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うつむく女
道に迷っているのか、山に迷わされているのか
どちらにしても、道らしきものをたどっているのだけは、たしかだ。
人ではなく、ケモノの道だとしても、こんなぐるぐるまわってしまうなど、おかしい。
そう思いながら、首にじんわりとでた汗をぬぐい、おや、ここからはいやに平坦だな、と思ったときに、 ―― それにであった。
立ち枯れた低い木がしげるところに、白く、やんわりとした影があり、白っぽい着物の女が、うつむくように、立っていた。
こんなところに?
思いながらも、これで助かる、と思い、「ちょいと、」と声をかける。
「―― 驚かしてすまねえが、道に迷っちまってるんだ。 山をぬけるには、どっちにむかえばいいか、教えてほしいんだが 」