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第五十五話 推理人

Realに戻ると、ラフィアさんが丁度甲板で瞑想していた。邪魔にならないように船の中で散らかったリビングを片付ける。謎の酩酊させる液体の入ったビーカーと不思議な良い香りのする葉巻、滅茶苦茶美味い謎のチョコレート。


「これ将来絶対規制入るな…」


なんて思いながら片付ける。大麻は体に良いらしくってタバコよりヤバくないという話を聞いてても、ドラッグ関連は良いものじゃない。Realだと現実よりも更にスゴイとも聞いたし、それにクリーンだとも。スゴイ感覚ってなんだって思う。コカインとかブルーメスが人生をダメにする最悪の部類だってのは誰でも知ってる。そもそも人生で、最高の瞬間なんてなくてもただひたすら進んでくものなんだろって思う。まぁ。ちょっぴり興味はあるさ。誰でもそうだと思う。人間の欲望は否定しない、けど。


「チョコレートが少し残ってる…」


滅茶苦茶美味かった。ここではどれだけ食べても不健康な高カロリーにはなりやしない。どれだけ食べてもオッケー。


「んんん。美味い…!」


「そのチョコ一本1000ドルするからね」


驚きながら後ろを見た。ラフィアさんが立ってた。


「瞑想の邪魔しちゃってすいません」


「別にいいって。瞑想じゃないし。それより少し前のヤツ。これやると体のマナの循環をして浄化させる。マッキーも…って。マッキーって呼んでいいんだっけ?」


「どうぞ」


「マッキーも出来るようになる。睡眠もそんなに要らなくなったり出来る。未成年にはおススメしないけど」


「便利ですね。どしてです?」


「背が伸びなくなるかもだから」


「それは困りますね…」


昼下がりの大海原で、僕達は優雅にコーヒーブレイク。カモメが鳴いてる。岸は近いのかもしれない。現実と同じように淹れるコーヒーを、カッフェって言うらしい。現実よりもカフェインマシマシで香りをスゴイ。飲み過ぎると下手なドリップですら飲めなくなるレベル。


「そういえばさ。いろいろ説明受けたけど、まだ二週間も経ってないでしょ?よくやれるね」


「何がです?」


藪から棒にそう言われた。


「もうだめだってならない?誰かに譲ろうとか。自分の人生に対して、ヘビーだって思わない?」


「普通の人生がわかんないですよ。皆特別で、皆必死になって頑張ってる。誰もがそうしてる。そう思ってなくても。だからきっと、僕だって特別なことじゃないし、大したことでもないですよ」


「そういう考えなら、ずっとそうやってたら、もうダメだって時はない?」


「しょっちゅうですよ。でも、その度に立ち上がらないと。僕は頭は悪いし顔もいけてない。そんなヤツだからこそ、せめてガッツぐらいは、誰にも負けない気概が必要じゃないですか」


「強いなぁ。私も最初はイケイケモード突っ走ってたけど、大人と絡んで話がややこしくなった。いろんなことを知る内に、自分の住んでた世界、地球が、頭の中の想像と違ってたり。混乱したり、嫌になったりしたけど、私はドラゴンが居たからなんとかやってこれた。駄目な時も良い時も」


「小学校の頃はもっと凄かったです。無敵モード入ってましたから。やっぱり…」


出会いが大切ですよね。そう言おうとした。その瞬間、ヴィクトリア・ローゼスの顔が浮かんだ。出会いこそが、人生の鍵で。僕もまた、マスターと出会わなかったら。…ぞっとする。


