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第七十四話 理想の結婚生活の観測者

「あの子と結婚するつもりですか?」


そう言われた。自分の考えは少なくともしっかりしてるはずだし、家族を作って養えるぐらいの強さはあるはずだし、ツキコモリさんだって少なからず僕に好意をいだいてくれてるはずだ。


「そのつもりだけど」


「誰かを選ぶってことは、生涯に渡って一人を選ぶってこと。私達ヴィクトリア家は、婚姻に際して厳密な規則をあらかじめ組み込んでおく。命や財産、家庭を天秤に掛けても本能には抗えない事も往々にしてあるから」


「ビッキーの家って凄いからね。それぐらいは妥当だと思うよ」


「あらぁ。そう思いますか?うちは浮気者には非常に厳しく、ただ死ぬだけではなく、キツイ拷問の末に死ぬんです。昔は四肢を切断して種牛のような生活者とかいたんですよ」


「ビッキーの家ってさ。どっちかというと、庶民じゃなくて王族のそれに近いよね」


大空の大陸がどれぐらいの面積なのかも気になるけど、それでも、ずっと続いてきた家系はずっと支配が続いてたんだろうって思う。


「マッキーからも、想いに関する人一倍強い気持ちが感じ取れます。万一、ツキコモリさんと結婚して浮気されたらどうしますか?」


「…」


頭が一瞬真っ白になった。


「どうだろうか。…わかんない。考えたくないよ」


もし。大切な人に裏切られたら。どうするか。自分じゃなくって、相手が100%悪い場合。どうしてもそれが許せない場合。


「…」


ビッキーは僕の返答を待ってるようだ。


「別れるんだろうか。多分っていうか、絶対、殺すとか殴るとかそういう選択肢は無いと思う。でも、子供が居た場合はさ。やっぱり。我慢するのかなぁ」


「結構、実は。この世界では不貞とか浮気とかって、結構軽んじられてますからね。そもそも、生めよ増やせよの下民と支配者とでは考え方が異なりますねぇ。弱い精神に脆弱な入れ物、脆い魂。そんな人間の誓いに意味を持たせるなんて、ほとんど出来ないことなんですよ。結局のところ、人間という群体に所属する有象無象は本能を軸に生きてるんですから」


「まぁ。そうかもね。うーん。難しい話だよ」


「いずれ考えなくてはいけない事だし、これからマッキーが結婚を結ぶとして、相手が誰であれ、遅かれ早かれ、そうなると思いますよぉ」


「ビッキーは違うよって言いたいわけだよね」


「アピールポイントですねぇ。私は強いので」


「じゃあ。さ。ちょっと結婚生活をやってみようか」


「え?」


ショートコント。結婚生活。僕達はそれぞれ車から降りた。


「ただいま~。くたくただよー」


ドアを開けるとビッキーが居て、ビッキーはしきりにタイピングを打つ動作をしてる。


「あら。早かったんですね」


「そうそう。ビーちゃん何してんの?」


そこでビッキーは腕をTの字にした。サッカーで言うところの、タイムである。


「なんですかビーちゃんって?」


「え?いや。ビクトリアだからビーちゃん」


「なんですかその気持ち悪い呼び方は。ヴィクトリア家当主の私に対して余りにも軽すぎですよ」


「え?いやいや。結婚生活だよね?あまあまな生活だよね?…多分」


「結婚は一つのステップに過ぎません。慣れ慣れし過ぎですよ。マッキーに主権があるのはベッドの中ぐらいなんですからね。お婿さんだし」


婿設定なのか僕。サザエさんでいうところのマスオさんだぞ。大丈夫なのか?


「あ。そうなんだ。分かった。まぁお婿さんは確かに家のルールを守らなければならないからね。そっちの都合に全部合わせることにするよ」


例えそれが合わなくても合わせるさ。家に入るってそういうことだからね。


「あら。早かったんですね」


「そうなんだよ。ちょっと疲れたなぁ。何してるの?」


「世界地図で見る物価推移の記録です。色ごとの濃淡で分けると面白いんですよ。今度の授業の資料ですね」


「そ、そうなんだ」


設定凝ってるな。先生になりたいのかな?


「疲れたなぁ」


「そうなんですか」


ことことしこしこタイピング続けてるし。


「…あの。ご飯とか」


ご飯にしますか、お風呂にしますか、とかさぁ。そういうのあって然るべきお約束があるじゃあないかっ!


「ご飯は二時間後に。どうしても必要なものなら作らせてはいかがですか?そのために雇ってるんですから」


専属料理人まで雇ってるのか。そういえば当然といえば当然かもしれないけど、僕の設定とビッキーの設定に若干どころか相当のラグが発生してる。思いの他、ビッキーなんて目を怖くしてタイピングの真似してるし。ガチリアルであんな感じなんだろうなって思う。なんか想像してる甘い結婚生活じゃない。


「妻の手作り料理とか、家の特別な料理とか。食べたい…。食べたいぁ」


「…それ。命令ですか?」


僕の心に何かが込み上げてきた。これを死ぬまで続けてると僕は絶対に成人病にかかる。すごいストレスで。


「…なんでもないです」



一方、ラフィアは混乱を極める現場を目の当たりにして、登場シーンに二の足を踏んでいた。


「何してんのよアイツら…」

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