表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/198

第二十二話 最強だから悩む少年

千葉県市川市の市川駅のツインタワー。45階建ての建物で、地上150メートル。市川市民の誇れる偉大なる建物の一つである。偉いところは誰でも無料で45階の展望台を利用出来、そこらへんの絶叫マシーンよりも遥かに恐怖できるエレベーターももちろん無料で使える。


「一応。試してみておくか」


助走無しのジャンプでそんな展望台まで飛ぼうと思う。文字通りの一っ飛び。


「一応やってみよう。中坊ならマンガならやるはずって言ってるはずだ」


市川駅まで徒歩で十五分。自転車なら五分の距離。


「よし」


跳ぼう!っと思った瞬間だった。僕の両肩から何かエネルギーみたいな温かさを感じた。


「え?」


僕のオーラが翼状に変化してる。


「マジかよ…」


ちょっと怖い。ここでテンション上がるのはハリウッドのヒーローものぐらいだろう。なんていうか。生物的というか動物的というか、ヒトとしての恐怖を感じた。


「…」


全人類で、空を飛べるヒトは僕独りだけ。それがいったい。どれほどの孤独なのだろうか。特別だとか、スペシャルだとか、ましてや個性だとかの言葉で言い表せない底知れない気分の悪さを感じた。


「きっついな」


そしてこれ。飛べるヤツだ。あのツインタワーまで一っ飛び。


「…」


ふわっと浮いた。翼を動かすイメージ。飛んだっと思ったけど、ほぼ現状維持のただ浮いてるだけのそんな状態。


「…ハァハァ」


メッチャ疲れるじゃん。これアニメなら格好良く飛ぶところなのに。結構疲労する。空飛ぶのは苦手だったようみたいだ。なんかちょっとホッとした。人類で僕だけ飛べるって、なんかちょっと嫌だし。続いて足に力を込めて、ジャンプ。ジャンプ。ジャン…。


「うぉ。いいいいおおおおおおおおお」


ツインタワーの屋上まで楽々と飛べた。市川駅周辺の夜の街並みが僕の知らない顔だった。


「…」


うん。できた。問題はここからジャンプして降りた時骨折しないかどうか。


「よっし…」


下を見た。


「無理無理無理のかたつむり!」


何も考えず、エレベーターを使用してそのまま降りる。150階まで上昇するのと、150階から下降するのとでは、全くもって全然違う。本能が震える高さ。


「コンビニでハーゲンダッツ買っちゃおっかな」


コンビニで久しぶり物色する。今夜はとにかく限界を超えたいような夏の日だ。袋いっぱいにハーゲンダッツと無くなってキットカットを大量に購入する。


「・・・あっ」


展望台の避雷針に寄りかかって、もうちょっと厨二全開モードで気の利いて格好イイ台詞ぐらい言ってれば良かったのかもしれない。夏の夜の街を歩いて帰りながら想う。そうすると、どこからともなく敵役が沸いて出てきて、僕がなんかそれっぽい格好イイ事を言っちゃってワンパンで沈めるのだ。まさにご都合主義の展開。僕の実力が目に見える形で超常も頂上だってことが証明される。なんてことを考える。


「…」


ツキコモリさんに僕の冒険を付き合わせるのもどうにか考え物かもしれない。普通じゃいられないのだ。これからは特に。今の僕なんか特に。でも。ツキコモリさんだって、普通じゃない人っぽい感じだったなぁ。このままイースターヴェルで分かれたほうがいいのかもしれない。ミルフィーだってそうだ。このままのRealで、何か二人には普通に最高な冒険なんて望めない。普通じゃいられないってヤツ。


「このまま…」


むしろこのままずっと…。小林さん達と…。なんてことを思いさえする。小林さんとどうなるかだなんては想像できない。男女の関係には絶対なれないしならない自信がある。中坊に対してもそうだ。清水さんは…。ピアス開けてる子が間近にいると、なんか変な気持ちになる。全然価値観が違う異種なヒトが側にいて、なんだか落ち着かないような。


「…けしからんなぁ」


純粋な力の獲得。ふぅんって感じだ。これなら彼女がゲット!みたいな感じの方がまだ人生180度変わると思う。今時、最強さがあったとしても、この平和な現代で役に立つものなのだろうか。無敵さを手に入れたとして、そもそも敵なんてものが存在しているのか。魔法少女もののアニメとかなら明確な敵は出てくる。そりゃファンタジーだからだ。でも現実は…。


「んー」


ひょっとしたら。実は。この世界。そういうのいるのかも?


「…」


いや。ないない。吸血種だって税金納めてないと差し押さえられる世界だ。ズルはダメ。ちゃんと公正に生きなければならないのだ。


「…」


僕の強さか。佐藤さんを考える。吸血種は頭か心臓を潰せば死ぬって言ってたけど、それも普通の場合。大抵そういうトリッキーな設定って心臓が複数有ったり、脳髄が複数有ったりするんだ。でも。僕の今のこの感じ。過去の暴力を思い返してみても、僕の今にかなわない気がする。


「そもそもオーラを巡らせ、本格的な臨戦態勢じゃどこまでやれるのかってのもあるんだよなぁ…」


パンチングマシーンを機械ごとコンセントから引っこ抜かせれるレベルの強さ。小林さんが殺す気で殴ってもノーダメージの耐久力。んー。


「でも。高校は出ておかないとな…。就職に有利になるかな…」


大学はもういいよね…。なんか。


「ぶっちゃけ小林さんとこのままずるずる行ってたら行くとことまで行きそうだよなぁ…」


変な気が起きる前に役所から婚姻届けぐらい貰っておくべきか。


「Realどころじゃないよな…」


歩いてると、商店街に備え付けられてる大型のモニターがニュースをやってた。どこかからか鳴る不気味な終末音のオカルト特集。


「…平和だなぁ」



電磁銃は射程距離10キロ超。家に居ても対象を射殺出来る極めて殺傷性が高い兵器である。


「…」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