「やっぱり?」


「ラフィアさんも、ムゲンさんも、いい人だって信じてますから」


そう言ったらラフィアさんはむせた。


「げ。あのさ。それ、あの子にも言ったでしょ?」


「言ってないですけど」


どきりとした。


「信用するのも大概にしとけって話。でも。まぁその言葉は額面通りに受け取っておく。ありがと」


「こちらこそです。そういえばラフィアさんも僕の世界を救う旅に同行してくれるですか?」


「え?当然でしょ」


「そ、そうなんですか。一応聞いたけど。地獄行とかですよ?」


「楽しそうじゃん。それに、分かり易いし」


「わかりやすい?」


「セカイを救う勇者。こんなに分かり易いストーリーはない。ラブストーリーなんてとっても複雑でしょ?」


「ですよね。納得しました」


思わず頷く。


「結構、最近怖かったんだけど、ムゲンやアンタと出会ったら、なんかほっとした」


「どうしてですか?」


「一人じゃないんだってね」


「どういう意味ですか!?」


「いろいろな意味で」


「ですか」


「言わないからね、言ってほしそうな顔しても」


「そんな顔してます!?」


「してる」


「じゃあ話題を変えます。これからの計画です」


「そのためにはいろいろと準備が必要。まだ話せる段階じゃない。ぁ。いい機会だからハートロッカーを教えるか」


「なんですそれ?」


「中には他人の心を覗けたり、読めたり、理解できたりする人もいる。神秘、超能力、法力、呼び方はいろいろあるけど。それを遮断する技術。アメリカのセキュリティクリアランスにはこれが採用されたりしてる」


「おお!」


なんか凄そう。あ。


「あの子にも効果があって、心の距離が縮む能力は発動しないんですよね?」


僕の質問に割とガチめにラフィアさんは考える。


「うーん。多分無理だと思うけど、多少の効果は出ると思う」


「多分無理なんですか…」


「アンタ舐めすぎ。あの子相当ヤバイよ?ムゲンの出鱈目でなんとかしたけど、アレは本当に凄まじいし。あんなの見た事無い。悔しいけど、私とタイマンなら持久戦に持ち込むしかないってぐらい。アレは、これまでの歴史の先祖のオーラを受け継いでる。オーラの色は覚えてる?」


思い出したくないんですけど。


「青と黒でしたよね」


「多分、あの子本来のマナの色が青。黒は多分、継承された魔力だと思う。暗黒魔術っていうのは、対価次第でどれだけも強力な魔法が生み出される禁忌の一つ。例えば、寿命半分で敵を呪い殺したりね」


「マジですか」


「マジ。ヤバイ。防衛機構を設置するのが一番なんだけど、手っ取り早いのは自分のレベルを上げる事。ああいうのは、遥か格上では効果が出ない事も多いし呪えないことだってある」


僕のレベルはあれから上がってない。レベル18である。が。多分ドラゴン変化した時は、変動してると思うんだけど。


「レベル上げも視野に入れないといけないですね」


「うん。でも、アンタの作戦は悪くない」


「そうですか?」


「アドバンスのままでプレイヤーキラーから身を守るってのは悪くない。実際私もマッキーをシークレット賞もろとも消滅させろって命令されてから、殺せなかった言い訳が出来たし」


「言い訳?」


やるき満々でしたよね??


「そう。言い訳。でも、想像以上ぶアンタがぶっ壊れてたからちょっと本気出しちゃったけど」


「モンスタープレイヤーキルされかかった気がするんですけど」


「アレぐらいでどうにかできないようじゃ話にならない」


「デコピンされたんですけど?」


「ちょっとイラっときたから」


「なんか矢は放たれてそのままマグマにぶっこんだんですけど?」


「あれでもやっぱり死ななかったのを確認したかった。私もマグマや海中でも問題は無いから」


「じゃあ、僕を殺せなかったじゃなくって、殺さなかったってことなんですか?」


絶対負け惜しみだろ!


