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第七十二話 不思議なデーター

操り人形みたいに棒が刺さっている老紳士がいた。その棒は大空高くまで伸びきってどこまでも長い。美しいフランス人形みたいな大きい等身大フィギュアがあった。おそらくいかがわしい用途に用いられることは明白で、おそらく高価。そして、ヴィクトリア・ローゼスがいた。彼女はやっぱりどこまでも美しく、そしてもっと言えば病的な美しさだった。見る者が病むような、もっとおぞましいのはそのオーラだと思う。月の出てない深夜の深い山に足を踏み込むような感覚を覚える。禍々しさと、禁忌的な美しさが合わさって、一瞬脳がバグる。美しさを感じながらもゲロを吐きそうな感覚に陥るなんて、そう滅多にあるわけじゃない。例えようも無い存在感を放ってる。断言してもいい。彼女は絶対に家事をしない。ご飯も作らないしトイレ掃除なんてもってのほか。箸より重いモノを持ったことが無いなんて平気で言いそうな美しい顔。そしてそれを許容してしまう説得力を兼ね備えてる。


「ビッキー」


思わず萎縮してしまう。絶対的なオーラは質量を伴って巨大で優雅なドレスへと変貌を遂げている。あの二人は、こんな化け物と対峙したのか。人間じゃない。神話的な存在感で、神の領域に踏み込んでると感じてしまう。人間の枠から一歩も二歩も出ているのだ。


「マッキー」


ヴァミリオンドラゴンの姿から元の人間へと戻る。服は破れたので、ビッキーを真似てオーラを真っ白いローブに変えて着込む。正直、この場のピリつき。全裸でっても全くもって差し支えないだろうけど、赤の他人に大切な部位を晒すことは公衆浴場以外の場ではやるべきではないのだ。


「…」


「今度はマッキーですかぁ。…最高ですね」


「パーティ会場には乗り遅れちゃいけないって思ってね」


こんな場面で言ってみたい台詞を人生で一つクリア。もちろんパーティなんて行ったことが無い。ここに気障きざったらしい台詞が出るのは、もちろんビッキーの影響。こっちも相当頑張って格好つけないと、隣に立てない。


「今マッキーを呼ぼうとベルを押そうとしたところなんですよ」


「電話一本もらえればすぐ駆け付けるさ」


ビッキーの後ろに控えてる軍団。オーラの数が物々しい。レベル高いな。人間を超えてる。猛者だ。よく見ると銃器も装備している。ただのバトルものじゃない。本当に殺傷目的で動いてる。100人以上、500人ぐらいいるかもしれない。それぞれが、布陣を敷いて待機している。なんとなくそれが分かった。


「秀人君は逃がしましたけど、マッキーはそんなつもりはありませんので。悪しからず」


「日本語上手いね」


「頑張りました」


「ここから、攻撃を放てば。マッキーの大切なものは滅びますね」


美しい顔をしてさらりと言われた。


「その気になれば…」


「あのさ。ちょっといいかな。そもそもどうしてビッキーが出てくるのか。今の僕はわかんないし。僕のせいかもしれないけどさ。ちょっと二人で話せない?」


話し合えば分かるだろうなんて思ってない。ただ、これは、顔なじみの挨拶の延長として。そんな言葉が口から出てきた。


「そういうアソビから大分かけ離れたところにいるんですよぉ?」


「いいでしょ。プライベートで。一旦、作戦タイムだよ」


「どうでもいいですけど、マッキーの隣の子が気になるんですけど」


「それも含めて説明するから、一旦ツキコモリさん、ここに居てよ。ビッキーとちょっと話すから」


「了承してないんですけど?じゃあ。何かマッキーが攻撃した場合、その子が死ぬ呪いをかけておいていいですかぁ?」


「僕が死ぬ呪いならいいよ」


「へぇ」


ビッキーは周囲を見回して右手を上げる。布陣を敷いてた軍人は武器を下ろした。


「いいでしょう」


ビッキーがこちらに近寄って、車に乗り込んだ。この距離。圧迫感。ヤバ過ぎる。ビッキーのオーラに直で触れる。生々しさがある。胎内の中に入った感じがして、胃液が込み上げてくるほどだ。生々しい。意味不明に股間が膨らんでる。もはや意志とは無関係に、肉の匂いを感じ取って、下半身が子作りの準備段階に入ってる。


「あっち行ってるね」


「うん」


そう言ってツキコモリさんは向こうへと歩いてく。


「あの子轢きません?」


「そういう事言っちゃうんだ」


「あ。もしかして今、私。女子っぽいことやりましたぁ?」


「女子と喋ったことが無いからよくわかんないかな」

この時、ヴィクトリアが思ったことは。マッキーが来た以上の衝撃。


生まれて初めて同じ能力と出会ったこと。

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