【ホラー小説の書き方編】メカクシさま
(△)プロローグ:あーあ、やってしまった
おまえら。
………。
メカクシさまって聞いたことあるか?
学校の七不思議ってやつ? でもこの話、最近になって急に聞くようになって、オカルト研究会の先輩たちが、さっそく秘密のきもだめしを開催しようとしてる。
メカクシさまは夜の11時59分に、とある儀式をすると現れて、12時00分になるまでに儀式をすべて終えないと、笑い狂ったメカクシさまが両手で人間の目を覆い隠してしまうらしい。
それで、目の前が何も見えなくなって正気を失った生徒は、数日後、原因不明の死体となって見つかるんだってよ。
まあでも、なんか分かる気がするな。
メカクシさまを呼ぶ儀式では、教室で女の子の人形の目を、全てつぶすか、すべて抉り取らないといけないんだ。
そう、教室の中にいる人間の数だけ全部。
ここにちょうど、先輩たちの分を合わせて5体用意している。
もしも、このウワサに何かしらの出所があるとすれば。
………。
それは、昔の教室で、女生徒が他の生徒によって目が抉られた事件が起きたってことだろ? メカクシさまっていうのは、きっと、学校の人間に恨みを抱いた怨霊だ。
自分の友達の目が抉られて、それが事故なのか、故意なのか、それは分からないけど、誰か正気を失って泣き出す人間がいてもおかしくないショッキングな事件なはずだ。
…はは、あんまビビんなよ。
オカルト研究会にうってつけのウワサだろ?
というわけで、決行は夜の11時59分。
いつものように、このまま部室で隠れてやり過ごし、サクッと儀式を終える。
それで面白おかしく記事を書こう。
そう、いつものように。
△ △ △
――うちの学校で、消息不明になった人間が発生した事件が発覚して、すでに三週間がたった。
事件に巻き込まれたのは5人の人間で、彼らは全員、オカルト研究会に所属していて、事件が発覚する前日に、学校で密かに肝試しを開催を計画していたことが生徒からの聞き取りによって分かっている。
そして、その肝試しに参加していた6人目の生徒からの証言によると、5人の生徒は突然教室で騒ぎだして、廊下へと走っていった一人の生徒を追いかけて、そのまま彼らが同じ教室に戻ってくることはなかったということだった。
それで。
………。
お前だけ無事なのは、なんでだ?
「たぶん、ロッカーに隠れてたから。ずっと、その…ずっと」
その女生徒は、気恥ずかしそうに、そして、不気味に笑っていた。
(□)第1話:肝試し
俺が学校できもだめしをしようと思ったのは、先日の事件の唯一の生き残りが、昔から付き合いのある、俺の幼馴染の言葉があったからだ。
消息不明になった5人は、後日、それぞれ別の場所で遺体となって見つかった。
その死因は色々で、なかには自殺のように見えるものもあったらしい。
そして、遺体が見つかったことでこの事件はすべて解決、と、そういうことにはならずに、警察は幼馴染を重要参考人として警察署に連れて行ってしまった。
そのことがきっかけで、学校では、幼馴染が犯人ではないかというウワサが横行し、困り果ててしまった彼女は、彼女を疑った人間を集めて、オカルト研究会が実施したという儀式を再現することになった。
そして、一人では心細いということで、彼女と古くから付き合いのある俺は、今回のイベントを主催するための手伝いをさせられていた。
「儀式に必要なのはこれで全部か?」
女の子の人形が5体、その目をつぶすための道具も5人分。
そして、儀式の様子を撮影するためのスマホとカメラスタンドも準備する。
「グループに流れてきた動画見た?」
「見たけど、これ、誰が撮影したんだろうね」
「どゆこと?」
儀式では、夜の11時59分以降の1分間に、教室で女の子の人形の目を潰す様子をカメラで撮影することで、メカクシさまを呼ぶことができるらしい。
そして、全部の目をつぶすことができなかったら、自分たちが呼んだメカクシさまに目を隠されて発狂し、死に至るという話だ。
しかし、こんな馬鹿な話を少しでも信じることができたのは、メッセージアプリに流れてきた、オカルト研究会の儀式の様子を撮影した動画があったからだった。
「決まってるじゃん。
ねえ、これ撮ったの吉田さんだよね。
こんなの決定的証拠じゃん、教室から逃げ出した先輩たちをずっと動画で撮影して追いかけ回って。
どうせ、自分だけ目立ってやろうって思って、オカ研の人たち全員殺しちゃったんでしょ?
