猟師のような男
男のあとについて歩けば、おなじような景色ばかりだったのがうそのように、いままでみたことのない、モミジなどがまばらに生えた、あかるく平らな場所につき、こぢんまりとしているが、しっかりとつくられた家にまねかれた。
入ってすぐに、目と口を洗いなされ、と瓶からすくった水をさしだされる。
ありがたく柄杓をうけとってその通りにして、ようやくあいてのことをはっきりとみることができた。
ひげも髪ものびた男で、山に住む猟師のようなみかけだが、ヒコイチが礼をいうと、ご無事でなにより、と、意外な言葉遣いをする。
「 ―― すまんが、いま一度外へでて、着物をはらってもらえるか?」
ヒコイチも、なんだか気にはなっていた。
どうもあれは・・・。
「あの茸は、あの粉で増えるのだ」
「ああ、やっぱりそうですかい」
あわてて外へでて、ぬいだ着物をばたばたとはたく。
あの男の着物は平気なのだろうかと考えるが、山に住む者には独自の知恵があるものだ、と口にしていたじいさんを思い出す。
中へもどると、男は囲炉裏に火をおこしていた。
土間からすぐに板敷の部屋と、隣には畳の敷かれた部屋があり、その奥に、鏡台らしきものがある。
手慣れた様子で、これは柿の葉のお茶だというものをいれてくれた。