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第三十話 

黒々とした闇間から星の光で照らされてる船着き場。松明の火の明りの先、ドラムの音が響いてる。僕達は島の船着き場に到着し誘導された。


「ご予約のお客様ですか?」


「いえぇ。ジャンプカードと船の燃料石、それから連絡が出来る魔法カードを」


「ヴィクトリア様ですか。失礼致しました。直ぐに用意させます」


カラスのくちばし型の黒死病マスクを被ってる黒服は部下に用意させるように伝えた。武装兵が見えるだけでも五名以上。


「この場所へは顔なじみのようんだけど、お得意さんなの?」


「ええ。Realも世界もビジネスでお取引させて頂いてますねえ」


「へぇ…」


どんなんだか気になるけど。


「少し島内を見て回りますか?」


「あ。それはちょっと気になるかも。ドラムの音も響いてるし」


「今日はどういう催しものを開いてるんですかあ?」


ビッキーが警備兵に尋ねる。


「本日はとある富豪の方の貸し切りでパーティです。こちらで用意したのは250人の頭数です」


絶対風俗関連か。まぁ。大人の趣味だよなぁ。僕には無縁。


「私達と違って、下々の者達は生命の輪を繋ぎますからねぇ。単一で完結した生命なら、繁殖など要らないのに。人間っておもしろい生き物ですよねえ。ふふ」


「いや。そういう気持ちは分かるけど、僕だって将来結婚して子供だって欲しいし」


「あらあら。そうなんですかあ。でもですねえ。確実に無理だと思いますよお?」


「ど、どの辺が無理!?」


そう断言されるのがなんだかショック。どういう意味だ。


「レベルが違うと生殖は出来ないのが常識なんですよぉ。レベル100がレベル1とは魂は折り重ならない。レベル10とレベル1だって滅多な事ではありませんねえ。人魚の話はご存じですかあ?」


「知らないです」


「人魚は恋をしませんがぁ。極稀に人間を恋するんですよぉ。人魚のレベルは人間とはくらべものにならない希少種なんですよぉ。ドラゴン超える程。他の別の宇宙では観測すらない、この地球独特の希少種なんですけどぉ。人魚はですねぇ。自分の命を紡ぐ力に変えて、世代を渡るんですよぉ」


「ど、どういうこと?具体的に」


「自分の残りの全生命を懸けて、愛する男の子供の生むってことなんですよお。つまり、死んじゃうんですよねぇ」


「…」


「もうちょっと専門的な話をしますとですねぇ。これは、女高レベルに対して男低レベルの話になりますねぇ。奇跡的な愛。双方共の究極的な愛の結実の下、発生する奇跡なんですよぉ。マッキーほどのドラゴン変化なら、一般女性との間で子供はまず望めませんよぉ」


割と衝撃的な事をさらりと言われた。


「一般論の話になりますがぁ。奇跡が発生する程の愛ならばぁ。マッキーが死ぬ事で子供が出来るかもしれませんねぇ」


「ええええ!?それ、情報源どこ?」


「家が人間牧場を経営してたので確かな事だと思いますねぇ」


「えええ!?」


とんでもない邪悪な発言が飛び出てきた。


「といっても、かつては。ですねぇ。ちょっと前に空賊が襲撃してきて、いろいろあった結果、今は少数の経営となってますがあ」


「く、空賊っですか」


「私はぁ。天空の大陸ラピュタの当主ですからねぇ」


「…えぇ」


話が飛び過ぎてる。そりゃ吸血種とかいるけど。確かに邪悪のなんたらが~っとか言われて必殺技出されたけど。


「ドン引きされてるよぉですけどお」


「…ま。まぁ…いろいろ衝撃的だからさ」


「マッキーの方が遥かにヤバイと思いますけどねぇ」


「えええ?」


「ドン引きするレベルですねぇ」


「そ、そうなの?」


「やろうと思ったら、マッキーが人類を千年先まで導けれるレベルでヤバイですねぇ」


「え。び、微妙な例えだよ…?」


「人類を滅ぼしたり、人類の寿命を撤廃したり、人類を銀河系まで送り届けたり。その強さがあれば、寄与できる威力は留まるとこ知らずですよぉ」


「やんないよそんなこと…。そりゃ。ピンチなら頑張るけど。人間の歴史って頑張って頑張って一歩ずつ進んでったんだから。僕がなんかドカーンとやるっていうのも違うでしょ。普通の一般人として生きてくよ」


「絶対無理ですねぇ」


言われて気付いたけど、小林さんと似た事をまた言われた。


「やる前から無理とか言わないでよ…。やる気下がっちゃうよ…」


「だから。ちゃんとそういう事も考えたほうがいいですよお」


「頑張って普通に務めるつもりです…」


「ちなみにタロットではぁ。地獄行きって出ましたよぉ」


「とんでもないネタバレ止めてよ!!」


ウソだろ…。


「冗談だよね?地獄って…あるの?」


「どうでしょうか…。悪魔もいるみたいですのでぇ。天使も従業員に居た事もありますしぃ」


「天使に従業員居たの!?」


「居ましたよぉ。ブラック過ぎるって言って地上に降りましたけどねぇ」


「あ。それ。林さんだ」


いや。確かそういう事言ってたよな。サークルの仲間にそれっぽい人が居たような。


「超絶美女だったけど、翼を切り落として、大型同人誌書店に勤めてる林さん。お菓子ばっかり食べてて100キロの巨体の林さん…」


「ちょっとわかりませんねぇ…」


「右の目尻にタトゥーが入ってなかった?」


「あー。入ってましたよお」


「マジかよ…」


「お知り合いなんですかぁ」


「ああ。まぁ。知り合い」


パチンコでお金をすってたから一万円貸してあげたっけ。そういや返してもらってないぞ。今思い出した。


「なんかちょっといろいろと突っ込みどころ多すぎるんだよ!!これからドゥルーガだってのに!」


「物語もそろそろ佳境という事じゃあないんでしょうかぁ…」


おっとりとした、美しい気品のある顔が、まるで邪悪なジョーカーのように思えてきた。許されざる人間なら、たとえフレンドでも怒る。それにしても、林さんがマジで天使だったなんて…。確かに、天使だ。うちのサークルメンバーが確か、その断らない性格を危惧して、わざと超太らせたって話も耳に入ってる。僕のエロゲーレビューのバイトの仕事は林さんにチェックを入れて貰ってるし。マジもんの天使か。そして僕は地獄行きか。地獄。


「いやいや!!なんで地獄なんだよ!納得できないな~!」


「その後のハッピーエンドが待ってるので大丈夫ですよお」


「全然大丈夫じゃないよ…」


ダンスミュージックが聞こえてきた。ひと昔前のクラブミュージック。後ろからは、あのオーバードーズ野郎がやってきた。


「気分治すため、一発踊っちゃいますかあ?」


ビッキーの良いところをあげるなら、それは僕が羨ましくなるぐらいのポジティブさと精神力の強さだろう。

「敵襲ですね。封を徹底させるように。ガードを展開させてください」


軽々とバリヤを打ち砕き、船が天空の大陸へと突っ込んだ。


「童貞の悲鳴が…。聞こえてきた…」

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