それか…ロッカーに隠れてたのは本当で、本物の殺人鬼をかばってるだけだったりして」
幼馴染を疑っている女生徒の一人が、意味深に俺のことをにらみつける。
「こっわ。
先輩、タカヒロくんが襲ってきたら取り押さえるの手伝ってくださいね」
「了解。一応、硬いロープ持ってきたから、大丈夫でしょ…それに」
ガタイの大きい一つ年上の先輩は、近づいてくると俺の耳元でささやいた。
「それに…危ないのは吉田さんだけかもしれないでしょ。
何にしても、吉田さんが頭がおかしいやつかどうかは、これから儀式をやってみれば分かる話だし」
時刻は11時58分、もうすぐ儀式が始まる。
――ひー、ふー、みー、よー、ごーんにんの。
――ギシキがはじまる、おどりゃんせ。
――メカクシさーまとおどりゃんせ。
「撮影、始めるよ」
「なにそれ、歌の続きは?」
11時59分。
(□)第2話:騒ぎ出すロッカー
「さっさとやろう、間に合わなかったら死ぬし」
髪を染めた金髪の女生徒は、ビニール人形の女の子の目を、2本のまち針で刺し潰す。
「ねえ、メカクシさまはもうここにいるの?」
大人しそうな黒髪の女生徒は、古いぬいぐるみの女の子の目を、2本のまち針で刺し潰す。
「いるよ…ほら、聞こえない? 笑い狂ったメカクシさまの叫び声が」
短髪でガタイのいい男子生徒は、人の形にかたどった文字の書かれた紙の人形の『目』と書かれた場所を2本のまち針で刺し潰す。
「今更だけど、用意するのは人形じゃなかった?」
「大丈夫」
「まあ、俺も用意するの忘れてて助かったから」
「『女』って書けば女の人形とか雑じゃない?」
そして、俺と幼馴染は、紙の人形の目を2本のまち針で刺し潰す。
これで儀式は終了した。
「はい、メカクシさまなんていなかった、今日は解散」
「………」
………。
――ガタンッ!
その瞬間、音がした場所を皆が一斉に振り返る。
「なに、なに?」
そして、俺はその音の出所である掃除用具入れのロッカーに近づくと、滑らかに開くその扉をそっと引いて開いた。
「…はっ? 先輩?」
その顔は、生徒の間ではよく知れ渡った顔だった。
「だ、誰だ、君は?」
ロッカーに隠れていたメガネの先輩が外に出てくると、5人の視線が彼に刺さった。
「誰だっけ、すごい見覚えある」
「おい、神浜、お前生きてたのか?」
神浜俊也。
彼は、警察が遺体を回収し、死亡が確認されたはずの男子生徒だった。
「死んでない、死んでない、メカクシさまは俺だけを見逃してくれた」
「…ヒカリちゃん」
「はあ、メカクシさま?」「ヒカリちゃん!?」
その時、金髪の女生徒の服が、後ろから引っ張られた。
ガタンッ!
黒髪の女生徒。
彼女は、そばにいた金髪の女生徒の服を引っ張ると、そのままよろけて、近くの机を巻き込んでその場を倒れ伏した。
「どうした? 大丈夫、ユミ?」
「…ヒカリちゃんは見えてるの?」
「何が? 別に、メカクシさまとかは見えてないけど」
「私、見えないの」
すると、先ほどまで体をフラフラさせていたことが嘘のように、きびきびと立ち上がり、そして、教室の外へと走り出した。
「え、どこ行くの?」
「なんで、私なんで走ってるの!?――」
嫌な予感がする。
そんな直感を感じ取ったのか、ガタイのいい体の先輩も、彼女を追って教室の外へと走り出した。
ふたたび静寂が訪れる。
――ふひひっ。
ははっ、ハハハハハハハハハハハハハハッ!
「………」
そんな彼らの様子を見て、幼馴染は笑い転げる。
それから、バチッと、金髪の女生徒の硬い拳が幼馴染の顔面を貫いた。
「笑ってんじゃねえよ? 何か知ってんならさっさと話せよ、殺すぞ?」
「ふひひ…失敗した。儀式は、失敗した」
制服の胸元を引っ張ってくる金髪の女生徒。
幼馴染は、不気味に笑いながらぼそぼそと答える。
「教室には6人いたから、人形の数が足りなかった、潰した目の数が足りなかった。
…ふひひ、先輩はわ、わたしと同じ、きっと、同じ」
「そうだ、先輩はずっとロッカーに隠れていたんですか?」
自らの状況を把握しようと懸命に話を聞いて考え込んでいたメガネの先輩は、まるで弁明するように、慌てた様子で説明を始める。
「ち、違う、ここにはいきなり送り込まれた!
