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天界の天使

強者による一方的な暴力を見ていた。そもそもこんな宮殿の正面広場で、熾天使が一人ぽつんと僕達を待っているなんて。ビッキーの脳みそが筋肉で出来てるような頭悪いそこらへんの女子高生みたいな行動が、僕にはあまりにも軽率のように感じられた。これら駅前でビッキーが制服着てるならきっと問題は無いだろう。原宿でも、佐賀駅でも、問題は無い。だけど、熾天使一人、ぽつんと突っ立ってるところを、一方的に急襲した挙句に、操り人形は流石に、リスペクトに欠けるのではないだろうか。天使といえば、あれだ。そこらへんの美術館に行けば天使っぽい天使がどんな感じか教えてくれる。昔から絵で描かれている通り、崇高な問題で、題材で、それは人間の一生に必要な神話だった。僕達日本人は神仏を拝んでいるけど、それが別の宗教だって、それは大切なもので、不可侵なものだとは本能的に理解出来る。神仏に対して、一つの領域、それは神域が存在していて、そこから一歩でも踏み込むことは、禁忌の行いだ。それを超えたからってどうってことはないだろう。でも、大切なものを、大切なままにするっていう事は必要な事だ。敵だとしても、いや。敵ですら無いのだから。そういうレベルを僕達は既に超越している。


「やりすぎ」


熾天使の脊髄に突き刺さろうとするビッキーの棒を拳で砕いた。体は瞬時にドラゴン変化へ自在に移行出来るようになり、僕とヴァミリオンドラゴンの魂のシンクロ率は、もはや融合の領域に入ってるのかもしれない。僕の人格とか、ヴァミリオンドラゴンの人格とか、ドラゴンの力、ドラゴンの魂なんて関係が無い。今ある僕の意志が、全てであり、そこから先の事は蛇足に過ぎない。


「そうですかぁ」


「もうちょっと、考え無しの行動はしないって思ってたけど」


「少し考えましたが今後生涯未来永劫、天使と闘えるなんてまず無いと思いまして」


熾天使は立ち上がって地獄王に何かを言った。


「なんて言ってるんですか?」


「不可侵の領域に進入したのは、天使としてか、堕天使としてかを問われている」


「なんて言ったんですか?」


「どっちもだと答えたよ」


熾天使を改めて見ると、大きい。慎重が250センチぐらいあるんじゃないかってぐらいで、兜から顔は見えないけど、筋骨隆々でがっちりとしたまさに兵士という出で立ちだ。


「宮殿はほとんど天使が居ないみたいですけど、どうして聞いてください」


ビッキーが言うと、地獄王は熾天使に問いかけた。


「宮殿はほとんど機能してないそうだ」


「他の天使達は?」


地獄王はさらに熾天使に問いかけた。


「小国を作ってそこで各々が活動しているらしい」


「じゃあこの場所は、諸悪の根源ゆえに、あまり天使が居ないんですね。この天使はどうしてここへ?」


更に地獄王は問いかけた。


「未来予知で、変化の兆しが出たので、変化を止めるためだそうだ。それにしても。昔の天使はもっと大きかったが、大分縮んだな」


「へぇ?」


地獄王と熾天使は話して、さらに口論に発展していった。


「ここで時間だけがかかる哲学的な議論をする暇は無いんだがな。まぁいい。この熾天使に玉座の間迄案内させよう。そこで全てが解決するはずだ」


「あーあ。結構、死ぬ気でバトルパート入るのかなって思ってたんですけどぉ」


「黙示録を止めるためだけに来たんだよ。そういうのはいいから」


まぁ天界に来てワクワクするのはちょっとは分かるけど。それとも、やっぱり、宗教的に天界に来た事って興奮したり高揚したりするものなのだろうか。いずれにせよ、素早くやりたい。血みどろの千切っては投げ、千切っては投げみたいな無双なんてものはね。ゲームでやれれば十分なんだ。


「ビッキー、これ終わったらゲーマーやってみればいいよ」


「へえ?」


「なんかEスポーツって言って稼げるらしいから」


案外天職かもしれない。画面越しならサイコ野郎でもなんとか怖くないし。


「東雲君。ミス・ヴィクトリア。ここからそう離れてない。行くぞ」


「…」


「ジャッジの審判は、システムに委ねるそうだ」


「あら。裁かれるのはどっちなんでしょうかねぇ」


「…」


熾天使は歩き出した。


「…歩き?」


「…」


本番はここからだ。覚悟は決まっている。

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