでほしいな.晴れて仲間になったんだから、仲良くしようじゃないか」
明らかに伊扇との間に秋灯を挟んで歩いている。
伊扇が風を吹かせた場合秋灯を盾にしようとしているのだろう。
「全員の時間解凍回数がなくなって塔を登れなくなったら試練は不合格か。登っていく上で時間解凍をしなきゃいけない場面があるってことですよね」
「そのようだね.回数は全員で管理し合おう。誰かに偏りが出ないようにね」
片目を閉じてキラリとウインクを返してくる.
現実にウインクをする人間を初めて見た.背筋がゾワゾワするのでやめてほしい.
「それと、あんまり触れたくなかったんですが、、交友深度についてですよね」
「そうね.これってつまりどういうことかしら?秋灯の画面に私が秋灯とどれくらい親しいかが映るってこと?」
デバイスの画面を時間解凍回数の画面から交友深度の画面に切り替える.
そこには自分を除く三人の名前と横に伸ばした棒グラフがそれぞれ表示されていた.
明音先輩の名前の下のグラフには数値で50%と記載されていた.
これは明音先輩から向けられる親密度の数値で、つまり明音先輩が秋灯のことをそれだけ親しいと感じていることになる.というか既にマックスなのか.正直恥ずかしいが嬉しい.
その下の伊扇は、、伊扇も50%と書かれている.
交友深度であるためおそらく友人だと認めた相手は簡単に50%になるのだろう.
九装については23%.二人に比べると低いが、まぁこんなものだろう.
デバイス所有者:鐘ヶ江秋灯
■白峰明音 ーーーーーーーーーー 50%Max
■伊扇風穂野 ーーーーーーーーーー 50%Max
■九装煉華 ーーーー 23%
「そうみたいですね.なんかギャルゲーみたいなシステムですね.恋愛とかの感情ではなくて友好的.友達だと思っていれば数値は高くなる見たいですね.交友深度が高いほどと何か特典があるみたいなんで、、一応お互い見せ合いますか?」
「恥ずかしいから見たくないのだけど」
「わ、私もちょっと・・・・その、恥ずかしいです!」
女性陣二人が拒否を示す.
伊扇の周囲では風が吹き荒れてきた.
九装は秋灯の身体を盾にしようと身をかがめる.
「既にどれだけ親密度を抱いているか相手には見られているわけですからそこまで恥ずかしいくないのでは。・・ただ自分が相手のことをどう思っているか数値がわからないだけで」
「みんな恥ずかしがり屋さんだね.では私の画面から見せよう」
九装がreデバイスの画面を三人が見えるよう向ける.
交友深度の画面には三人が九装をどれだけ親しいと感じているか数値が表示されていた.
デバイス所有者:九装煉華
■鐘ヶ江秋灯 ーーーー 20%
■白峰明音 ーー 7%
■伊扇風穂野 ー 5%
「低いな」
「低いわね」
「えとえと、低いです」
九装の画面は割と悲しいことになっていた.
秋灯の数値は知り合ってまだ数日にしては高いと感じる。
ただ、明音、伊扇は今日が初対面のため交友深度が高いはずもなかった.
「ははは、こうやって数値で見ると悲しいものだね.でも今日が初対面だからね.これから仲良くなれるよう頑張るとするよ」
数値の低さを見てもめげない九装は流石だなと思った.
一旦場が落ち着き次は誰がデバイスを見せるのかお互い牽制し合う.
「次は・・・秋灯見せなさいよ」
「いや、ちょっと、明音先輩が先に見せてくださいよ」
「嫌よ.こういう時は男の方から先でしょ」
「それこそ、こういう時は年功序列じゃないですか」
「一歳しか違わないでしょ.それにさっき恥ずかしくないって言っていたでしょ」
「言いましたけど.・・わかりましたよ」
渋々、秋灯は三人のほうへ画面を向ける.
表示されていた数値は九装を除き50%に達していた.
「そう、まぁ予想通りね.うん、予想していたわ.何も恥ずかしくないわ、恥ずかしくないわよ」
明音先輩の頬が若干赤く染まるがすぐに歯を食いしばり耐えているような表情になる.
伊扇は画面を見た途端顔が茹だって蹲った。
「ほら、俺の見せたんで二人とも見せてくださいよ」
「ふぅ・・・見るがいいわ.そして貴様も恥ずかしくて悶えるといいわ」
「えっと、えと、・・・はい、どうぞ」
明音先輩は強気な態度で、伊扇は顔を覆ったまま画面を向けてくる。
デバイス所有者:白峰明音
■鐘ヶ江秋灯 ーーーーーーーーーー 50%Max
■伊扇風穂野 ーーーーーーーーーー 50%Max
■九装煉華 ーー 8%
デバイス所有者:伊扇風穂野
■鐘ヶ江秋灯 ーーーーーーーーーー 50%Max
■白峰明音 ーーーーーーーーーー 50%Max
■九装煉華 ーーー 15%
「なるほど.なるほど.俺は明音先輩と伊扇さんを友好的だと判断しているようですね.なるほど.明音先輩、伊扇さんもお互い友好的だと判断しているようですね.なるほど、興味深い.なるほど」
「秋灯、なるほどの回数多くないかい?」
九装が秋灯のセリフに突っ込んでくるが気にしていられない.
明音先輩だけでなく伊扇まで親密度は上限まで達していた.
第一試練の道中、共に過ごしたおかげでここまで数値が上がっていたらしい。
歯を苦縛って耐えている明音。
蹲って顔を上げない伊扇。
分析している風を醸す秋灯.
三人とも共通してただ恥ずかしいという感情に悶えていた.
「君たち仲いいなぁ」
一人蚊帳の外の九装は悲しさが混じった言葉を呟いた.




