鍋をつつく
申し訳ございません。先生とダイキチについては、『蓮池の』を、ひろい読みしてください。。。
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「 ―― と、まあ、あとはただ、モミジだけをたよりに、走って山をくだったってわけで」
「あらあ、それはなかなか、おそろしゅうございますわねえ」
『先生』とよばれる女は、ヒコイチのはなしに、眉をさげて、箸をおいた。
「ヒコイチさん、ほら、こっちが煮えてる」
ダイキチが、七輪の上においた鍋のなで、くつくつと音をたてていたものを皿にとって、ヒコイチにわたしてきた。
こりゃ、すいません、と両手でうけとるのに、『ヒコのがさきで、おれのはどうなった』と女の膝横から、だみ声がさいそくする。
だみ声の主は、女の横にすわっている黒猫だが、わけあって、猫の『中身』は、元乾物屋のじいさんだ。
ここにいる者はそのことを知っているので、その催促に驚くことはない。
「まあ、カンジュウロウさん、ちょいとお待ちなさい。あなた、《猫》なんだから、すぐに熱いものは、たべられないでしょう?」
「あー、ダイキチさん、《猫》になんかやらなくっていいんですよ。 マツタケなんて、もったいねえ」
ヒコイチがみせびらかすようにして食べてみせるのに、黒猫は鼻をならした。
『 ヒコよ、そのマツタケを買ったのはダイキチさんで、売りつけたおめえが口だすところじゃねえだろう 』
「おめえもな」




