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キノコつぶれる
「 ついて ございます 」
着物のなか、女の腰から下はのっぺりとただ白く、ヒコイチがよく知るものは何もなかった。
その白いものはただ、太い木のみきのようにあるだけで・・・・。
「・・・茸の・・・ジク・・・・」
「 はやく離れろ!! 」
ヒコイチがつぶやいた途端、怒声がひびいた。
その声のしわざであるかのように、ヒコイチの目の前にあった茸が、だれかに踏まれたように急につぶれ、網目の中からいきおいよく、煙草の煙とはちがう白いものをはきだした。
「吸いなさるな」
急にうしろから顔に手ぬぐいがあてられ、はやくはなれよう、と背をひかれた。
なんだかわからないままも、息をとめていたヒコイチは、ほとんど目を目もあけられない白いモヤのなか、その声に従うことにした。