僕たちは儀式が終わった後、一人ずつメカクシさまに目を隠されて、自分から死んでいった。
外から見ていてわかったよ、彼らの体はメカクシさまに意のままに操られてしまっていた。
でも、ぼ、僕だけは違ったんだ!
…すまない、こんな状況になって興奮してる。
僕だけは助かったはずなのに、どうしてこんなことになったのか。
メカクシさまの怒りが静まったあと、僕はオカルト研究会の部室に移動して眠ったはずだった。だって、疲れていたから帰る気力が無かったんだ。
そこからはもう、記憶に無い。
学校で眠ったのがいけなかったのか、僕はここに現れた」
「先輩、吉田は先輩たちの儀式をしていた教室のロッカーに隠れていたんです。だから、それで儀式が失敗して、先輩たちはこんな目に」
メガネの先輩は、幼馴染の顔を見て、何とも言えないような顔をする。
しかし、何もかも諦めたように溜息を吐いた。
「いや、確認をしなかった僕たちのミスだ。
それより、吉田くんは僕と違ってメカクシさまから逃げ延びたんだろう?
理由を聞かせて…あっ」
メガネの先輩は、あっ、あっ、と何度も呻きながら床に膝をついた。
「いやだ、僕は死なない、お願いします、もう一度、もう一度だけチャンスをください!
メカクシさまっ、お願いします、つ、次は失敗しませんから!」
ひっ…ああ、そんな。
メガネの先輩は、諦めたような声で、きびきびと立ち上がると教室の外へと走り出した。
「まっ、待ってください!」
俺は、すごい勢いで走っていく先輩を全速力で追いかけた。
そんな俺たちを見送った、二人の女生徒を教室に残して。
(☆)最終話:メカクシさまのケッカイ
「――ひぃひひひひひひひひひひひひひ!!」
走ったまま笑う。
彼は息切れは起こさない、まるで呼吸をしていないかのように。
「――そうだ、笑い声! 先輩、笑い声は聞こえますか!?」
「ひひひ――聞こえるっ、ずっと笑ってる!! それから手の感触だっ!
顔にずっと手が覆いかぶさってる!! 他の奴も、死ぬ前に同じことを言ってた!」
こちらは、体力に限界がある。
それなのに、先輩はどこまでも学校の中を走り抜けて行く。
「ひひひ――聞いていいか!? 僕は今どこに向かってる!?」
「たぶん…はあ、はあ、たぶん体育用具倉庫に! ここはもう外の広場です!」
「………。
それは、やはり、あいつが死んだ場所だな」
それまで走っていた二人の急にゆっくりに、そして、体育倉庫の前で立ち止まる。
メガネの先輩は、施錠がされていたはず扉を開けると、中に入り、倉庫の中の道具をあさり、そして――仰向けの姿勢になって天井を見上げ、手に持った500グラムのダンベルで自分の頭を打ち付け始めた。ドスンッ、ドスンッ!
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」
息切れを起こしながら力を振り絞り、俺は先輩の手を止める。
「こうやって…メカクシさまの邪魔をすると、先輩たちはどうやって死ぬんですか?」
そう、彼らが同じオカルト研究会の仲間を助ける気があったなら、こうやって止めることができたはずだ。
しかし、彼らはそれでも死に至った。
「首を、首を絞めるんだ、ひひひひ…メカクシさまは、目を隠すことをやめて、僕たちの首をねじりきる、今も――見えてるよ、君の顔が」
ぐっ、ぐぅぅ、ぐぅ…ぐぇっ。
「………」
パキリと、音が鳴った気がした。
△ △ △
「…よう、ひでえ顔だな」
「………」
教室に戻ってきた俺は、青あざが増えている幼馴染の顔を見て、彼女に降りかかった不幸を察した。
教室の中の様子も、出ていく前よりも荒れている。
「ヒカリはどこに行った」
「ふひひ…知らない、勝手に外に走っていった」
走って、歩いて。
疲れた俺は、教室の中の席の一つに座り込んだ。
「ふう。他の三人は、オカルト研究会の先輩たちの遺体が見つかった場所で死んでいるのを確認した。
ヒカリも多分、残った2か所の一つにいるだろう。
…なあ、こっちこいよ」
幼馴染は俺の正面の椅子に座った。
「俺とお前、二人になったな。
これまでと同じなら、俺たちのどっちかが死んで、どっちかが生き残る。
メカクシさまに目を隠されて、正気を失ったまま、自分の遺体を決まった場所に作り上げる。
でも…これまでと同じなら、俺たちのどちらか一人は、死んでも生き返ることができる可能性がある。
だってそうだろ? ロッカーの中に入っていた先輩は、遺体として見つかったはずなのに、こうして俺たちの前に姿を現したんだから。
しかし、まあ…そうなると、お前がロッカーの中で見つかったことが気に掛かるよな?
