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第八十三話 地獄のサイクロプス

水晶の縁取りで作られた大いなる門が目の前に現れた。30メートルはあろうかという巨大なる門。


「さて。後はここに魔力をたっぷり注ぎ込めば完成」


後ろに気配を感じ取ったので振り向くとビッキーが居た。髪はセットされてるし、明らかにさっきまでの寝起きの顔じゃない洗顔した後の顔だし、よれよれになってるドレスだって新しく新調してる。


「こんばんはぁ」


気の抜けたどうでもいいような挨拶だ。どうでもいい社交辞令だって本心で思ってるのだ。ビッキーは、この世の半分以上がどうでもいいどうだっていいことなんだ。マジな時は本当に頭が動いてる。


「やぁ。地獄王へのゲートは作った。後は君達が車と一緒にここに飛び込めばいいさ」


「オーラが視えないですねぇ。ロボットですかぁ?」


「よく分かったね」


「すご。FBIに連れてかれる宇宙人まんまなのに」


そういや、確かにオーラが流れてない。そういう見方もあるのか。ちゃんとしてるなあ。


「確かにゲートのように視えますがぁ。信用できませんねぇ」


意外な事を言われる。


「地獄の王様に会いに行くためには必要だよ」


「あなた、ここの人ですか?お名前教えてくださる?」


慇懃無礼とはこのことだろう。折角良くしてくれてるのに。


「この人いい人だから、そういう事言っちゃダメだよ。それに、悪魔だから名前とか教えられない設定とかあるのかもだし」


「ソルト二―と名乗らせて貰うけど、コレは100%安全なゲートだ。先にソルト二―が通ろうか?」


「それでも信用出来ない」


「困ったなぁ。親切心と義務感で行動してるんだけど。君達がここに来るまで予言されてから、大分待ったんだよ?」


「そうですか。私は人を信用してない。転送先地獄ならどうするんですか?」


なかなか面白い冗談に苦笑いしてしまった。ここ地獄なんですけど。


「まぁまぁ。ゲートを創るのが、義務と親切心。そこから先は、君達次第だよ」


ゲートに触れると、水面のように門が揺れた。まるで海面のようだ。


「起動したよ」


「そうですか」


門は鈍い光を放って起動してる。くぐれば、地獄の王様へ。更にその先には天界へ向かう。


「では…」


ビッキーは人差し指を立てた。指の先には糸みたいなものがついてる。マネキンが一体中庭までひずりられてきた。


「これ借りても?」


「どうぞ」


マネキンはカタカタと動き出して門の先へと飛び込んだ。


「へえ。そういう事もできるんだ」


マネキンに移動先の安否を確認させたのか。石橋を叩いて渡るタイプだなぁ。ビッキーの癖に。


「あら」


マネキンが門からひょっこり出てきた。そしてビッキーの元へと移動して直立不動の姿勢を維持してる。


「なるほど。最悪即死はしないようね」


「信用してほしいなぁ。そういや生きてきて、ここまで警戒されたことはないね。誰かを騙すなんて考えた事だってないのに」


僕はこのグレイ型地獄の住人ソルト二―を信用してる。少しだけしか話してないけど、人となりは分かったつもりだ。


「ふうん。さて。じゃあ行きますか。車取ってきますね」


そう言ってビッキーは回れ右をくるりとした時。ゲートから何かが這い出てきた。


「ぬうん」


30メートルはあろうかという一つ目の巨人、サイクロプスというヤツだろう。全身に生傷の痕が残っている。


「…」


ビッキーは一瞥してすたすたと歩て車を取りに行った。


「こんにちは。地獄の王様にアポを取ってた東雲末樹って言う者なんですけど、担当の方ですか?」


可能な限り大きい声で叫ぶように言った。


「真贋を見極めに参った」


頭の中で低い声が轟いた。テレパシーって便利だな。


「はい」


ドラゴン変化第一形態になると一つ目の巨人は大きな感嘆詞を言ってちょっと後ずさった。


「一応これより先にまだ変身を二つ程残してますけど、今のままでも十分戦闘力としては評価してくれるんじゃないかって思いますけど」


「ゲートの通用を許可する」


そう言って元来たゲートへ巨人は戻っていった。


「君そこからあと二つも変身できるの?」


「多分、そうですね」


ドラゴン変化第二形態、更にドラゴンの姿に近くなる。ドラゴン変化第三形態、ヴァミリオンドラゴンになる。ただ、第三形態になって超ド級の魔力を誇っていても、ムゲンさんから一撃で翼をもってかれたりしたから、巨大であれば巨大であるほど良いわけじゃない。マジで殺すつもりで戦闘態勢を取るなら、第二形態がベストだろう。敵が月ぐらいの大きさなら、第三形態のド級の魔力で破壊するけど。ただ、ムゲンさんの一撃がレベル1000超えてる可能性があるので正直ちょっとそのへんは分からない。自分の持つ魔力を最大限度まで濃縮したカリスマをドレスのように身に纏って、更にそのドレスに攻撃の要である刃に一点集中。そこから更に出力を可能な限り最大限度へ。それが固有の必殺技として特殊なトリガーがかかってたら、さらにそこから出力は跳ね上がる。ただですら究極闘気カリスマは特殊能力があったりするわけだし。


「んんん?」


そう考えれば、僕もムゲンさんと同じように第二形態状態を維持しつつマックスまで出力を持っていって攻撃すれば。ああいう、良い感じに仕上がるのではないだろうか。まぁ。どんな敵も2秒で終るから、いちいち格上や、描写に手間のかかる戦闘なんて想定はしてないんだけどね。


「強いんだね」


「あんまり意味ないけどね」


どれだけ強くても、相手より強かったらもうそれ以上は意味が無い。どんな敵もすぐ倒せるし、すぐ終わるんだから、ちょっと切なくなっちゃうかな。


「さっきヒトは?」


「王様の軍団の主要メンバーなんじゃないかな。地獄って広いから面識は無いから分かんないよ」


「そうなんだ」


でも、これでゲートは確認出来た。そろそろ地獄のロードムービーも終わりそうだ。


「ああ。そうだ。今思い出したよ」


「なんですか?」


「おもてなしってやらなきゃいけないらしいね。でも、娯楽品が無いんだよね」


「お気持ちだけで結構ですよ。ありがとうございます」


「頑張って」


そう言われて、背中を押された。車に乗って、門をくぐる。

「アレってコスプレなんでしょうかぁ?それとも、そういうモノなんでしょうかぁ?」


「グレイが地獄の住人が操作する機械っていうのも、ちょっとアレだし、白黒つけるのもね」


「つけときゃよかった」


「そういう嫌がらせする根性はマジでなんとかしたほうがいいよ」


「はぁい」


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