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第五十話 復活者

目を開けたら髪がピンクで美容院に一万円ぐらい払ったぐらいの髪型をしているハートネット・ラフィアと髪を剃って丁寧な髷を結ってるお侍さんが見えた。このお侍さん、女性か。いずれにせよ。助かった。ファーストキスは、なんとか守られた。東雲末樹大勝利である。本当にやった。


「…ありがとう」


涙が出てきた。怖かった。本当に怖かったのだ。


「なんで感謝してんの!?っつーかなんで泣いてんのよ!」


「いろいろ事情がありそうだな」


僕は白シャツとパンツ一丁で両手を後ろ手にして拘束されていた。両脚も縛られてる。


「…」


冷静になった。少し考えると、今の僕は殺されそうになってるのではないだろうか。今になって思い立った。


「…」


ヤバイ。


「まぁまぁ。私がMVPだ。だから処遇はあたしのだな」


「しゃーない」


「ちょ。ちょっと待ってください!殺す前に話を聞いてよ!」


「そのつもりだよ。いくつかきな臭い動きが見られたからな。…だろ?」


お侍さんはラフィアに話を振った。


「ええ。高レベル所持に対する世界の動きが、殺処分になった。アンタももう分かってるだろうけど、Realと現実はリンクしてる。高レベルになればなるだけ、肉体も脳も強化される。レベル60を超えれば、英語によく触れる機会のある人間は理解できるようにもなる」


それは知らなかった。レベル60超えれば英語は満点なのか。なんというチートツール。


「レベル100になったゲーマーが世界で暴れるような事態になっちゃ困るし、魔法や魔術の公開は禁忌事項でもあったらしい。私はそういう家系じゃないけど、そういうのも扱えたりする人もいる。世界の調和を乱しかねない人間は抹殺される。概ね、推定レベル300以上というラインを定めた。つまり、アンタが自慢げに行く先々でLv1299の話を振りまいてるからアウトってわけ。それに伴って、ドラゴンの規制もね。一応Real最強を張らせてもらってるわけだし、アンタの次はあたしって訳よ。だからギルドも抜けた」


「地位も名誉も捨ててな。それぐらい危険が差し迫ってたのか?」


「ええ。世界にはいくつも秘密もある。私はギルドの顔役だったから幾つか聞いた事がある。セントバーグのヒットマン。ちなみにうちのギルドの上層部はアンタは現実で死亡してるって話になってた。なぜなら、そのセントバーグのヒットマンが動いたから。私は、そのセントバーグのヒットマンの秘密を知ってる。だから、抜けた」


「それで?その先も聞かせてやれよ」


お侍さんはどこからともなく水筒すいとうを取り出して湯気が出てる緑茶を飲んでる。


「ソレをどうやって捕獲したかは聞かなかった。ただ、相当の犠牲を払ったとは聞いた。シノノメマツキ、世界を滅ぼす物語、黙示録は読んだ?」


「読んでない。だから僕は神道と仏教のハーフなんだよ!このセリフさっきも言ったんだけどね。地獄の王様に」


「え?」


おもしろいぐらいの呆けたようなリアクションをラフィアさんはやってくれた。その反応は素晴らしい。リアクション芸は極めれば一生くいっぱぐれはないよ。


「まぁ。いいから。先の続きを言ってやれ」


「第一の使徒。第一騎士。馬に乗るモノ。その御業は、支配。支配の天使。それがセントバーグのヒットマンの正体だと聞いた。そして世界は、やがて少しずつ、或いは突然、終焉がもたらされる。冗談のように聞こえるかもしれないけど、真実、だと思う」


「…」


二人して、顔を暗くしてる。


「世界が、終わりに近づいていってる。黙示録は、始まってた」


どうやら、話が早いらしい。


「さっき皺くちゃのお爺ちゃんの夢を見た。その人が言うには、天界に行けってね。天界までの門は地獄にあるって。だから僕はこれから地獄へ行ってゲートを抜けて、世界を救う。どうやらそれが僕が生まれた理由らしいんだ」