お前さあ――ヒカリたちを殺すためにここにおびき寄せたのか?」
………。
…ひひっ。
「ふひひっ、ち、違うよ」
「そうだよな。別にあいつらがお前をいじめてたとことか見たことないし。
そうだとしたら、もう一つ気になることがあるんだ」
幼馴染は、俺が差し出したスマホの時計を確認した。
そこにはこう書かれていた。
11時59分。
「そこにある教室の電波時計も同じだ。
11時59分。
他の教室の時計も、死んだ奴らのスマホも抜き取って確認した。
11時59分。
だから俺はこう考えたんだ。
メカクシさまの儀式はまだ終わっていない、そして、お前はそのことを知っていた」
幼馴染は、頷いて俺の意見に同意した。
「もしも、メカクシさまを呼び出す儀式がまだ終わっていないのだとしたら、そして、1分間の儀式が失敗することでメカクシさまが怒りだすのだとしたら」
俺は、紙に文字が書かれて人の形をした人形を取り出した。
「今ここでやってみるか」
女の子の人形の両目を、俺は予備に持っていた2本のまち針で刺し潰した。
そして時計を確認する。
「こんな風に、儀式は終わらない」
11時59分。
時間は進まない。
「それで、もう一つ気になることがあったんだ。
さっき俺が追いかけたメガネの先輩。
あの人だけ、両目を抉られて、ショック死していたことを。
なあ、ここまで言ったら分かるだろ?
メカクシさまの儀式を終わらせるためには、最後の人間の目を抉らないといけない。
俺か? お前か?」
お前はそのことを、知っていたな?
「………」
………。
…ふひひっ。
「正解」
「分かったよ、お前が何を期待して俺をここに呼んだのか」
俺は、体育用具倉庫から持ち出した鉄の杭を、幼馴染の前に差し出した。
彼女はそっと、その杭を受け取る。
………。
………。
「でもな…そう、もう一つ気になることがあった」
俺は、杭を受け取った彼女の腕を掴んだ。
「お前さあ…いったい誰なの?」
彼女の行動は最初から不可解だった。
まるで未来を知っているかのように、こんな状況に、恐れを知らずに俺たちをあざけ笑った。
だから俺は、自分の幼馴染に疑いを持った。
「吉田さんって…確か、小さい頃に転校した女の子の名前だった。
でも、この学校に幼馴染の吉田さんはいないはずだ」
彼女はすでに病気で死んでいる。
「お前は…ちゃんと殺せるよな」
俺は彼女から鉄の杭を奪い取ると、そのまま杭を両目に突き刺した。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ――何度もその音が響き渡った。
ひひひひひひひひっ、あきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがぁぁぁぁ――
メカクシさまの悲鳴が轟いた。
(△)エピローグ:成功
………。
次の瞬間、肩をゆする振動が、寝ぼけていた俺を覚醒へと促す。
「タカヒロ、もう昼休み終わりだって」
幼馴染のヒカリが、うとうとしていた俺に声を掛けて優しく起こしてくれる。
ありがとう、これから移動教室だっけ?
