エピローグ 偉大なる勇者の休日
「はは、なかなか面白いダンジョンだったね。クリーミーだったよ」
家系ラーメン食べたみたいな感想を王様は言う。実際のところは二日かかるダンジョンを一時間で踏破した後の感想である。Realだとレベル1000以上は同じであり、そこから先へは回数をこなしてから少しずつ更に難しくなってくダンジョンが開放されるというシステムが用いられてる。ランカーというかトップのプレイヤーは千年かかるダンジョンに潜ってるらしい。本当に根っからの冒険好きだなと思う。家系ラーメンじゃなくても、ある程度息が上がったら満足してしまうのが心ってやつなんじゃないかと思う。きっとランカーのトップは満腹中枢がぶっ壊れてるに違いない。
「飯でも行きません?」
「飯。飯か?そうだねぇ。現在の受肉にした肉体はこの通りだ。胃だってこの通りのちっぽけなものだ。ドラゴンのように大地を喰らうなんてできないよ?」
「大丈夫です。僕はこの通りの平常なので」
平台の万花橋 アドベンチャー 無限の世界への架け橋、Realの作った空間
「何か食べたい物あります?」
「焼き魚とかいいな。よく川魚を焚き火で焼き仲間と食べた物だよ。丁度、この体で、最初の冒険だった」
懐かしげにそう言われた。色々あったのだろう。いろいろと。でも僕はこの人と戦ってアップアップしてる。クタクタなのである。情緒もへったくれもない。
「ぉ。人がいる!おーい!」
誰かがこちらに駆け寄ってくる。プレイヤーキラーか?プレイヤーキラーなのんか?今の僕は大分魔力を消耗してるから、手加減する余裕ないぞ。
「ほう!」
長帽子をしたどでかい胸の女性と世間話をした。昔はドギマギしたかもしれないけど、結婚したからだろうか。全然何も感じなかった。
「それじゃ、僕たちは食事に行きますので」
「はーい」
そして別れた。ずいぶん人懐っこい人もいるんだな。
「ここはレベル1000の領域だ。それでも、人がいる。不思議な物だな。折角だったんだ。一緒に食事しても良かったんじゃないか?」
「僕はもうヘロヘロですよ。ダウンプアも近い、王様大丈夫なんですか?」
「私は慣れてるからね。召喚し終えたアーティファクトも分解して再吸収することもやりながらやりくりしてる」
慣れてるなぁ。Realでのフリーマッチは無料で誰とでも簡単にデュエルモードやれるモードなんだけど、明らかに精神力は削られてる気がするんだよなぁ。疲れが残っちゃってるもん。素晴らしい体験、最高の光景も、輝く高みも見れた。これ以上無いのだ。
「マッキーの世界で食べないか?」
「いいですよ。川魚ですね」
川魚料理かぁ。山奥の料亭。牛丼とは違うしなぁ。
「あ」
そういえば。
「実家に行きます?僕の妻の方の実家は旅館業を経営してるんですよ。川魚もありましたよ」
「ほー。いいねぇ」