第六十六話 合流した思い人
血や肉を背景に、立つ貴方は素晴らしい。そして、美しい。衝動のままに破壊する。ばらばらにするのだっていろんなものを観てきた。ただの一人だって逃がさなかった。素手や刃物で毒物で、この世の邪悪を全部ぶっ壊してくれるような人間のような何か。あるがままに歩き、その道程が贓物で塗り潰される。その圧倒される勢いに、私は。他人は自分の鏡だというけども、もし、私があなたなら。きっとできっこない。その人生に、その衝動に、貴方の動きを真似なんてできっこない。人の心臓を刺したり、首を刺したり、そしてちゃんと解体する。どういう人が貴方をそこまでそうしたんだろうかって思ったけど、貴方は、人のために、なるようになっただけだった。それが普通だったんだ。五人だろうが、六人だろうが、ちゃんと全部。死体が欲しいのか、ただの気持ちが優先されてるのか。多分、それは違う。そういう人を、英雄って呼ぶんだって知ってる。でも、誰がなりたがるだろうか。何人も何人も休まずに殺し続ける日々に、誰が耐えれるのだろうか。本当に、凄いと思う。理論じゃない。この世界で、どれだけの邪悪をバラバラにしてきたのか。貴方は結局、捕まるまで辞めなかった。
「…」
ツキコモリさんとの出会った。こんな場所で。花火が打ち上がった。そして。
「サイレン」
酷いサイレンが鳴り響く。それから微かに、変なメロディラインが。
『現在プレイヤーキラーの一団がニューベニスを包囲しています。繰り返します。現在このタウン外でプレイヤーキラーの一団が包囲しています。セーフティラインを超えないようにお願いします。繰り返します…』
サイレンの音が鳴り響いても、カジノの大会の盛り上がりは収まらない。司会はサイレンをネタにして更にオーディエンスを煽ってきてる。セーフティラインはプライヤーキラーには超えられない。それは僕がまだアドバンスのレベルの領域に存在しているのと同様に、Realの公的な街の機能は何人にも攻撃されたり破壊されたりはしない。そういえば、ラフィアさんがアポ取ってたギルドマスター。
「…」
「話せる場所、行こう」
頷く。そのまま先ほどヘリポート屋上にあったホテルの談話室に入って筆談を始める。
「あと、二人。ミルとロズが一緒に同行してる」
「ロズさんって人、フレンド?」
「うん。私と似てる」
「そうなんだ…」
「今ほっとした?」
じーっと僕の目を見てる。心まで見透かされそうな目だ。怖いぐらい。
「あ。ちょっと待って」
珍しい日だ。着信メッセージが届いた。ラフィアさんから。端末を開く。
「…」
「ごめん」
最初の大物との会合はアンタ必須だから油売ってないで早く帰ってこい。そう書かれてる。
「ごめん、行かないと」
「私も」
「えっと、今」
「今度は力になる番だから」
「あの」
「…」
字が、上手いな。僕の字メッチャ下手だな。とりあえず、頷いた。
「どうしてログアウトしないの?」
質問された。上手い返しがすぐには浮かばない。
「忙しいだろうと思って」
「時間は作ってた」
「…」
「待ってた」
「…」
臆病風に吹かれてる事を知られたくない。
「そろそろ戻る。ログアウトしたら連絡する」
そう書く。
「必ず」
そう書かれた。達筆だ。それから僕は端末でミニヘリを呼び出し、屋上へ向かう。ひょこひょこ歩く。振り向いたら絶対切なくなるから振り返らない。エレベーターに乗り込んだら、メッセージがまた。
「…」
999号室。それだけのメッセージだった。到着したら、999号室へ向かう。大切な、顔合わせ。アメリカの副大統領。国を握ってる実力者。僕に暗殺者を仕向けた相手。いずれにせよ、話し合いの場が設けられることはありがたい。納得させるだけの実力はあるつもりだ。僕達の行動指針にも大きく影響する場が、整っている。
「…」
例えそれが、黙示録の第二の使徒、戦争を司る天使だとしても。
「上手くいくといいですねぇ」
「そうですね~」