「あんた、ちゃんと課題終わってるの?」
終わっていなかったら写させてくれたのだろうか。
そんな優しさは一度も見たことが無かった。
「不良のくせに、まじめだよなお前」
そして金髪に染めた彼女の硬い拳を頭蓋骨へと思い切り叩きつける。
「いいから早く準備して」
余計なことを話す前に、さっさと俺は準備を始めた。
△ △ △
ここは、彼女のいない世界。メカクシさまのいない世界。
ここに悲劇は存在しない――再び彼女が現れるまでは。
フヒヒヒヒヒッ!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
<答え合わせ>
今回はホラー小説の書き方を説明します。
ただし、小説の書き方は今まで説明した内容と変わらないですが、ホラー小説で大切なのは、どうやって人の恐怖を大きくするかです。
そこで、人が恐怖を感じる原理を説明します。
まず、恐怖とは何かというと、警戒心と同じです。
犬に急に吠えられて怖い思いをした人もいると思います。
この時に、犬が怖いと思った人とは、犬に大きな警戒心を抱いたことで、犬に気を付けなければと、そこからは何となく犬に近づきたくないと思ったはずです。
同じように、他人に嘘を吐かれたことは無いでしょうか?
騙されたあなたは、二度と騙されててたまるかと、相手の言葉を警戒したはずです。
同じように、誰かに裏切られたことは無いでしょうか?
この人なら私の味方になってくれると期待したのに、相手はその期待に応えてくれなかった。
もしもそういう経験をしたなら、その人が隣にいたとしても、裏切られた時と同じ問題に出会ってしまったした時に、また裏切られるかもしれないから、その人は存在しないものとして問題を解決しようと考えて、警戒心を強くしたと思います。
このように、
・急な強い刺激
・嘘
・裏切り
これらをしつこく主人公に繰り返して、ストーカーのように付きまとうのが、物語の中の悪霊です。
しかし、ひどい目にあうほど、悪霊を除霊するための手段が見えてくる。
その手段が、最終的に本当に悪霊を払ってくれるのかは作者次第なので分かりませんが、悪夢を消し去れるだろうという期待が、読者が主人公の気持ちに共感する中でひどい目にあっても、我慢をさせてくれます。
そして、我慢を積み重ねて、どんどんと次にひどい目に合わないための警戒心を大きくしますが、最終的には除霊をして、ストーカーしてくる悪霊をきっと消し去ってくれる。今回の物語のように、儀式を成功させるという除霊行為によって、最初から悪霊自体が存在しない世界へと連れて行ってくれる。
そういった瞬間に、警戒心が解かれた読者は、余計なエネルギーを使わずに済むようになってリラックスするので、それによって楽しいと感じます。
これは、いわゆるジェットコースターに乗った気持ちと言われるものです。
(どうやって楽しい気持ちに導くかは、他の小説の書き方シリーズで解説しています。特に【コメディ小説の書き方編】で解説しています。)
しかし、こういった期待に応えてくれるかは作者次第なので。
逆に、最強の怪物を描くために、絶望のまま物語が終わる場合があるので、作者がどの層の読者に向けて物語を作るかで、ホラー小説の書き方は変わります。
ところで、今回のホラー小説を読んで、まるでミステリ小説と同じだなと感じた人もいると思います。
確かに似ていますし、見分けがつかないこともあるので、その感覚は普通だと思います。
しかし、ホラー小説では、読者に推理できないように事件の真相に辿り着くための情報を隠しているおり、このように、ミステリ小説では普通やってはいけない禁忌を犯せるので、その点でミステリ小説とは違うかもしれません。
また、読者の警戒心を大きくするために必ずしも物語の悪役が幽霊である必要はありません。
ただし、その悪霊が敵では無い小説をホラー小説と呼ぶのかは不明なので、普通は悪霊を描きます。
例えば、最強のいじめっ子が、主人公を絶望の縁に追い詰める場合、その小説はホラー小説な気がしますが、恐らく商業的には違うジャンルに割り振られると思います。
最後に、ホラー小説の書き方をまとめると、
・急な強い刺激
・嘘
・裏切り
これらを執拗に繰り返す悪霊やいじめっ子を用意して、主人公たちに襲い掛からせる。
→悪霊やいじめっ子を除霊する手順を用意しておいて、この世から消し去る。
→除霊の実施によって、読者の警戒心は解けて、余計なエネルギーを使わなくてよくなった分、リラックスして楽しくなる。対象とする読者層によっては、除霊しない場合がある。
→連載小説の場合、続きを書くために、完全には除霊できておらず、悪霊が復活する設定を用意しておく。
これらに気を付ければいいと思います。
<小説の書き方シリーズ>
面白い物語の始め方と続け方と終わり方とタイトルの付け方
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【応用編】サキュバスに魅了の魔法をもらったから困ってる幼馴染のために使うことにした
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