第六十一話 ドレスコーズ
真っ赤なドレスに胸元がはだけ、異様に大きいボタンが歪つに並んでおへそが出てる。髪はぐねぐねに曲がった縦長の横にお嬢様ヘアスタイルみたいにマジでクルクルとカールっていうかロールしてる。しっとりとした眉と唇が印象的で、誰かと思ったらラフィアさんだった。
「…」
目がちかちかするような紫色のスーツでビシっと決めてるのはムゲンさん。前まではお侍さんみたいに髪を剃ってちょんまげしてたけど、髪かウィッグか分からないけど、黒髪ロングにしてる。
「…」
ちなみに僕は引き続きくまモンの着ぐるみを着てる。
「そろそろ時間ね。行きましょうか。くまモンはマネージャーですから。今後は宜しくね」
「…」
ムゲンさんは無言でタバコを口に持って行ってマッチを擦って火をつける。そして使ったマッチ棒をぽいっと無造作に捨てた。
「…」
明らかに不機嫌オーラが出てる。
「来たか」
何かの駆動音が聞こえた。窓から外を見るとヘリが小さくなってるような乗り物が覗いてる。
「オムカエにマイリマシタ」
「さぁ行きましょうか。マネージャーさんは今は何もしなくていいから。ただ、気は配っててね」
僕は頷いた。ラフィアさんからはマジのオーラが出てる。っていうか、芸能人オーラ全開。…すご。そーいやマジで有名人だったっけ。月刊Realの表紙を飾ってるし。
「作法は?」
「クラシックで」
「金は?」
「ドルで固定」
「標準は?」
「英語。でも王子の時はアラビア語。みんなが合わせる。文字は読める?アラビア語」
「英語はオーケー。アラビア語は無理」
「なら私が訳す」
「サポートに徹するが?」
「構わない。行きましょう」
小さなヘリにはパイロットは居ない。大きくなったドローンみたいな感じだ。乗り込むとニューベニスが小さくなって、旋回してく。段々と気持ちがヤバくなってきた。まだ高所恐怖症は克服してないようだ。
「ゆにこぉぉぉおおおおンん」
「がろォォおおお」
砂浜で叫んでる二人組が見えた。訳の分からない怒りみたいな感情が噴き出てきた。高所恐怖症が吹っ飛んだ。
「カンゲイ、イタシマス」
「席は三名ちゃんと取れた?」
「ツクリマシタ」
「結構」
ラフィアさんがこの上なく頼りに感じる。
「これから最初にジョン、カークエッキシー、その後はシュート、オーナーに続く。出来れば全員仲間にしておきたい」
聞き間違いだろうか。
「そのジョンってヤツはアメリカの副大統領で一番の敵なんだろ?」
「だからこそよ。敵になるか、味方になるか、聞きたい事もあるし。脅しでもアイテムでも条件は問わずに、味方についてくれれば今後の展開がすっごいラクになる」
「ココはキンエンです」
ムゲンさんは舌打ちをすると口をつけたタバコとマッチを足元に捨てた。すっごいハードボイルド。
「最悪、皆殺しの上に焼き払うのって手間がかかっちゃうから」
「アイツクラスってまだ他にいるのか?」
「居ないでしょ」
「なら楽勝だが、やりすぎるとゲームマスター来るんだよな」
「ゲームマスター来たことあんの?」
「ある。時間が停まった世界で、ゲーム始めた場面まで連れてかれて、初期設定を凌駕するカリスマの乱用は控えてくださいって言われた。雑魚相手に無双は禁止らしー。ま。妥当っちゃ妥当か」
「へえ。まだそういうの無いな。マネージャーさんは?」
僕は首を振った。さっきからスゴイ話してるな。
「出来れば穏便に。これからの第四層はさ」
ニューベニスの上空まで来た。第三層から更に太い塔が伸びている。どこまでも伸びてってる。
「アリーナもあるし。公的限界線超えてるところもあるから、殺せるっちゃ殺せる」
「ラフィア。お前PK向き」
「違う。違う。どっちか敵か味方かだけ。今は敵だから。こういうのは是々非々ってこと。死にたくないし、ムゲンもだろうけど、マネージャーさんだってね」
「背中は任せてる」
「任された」
裏VIPエリア 条件付きエキスパート ニューベニス スペシャルエリア Lv99~ (推奨)
「そろそろ時間とか言ってなかったすか?」
「いっけね。一人でレジ打ちいける?」
「任せてくださいよ」