「そゆこと。私なりの保険」


「保険ってどゆことですか!?」


「今の状態ってこと。多分、偉大なるギルドの一角の一つは、邪悪なヤツに乗っ取られてるってこと」


「え?」


「組織体制も変わってきてたし。実態の見えないほど巨大なカンパニーは、頭次第で如何ように動かせる。一応、私なりの推理はあるんだけどね」


むっとした。そこまで言うんなら。


「聞かせてください」


「だーめ。まだ確定はしてないのだよ。ワトソン君」


「ワトソンなのかワトスンなのか、それはさておき。今は二人っきりです。物語の本質を語り合うチャンスです」


「頑張って三人だと思うけどね。ムゲンもヒマだしついてくるでしょ。でも、これは」


「言ってください…僕達は一心同体!隠し事は無し!仲間!地獄行きの仲間!世界を救う勇者パーティじゃないですか!!」


「いや。アンタが知ってると、下手うちゃ心を読まれて悪い展開になるって意味。私の話聞いてなかった?例えば防衛機構…。あ。…うん。分かった。まぁ一人で抱え込むにはちょっと重いし。だけど、それなりの覚悟を背負ってんでしょうね?やっぱりやめたなんて言わない?」


「言わないです。もう言えないです。人生背負ってます。妻と子供が僕の将来がかかってるんです!孫の顔だって見たいし、欲を言えば夜叉孫ぐらいに夏祭りに連れて行って遊んであげてたくさん甘やかしたいんです!」


「なんでもする?」


「なんでもするに決まってるじゃないですか!!」


僕は未来と人類を、守る盾になろう。全部、全部救ってやるよ!!それが男の夢、ヒーローってもんだろ!!


「分かった。おそらくだけど、偉大なるギルドの一つのトップ、アメリカの現副大統領は多分、始まりの使徒だと思う」


はじまりの使徒…。ファーストエンジェル。第一の使徒。第一。使徒。もしかして。


「それって、黙示録の第一の天使ってことですか?」


「その通り」


「いやいや。それって誰かが捕えてて…」


「支配されてるのかもしれない。セントバーグのヒットマンこそ、戦争を司る第二の使徒かもしれない」


「えっと、黙示録風に言えば、結構進んでるってことですか?よくわかんないですけど」


「私も良く分からないし、どうなってるのか。あくまでも想像。ただ、現実の支配機構が変な動きを見せてるのは確かだし。現に東雲末樹を殺せって暗殺命令まで出してる。世界の理に反するからってね。どういう理屈かは分からない。どういう状態なのかも。ただ、これまで私の聞いてきた話や見てきたこと、感じた結果、そんな直観が働いたってだけ。推理でもなんでもないかもしれないし、大外れで杞憂かもしれない。ただ、それだと、最悪だなって。ね。最悪な事を考えれば、後はそれよりもマシって思えるでしょ?」


「ま。まぁ分かるけど」


「それに、火星移住計画もどうかしてる。地球が死滅する運命だって決めつけてる。現に、幾つかの予知では確かにそう出てるのもあるんだけど、そんな不吉な未来は信じない」


「…うん」


僕は、ちょっと実はガチで怖がってるラフィアさんの顔を一瞬見てしまった。見た後思った。多分、もしかしたら、ずっとラフィアさんも、怖かったんじゃないかって。


「僕がいます。Lv1299のヴァミリオンドラゴンもいます!ワンパンでやっつけてやりますよ!!!」


ここ一番の威勢良くの大見得。


「そのためには、なんでもしないと」


「その通り!」


「なんでもするって言ったよね?」


「その通り!」


なんなら、今後、語尾に、であ~るをつけてもいい。その通りであ~る!…やっぱ今の無し。


「よし。とりあえず、ハートロッカーは今から教える。呼吸法と心身をリラックスする技術だから、すぐ学べる。それよりも、今後は、死んだことにするためにも、完璧な防衛機構を施すためにも、アレを着てもらう」


「…え?」


「そう。アレをね」


「くまモンぐらい…。いくらでも着ぐるみしてやりますよ!!!!」


「おっしゃ!よく言った!」


着ぐるみライフ、再び…!

「よし!!明日はデズニ―ランドシーだ!ホテルはもちろんスイートだぞー!!」


「おー!!」


「マッキー最高!」


「お姉ちゃん、マッキーの動画の案件、前払いにさせてて私達が豪遊ってちょっと…」


「いいのよ!あんなヤツ!どーせどっかでしけこんでんでしょ!!」

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