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こたえられず
だが、わかるより先に、からだが勝手に動いた。
猫が、おもいがけないなにかに毛をさかだててとびのくように、ぞおっとかけぬけた寒気とともに、囲炉裏からとびのいた。
囲炉裏のむこう、煙草の煙をくちからもらす男は、いちどきりですよ、とおだやかに微笑む。
「・・・一度もなにも・・・」
「では、どうしたらよかったと? あのまま、からだがすべて茸にのっとられ、息もできずにくるしみ続けるのを、最後まで、みとどけたほうがよかったと?」
「それは・・・・」
ヒコイチには、こたえられない。
「 ―― それからは、モミジが色を変え始めるころから、山をみまわるようにしているのです。どうやら人が迷い込むのは、山の入口の《番神様》が、かくされるせいだと気づいたので、そういう日は、とくに気をつけてまわっているのですが、―― 間に合わないときもある」
「・・・その人たちは、・・・・」




