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地獄の反乱者

地獄の王とは一体何者なのか。目の前にいる、得体の知れない伝説を僕達は知らない。真実を。


「あらぁ」


轟音を立てて翼が広がってゆく。地獄の王の背中から生える幾重もの純白なる巨大な翼、その翼を注視してみると、まるでテレビ画面のように翼一つ一つに場面が分かれている事に気付く。ある翼には、教会。ある翼には、大空。ある翼には深海の底。そして僕が瞬きをする度に地に伏していたであろう人、人々が立ち上がり、意志を臨んでやってくる。


「そういう態度?」


美しい真っ白な顔に、垂れ下がった長髪から見える悪い微笑み。


「誰かがやるのだとしたら、それは誰でも良いものだね。私がその仕事を引き受けよう」


捨てられた命が、今燃やされている。翼から飛び出した幾重もの英雄達が、武器を振り上げた。


「…」


どうすべきだろうか。


「…」


英雄の命。地獄の王様の裏切り行為。そして、僕の心。ビッキーは僕を見てる。だったら…。


「…」


振りあげられた武器が振り下ろされる。強大な魔法が直撃する。邪悪な呪いが喉元に飛び交っている。


「…」


かつての世界の英雄達の、最大の一撃。かつてないほどのたかぶりを秘めた渾身の一撃。


「…」


哀しくなるほどに、レベルが違い過ぎた。その血をそそいだ一生の挙句手に入れた完璧な殺傷術も、幾重の代で受け継がれた絶大な攻撃魔法も、強烈な殺傷兵器を用いた呪術ですら。まるで、無意味。無価値。みな、平等に。ダメージゼロ。かすり傷すらつかない。僕の生命力であるマナから巡るオーラで、それら全てが一切ゼロ。僕の、何気ない臨戦態勢時のオーラ、防御力ですら、突破できない始末。


「…」


想いは伝わる。雄弁に感じ取れる。心が動かされる一撃。まるでオーケストラを聞き終えた後のスタンでぃぐんおーベーションをしたくなるような気分にすらなってくる。でもそれだけ。それで十分ではないのだ。


「納得できるまでやればいい」


吹けば飛ぶような命の蝋燭を、僕は見た。人間はこれほどまでに。弱かったのか。っと。僕が軽く頭を撫でるだけで、その頭蓋は潰れてしまうのだ。強さには際限が無い。僕はあまりにも、度を超えた。限度を超えてしまっているのだ。


「それが終わったら、少し話しましょうか」


地獄の王様を見た。美しい顔が凍り付き、瞳が揺れていた。


「下がれ…」


英雄達は散っていった。


「酷い運命もあるものだな…」


そう言った。


「分かりますよ。気に入らなかったんですよね。分かります」


「やるんですかぁ?」


ビッキーの問いに頭を振った。


「別にそう、取り立てて腹を立てるような事はされてないから。裏切らせてしまう僕達にも責任はあるだろうし、ビッキーは少し敬意、尊敬、リスペクトが足りてなかっただろうし」


「え?私のせい?違うでしょ。全然違う。後ろから銃で撃つヤツは、信用しちゃいけないんですよ。決してね」


幾重もの異常な魔力が僕達の周囲を覆っていた。悪魔達が、僕達を見守っていた。


「僕は自分で最強だって思ってるから、それぐらいは構わないよ」


「あっそうですかぁ」


「神よ…」


地獄の王は、天を仰いだ。

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