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第六十九話 最強と呼ばれた男

始まりの使徒と第二の使徒が手に入って尚も、渇きは収まらない失恋の痛み。失恋の際の自暴自棄、世界なんて滅べばいいのになんて思う人間は居ても、世界を滅ぼしてやると思う人間はいない。実行に移す輩が、本日歴史上で初めて、輩出された。


「…」


人形ドールがカタカタと動き出し、背中から銃が生えてくる。その銃は更に機関銃へと変わり、歪な飛行機へと変わって、数を増してミサイル砲へ、電磁砲へと変貌を遂げる。更に核融合路を内部に作って異空間に巻き込むブラックホール作成機を生み出す。人形ドールの背中には、あっという間に九州ほどの兵器の山が出来上がった。


「撃て」


ヴィクトリアはニッコリ微笑み命令した。

何かが始まる予感、背筋にぞくぞく感じる戦慄がそれが確かなものだと教えてくれる。


「何かやばい。とてつもなく」


「おわりのにおいがする」


終焉の世界で、あの子と二人ボッチ。そんなバカげたロマンスが脳裏に浮かんだ。誰かのイメージが頭に流れ込んだ。


畳の上でログアウトした瞬間にそう悟った。そして。もう手遅れなのかもしれないとも。


「どうしてだろう、心が痛む」


変な感じがする。どこか取返しのつかないことをやってしまったような。少なくとも、体と心はもう、不思議と死を受け入れてるような。シンクロニシティ。共通認識。それが駆け巡る。

「平和の世界」


角刈りの筋肉質の男が攻撃を止めた。


「ビッキーちゃん、大きくなった」


その男はシャツ一枚とジーパン一枚。シャツの絵柄は明らかに未成年らしき少女の顔のアップと胸部ぎりぎりのプリントアウト。背中には美しい字で萌人もえんちゅとルビまで振られていた。


「ここから先はオレが相手をする。…ところで。ヒリア同盟に入らないか?うちは巫女さんと同じく処女手当も出るんだ」


「はァ?」


ヴィクトリアの史上生涯初めて、憤怒の炎が爆発した。

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