表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/198

第四十一話 踏破者

暗黒の中を進む最中、ふと気付いたのが。この魔力を放つ植物が僕の進むべき道しるべになっているということ。真っ暗闇の暗黒で輝く星々の光のように、大海原で星座によって進路を取る古の航海のように、進んでく。それが自分一人じゃないっていうのだから、素敵な事だ。口の中が甘酸っぱい唾液でいっぱいになるような、不思議な感覚。ツキコモリさんと一緒に、ジョギングを楽しんでるような錯覚。


「マッキー、結構キツイね…」


その一言で、ツキコモリさんをちゃんと視た。大分息があがってるし、オーラの消費も減少している。


「背中に乗ってよ、限界が来た時はさ」


「そうする」


そういえば、ツキコモリさんは正真正銘の人間だった。僕とは違って、正常な感覚の持ち主だろう。正常な人間が暗黒の中を、走れるなんて、相当なものだと思う。普通じゃできない。できっこない芸当だ。


「やっぱり背負うよ!」


「まだいい」


もくもくと走ること30分。一本道だったのが本当に救いだ。遂に、目の前を走っていた爺さんが立ち止まった。


「ひょっひょっひょ」


何かが漏れ出してる。この洞窟の道を塞いでるものがある。巨大な物体が目の前いっぱいに壁となってる。


「飛行機?みたいな…」


金属質の壁だ。一部が破損して、そこからかなり激しい光を放つ魔力が漏れ出してる。この周囲は見渡せば、一面の苔に覆われているみたいだし。これが原因で間違いないだろう。


「この壁を破壊せし後世の者に伝える。不可能であれば、小屋にて待て。以上である」


それを言うと、爺さんは幽霊のように立ち消えた。


「多分、マナで造ったコピーみたいなものだと思う。私にもよくわからないけど」


「あれがコピー?」


「多少のシンクロはしてるかもしれないけど。マッキー、これ、動かせそう?」


目の前の銀の壁を見た。


「動かせると思うけど」


触った。


「~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!」


凄まじいショックが全身を貫いてぶっ飛んだ。


「…」


触った右腕がヤバイことになってる。身体がぼろぼろなのでさらにヴァミリオンドラゴンの力を解放し、第二形態へと移行し、再生した。僕と普通の人間との違いは、この部分が大きいと思う。戦闘になった時、再生できるとかなり便利だ。負けは無いように思えるほど。


「壊していい?」


全身のマナを拳に集中しながら、壁に近づいてく。


「うん。私達の目的はこの瘴気を止める事。けど、爆発するかも」


「確かにそうかも…」


僕は思い出した。あの深紅の鎧を纏った侍を。あのお侍さんは自身のオーラを刀に変え、僕のヴァミリオンドラゴン状態の翼を斬り落とした。あの攻撃力。僕も出来るはずだ。


「刀剣で、この壁を裂いてみる。先ずは、軽くね」


ありったけのマナを右腕へと伸ばし、無理やりオーラの棍棒を造った。


「まずは、一発」


鬼の棍棒。おもいっきりのフルスイング。凄まじい音が鳴り響いた。


「マッキー。ごめん。鼓膜飛んだ」


「えええええええええええええええええええ」


「先は空洞みたい。マッキー。手を出して」


僕は言われるまま手を出すと、腕に模様が浮かび上がった。


「魔力を体内で練り上げる時、独自のマナ精製技術が存在してる。我が家では、これ。腕に力を集めてみて」


「う、うん…」


耳から血が垂れてるし…。


「ごめん…」


「口の動きで分かるけど、謝罪はしないで。今はプライベートじゃないから」


「え。そうなの?」


「私の家族の問題。長年の。さっきみたいな棍棒を出してみて、出来れば刀をイメージしてみて」


「刀…」


オーラを流した瞬間、滅茶苦茶カッコいい刀が出来上がった。


「うわ…」


僕の腕にもツキコモリさん同様に魔力を流す刻印?タトゥー?みたいなものに沿って魔力が流れてる。


「うん。出来た。それを更に強化し、魔力の質を上げ、練り上げて、裂いてみて」


「うん」


ざっくりと軽く振り下ろしただけで、銀の壁がいともたやすく切り裂けた。まるで、刃こぼれした包丁と新品の包丁みたいな感じだ。こういうこともできるのか。


「入れるぐらいに斬って」


「うん」


入口ぐらいの大きさに斬った。当然、真っ暗闇。


「行くよ」


足を踏み入れた。真っ暗。ツキコモリさんも、僕へと続く。ツキコモリさんが一歩踏み入れた瞬間だった。光がついた。輝かしく、眩しすぎる光が辺り一面に反射してる。


『ウーメッツァー様。おかえりなさいませ。最終ログインから300年経過しました。SOS信号が1億件超えてます。総督令にて、最重要メッセージを開封致します』


頭の中でソレを言われたと認識出来た。テレパシーの一種だろうか。奥行きばった正面にノイズが走って映像が映し出された。


「…」


空中から俯瞰されている廃墟となった都市のように見えた。あちらこちらに稲光が走ってる。それから最後に、これが、現在時点のリアルタイムの映像だという事も理解出来た。テロップもまるで見たことも無い記号が記されているが、これも理解出来た。


「現時刻の月面内部…」


「何をしてるの?」


「昔の人は、こうやって祈ってたんだって」


「祈り?」


「救世主を…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