頭がすっきりしてる、どうすべきか、何が必要か、分かってる。


「…その話は本当だと思う。上空から異質なオーラで私達を監視してるプレイヤーが居た。悪魔みたいな羽が生えてた」


「気付いてた。なるほど。ラフィアの予定はどーすんだっけか?」


「Realを支配する。その後、地球をなんとかする」


「そのためには?」


「船には乗組員がいる。腕の立つ船乗りがね。だからアンタ。今ここでプレイヤーキルされて召喚獣を失うか。それとも世界を救うか。選びなさい」


思いがけない提案をされた。僕がギルドを立ち上げるつもりだったんだけど。でも、僕は死んでる扱いになってるのだとしたら、名前を出すわけにはいかない。僕もまた、強者が必要だ。


「決まってるでしょ。ここで立たなきゃ、生まれてきた意味が無い」


ドラゴン変化で拘束をぶち破った。


「マッキーって呼んで。召喚獣はヴァミリオンドラゴン。レベルは1299。それと…」


「それと?」


「ジョブはヒーラーです」


ちょっとブラピ風な感じのハリウッド感を出してイケイケな状態の格好良さの渾身のギャグを繰り出した。


「やっぱり殺しましょう」


「そうだな。もう再生されないように消し炭にしてやっとくか」


二人してマジなオーラを出してきた。


「ちょちょっと!ジョブチェンジするって!」


「ほんっとーにガキだな。空気読めっつーの」


「ドラゴンの持ち味は攻撃なんだから、それ生かさないでどーすんのよ!ガキすぎ!」


「…」


そんなに怒らなくて、良くない?


「…」


生死流転。万物は逆転する。光明が見えてきた。


「まぁ………。船でもう少しお互い情報共有する必要がある。それに、その、いわゆる、世界を終焉に向かわせる黙示録の四騎士の内の一人の攻撃を食らってもピンピンしてる東雲…。マッキーでいいんだな?」


「うん。どぞ」


「マッキーの話も聞かなくちゃいけない」


「はあ。まさかこんな形でスーパーヒーローになるなんて思ってもみなかったわ」


やれやれみたいな態度でラフィアとお侍さんは歩く。僕もそれについていく。


「ムゲンだ。宜しくな」


「マッキーです。宜しく」


ふと、ムゲンさんが立ち止まって握手を求めてきた。僕も握る。ごつごつしてる。女性の手じゃない。


「ハートネット・ラフィアよ。知ってるわよね?はぁ~~。来年私主演でハリウッドからオファー来てたけど、これでオジャンかぁ」


ラフィアとも握手をする。こいつ人とフレンドになるための握手の時に、自分のビジネスの愚痴をした挙句ため息をつくのってなんなんだ。態度ワルイぞ。が。今日ぐらいは、大目に見てやる。助けてもらったし。


「タイトルは?」


「異世界転生女騎士かっこかり」


「監督は?」


「タランティーノ」


「お前それ受けろよ!!いや絶対受けろよ!タランティーノだろ?おまっ…。マジで言ってんの?」


「マジ」


「おいおいおいおい。タランティーノかよ!」


「ムゲンさんうっさいよ!!こっちは世界を救うためのモノローグやるところなんだから!心境を考えて落ち着てこうってんだから!」


「タランティーノだぞ?タランティーノ…。タランテ」


「もうちょっと危機感持とうッ!?」


この先が、心配になってきた。

「お客さん、お金持ってないんなら困るなぁ~~。ここ街一番だよ!皿洗いだよ~?二時間!」


「…」


「Realって結構高いんですよ~。ちゃんと金額見てから入りましょ~」


「私が代わりに払う。はいこれ」


「お客さん良かったねぇ~!浮かない顔してるけどさぁ~!人生いろいろあっから!あっから!」


「いいんですかぁ?」

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