エピローグ 女王のゲーム
ビッキーとエルフの女王様の戦いを脇に置いて、ゆっくりと国賓待遇を味わって佐賀県とエルフの国どっちのおもてなおしが凄いのかを比較してみようという予定が思いっきり崩れてしまった。
佐賀県VSエルフの国。このカード相応の戦いはそうそうない。永年決着がつかない超美味しいたけのこの里VSそこそこ美味しいきのこの山にも匹敵するのではないだろうか。コーヒーVS紅茶。これもまた甲乙つけ難い。エルフの国も建国以来何万年かは経っているだろう。もちろんそれなりに人々のねぎらいである娯楽だって栄えてるはずだ。ホテルだってどういうものなのか、料理はどういうものだろうか。エルフという種族が作り上げた文化というものには興味が尽きない。まぁちょっと考えればわかる事だろうけど、佐賀県の海の幸山の幸には到底太刀打ちできるものではないとは思うけども、それでもちょっとは本籍佐賀県の身としては付き合ってあげるのもやぶさかではないのだ。これは日本チャンピオン、最高の県として、戦いを受ける義務があるのである。が。
「僕はビッキーにタオルを投げる係だからね」
ギャンブルジャンキー、いや、生来の負けず嫌いの二人の後についていく。もうパチンコでいいんじゃないかな?
「あちらへいきましょうか。建物に入り次第Realに繋ぐ。お二人ともレベルは?」
「アドベンチャー。マッキーもね」
クラスアドベンチャーとはすなわちレベル500を超えるプレイヤーに冠する称号の一つ。
「それなら良い。あの建物に入るとRealに繋ぐから。それと。…用意が必要なら一日ぐらいは待ちますよ」
「ご配慮は不要ですよぉ。そうでしょ?」
「ですよね」
そう言って二人は笑いながら歩いてく。なんか怖い。こういうの見ると、世間は世知辛いものだなって思えてくる。早くに妻と出会えて幸運だったと心底感じる。自分のものさしで測れないものは、正直怖くて絡みたくないって思う。女性特有の怖さというものを目にすると度々そう思う。
「・・・」
近い未来、子供が大きくなって妻が子供にガチギレしてたらどうしようと一瞬考える。僕の知らない、あるいは妻ですら自分自身の知らない顔を知ることになるのだ。家庭内暴力だけは避けなければならないのだ。わがままになるような育て方は絶対にやめようと心に誓いながら二人を見ていた。究極がこれなら、はたから見ればバカ丸出しなのである。
「マッキーは手を出さないでいいからねぇ」
「そのつもりだよ」
生まれた時から最強、あるいは無敵、神を強いられた存在の生き様。それでも生き方は否定はできない。
「フェアーにいきましょうか」
建物に入る前に女王はぴたりと足を止めて言った。
「Realに接続し、ランダム設定でのデュエルマッチ。ギャンブルの他にRealの決闘システムルールに則った設定。どう?ギャンブルに限らずちゃんと力も使える。公正に無造作無作為」
「良いですねぇ。話が早くて済みますよぉ」
その返答に女王はニヤリと笑った。ほんと人生楽しんでるなこの人。
「ただし、我々はフェニミニスト。完全な独立モードでお願いしますねぇ」
ちゃんと気を最低限回してくれるんだなと思う。独立モードは文字通り設定されたプレイヤーが他のプレイヤーやシステムから切り離された完全に独立したモード。
「流石に、殺戮モードなんかのなんでもありなんかで興を冷やしたくないんですよねぇ」
そうなったら僕が速攻でビッキーを沈黙させてこっちの負けにするつもりだったんだけど。
「そんなあのあるんだ」
「あるみたいですねぇ」
「二対二で宜しいですか?マッキー?」
初対面で僕のあだ名呼びはちょっとアレなんだけど寛容な精神で許して差し上げましょう。
「オッケーだよ。そっちは?」
「いえ?ならいいんです」
そして建物に踏み入れ、建物に入った瞬間に空間が変化しRealの接続画面に繋がった。Realの端末はその文化文明ごとに形態を変える。この変容は、僕たちの世界のレベルを凌駕してる。
「二体一。まぁ。…ちょっとした余興ですが、楽しませてくださいね」
ちらっと隣を見たら、ビッキーがブチギレ過ぎて引き攣らせた顔面から涙を流してた。