26/27
むかしから
街からはずれた屋敷に住むダイキチは、子どものころから、《死んだ者がみえる》という体質の隠居で、そのお屋敷の池に煙になってでた、《さまよっている女》を、すくってやったのが、人ではなく、《ヤオビクニ》だという女の『先生』で、ヒコイチはそこに、縁があって巻き込まれたのだが、 ―― まあべつに、嫌ではない。
「では、ヒコイチさんは、やはり昔から、そういう者に、あいやすいのでございますねえ」
『先生』が、猫の小皿に魚とマツタケをとってやる。
「そういわれちまうと・・・・まあ・・・」
思い出すと、そういうおかしな話も、いくらかある。
「山というのは、やはりこわいところですなあ」
ダイキチが、のんきなようすで、たいしてこわくもなさそうに口にする。
「わたくしも、山ではいくどか《こわいもの》に会ったことが」
『先生』が、雪の中のカエルに会ったぐらいの声音でいう。




