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エピローグ 偉大なる勇者の冒険・続続

僕の知らない早朝の風景をガラス越しで見てる。赤魔術師さんと喋りながら、柑橘系のジュースを飲む。


「勇者の選出基準は血によるものですが、厳密には同じ魂を持つ者が継承し、同一の存在が世界に敵対する存在を抹殺するというのが、勇者という職業なのですよ」


「同一の存在ですか?」


おもしろい意見だ。


「そうです。特定の領域に踏み込んだ存在は、職業として定められます。それからその後、その人間の子供は世襲制によって職業を継ぎでいていきます。魂の同一化というものをご存知ですか?」


「いえ。初耳です」


この世界では技術的な進歩はそこそこに、独自の観点から芽生える独特な観念があるようだ。


「父と母から生まれた血の繋がった子供が同一の魂を持つものとして捉えるように、ごく稀に祖父や祖母、あるいはもっと以前の先祖がその子供に先祖返りし、全く異なる存在に成ってゆくものです。例えば、通常魔力の色、五原色、白、青、黒、赤、緑は、それぞれの色は生まれてから変わることはありません。魂より派生する根源より出し魔力は、常に普遍なのです。それが、変わる。変わってしまう。それが、勇者の者であれば、凶兆。古よりの定めとして、世界を塗り替える存在と敵対すべく、旅をします」


「そういうことがあるんですか」


魔力の色が変わることが凶兆か。そういうこともあるのか。


「魂の同一化により、勇者さんの持つ魔力は自在に物質化することも可能です。性質面において強力で、他に類を見ません」


究極闘気カリスマのことだ。そこまでいってるのか。


「あなたと、あの小さい冒険者。あなた方がどういう存在なのかは分かりませんが、あなた達は私たちの持つ観念からあり得ない存在なのです。そのことが、とても興味深いとともに、大変恐れを持っています」


「どういうことですか?」


「あなたがた二人は、同一の魂を持っている。どういうことですか?」


なるほど。ただ、それを説明はできない。この世界に、特別の爪痕を残すべきじゃない。僕たちは旅人であって、この世界に根付く存在じゃない。内政干渉になるだろうし、僕とヴァミリオンドラゴンのことを喋ってしまうと、この世界は根本的に変わってしまうだろう。それこそ、僕がこの世界を塗り替える、つまり敵対するような存在になってしまう。僕は旅人でいるべきなのだ。


「大きな大変なことがあってね。僕とヒーラーは融合したんだ。その結果だね」


「融合?」


怪訝な顔をされる。


「言い方が悪かったかもしれない、奇跡が起きたんだよ」


「奇跡…」


もっと怪訝な顔をされる。


「もっと言えば運命かな」


「運命…。融合も奇跡も運命も、私は何一つ信じてませんが、それがあり得るということなのでしょうね」


「うん。僕も彼と出会う前は何一つ信じていなかったよ。奇跡も魔法もあるなんてね」


「え?それは日常的に…」


「いや、それはこっちの話だった。えっと。そういうことだねつまり。疑問は氷解したかな」


「うーん。納得はできないけど、レアケースということですね。ご出身はどこですか?」


佐賀県か。東京か。日本か。地球か。本籍地は佐賀県である。


「佐賀県だね」


生まれ育った場所で、生まれた病院があるところ。


「サガケン。知らないですね」


「大分遠いですから」


「それにしても、二人ご一緒にヒーラーなんて、どういうことなんですか?」


「うーん」


僕はヒーラーと言っても、攻撃も出来る。僕みたいになってくるとジョブの概念がほぼ無くなるんじゃないだろうか。


「傷つけるより、癒す方が得意だからかな」


マスターのセリフを借りておこう。


「そうなんですか。なんだか私が、あなた方をひょっとしたら凶兆かもしれないなんて思ってましたよ」


「あはは…。それはナイですねぇ」


いや。実際この世界の災厄になったであろうドラゴンをうっかり倒してしまったのだ。この世界の正義の燻りの行き先を停滞させるという意味では十分問題である。どうしようか。ちなみにこの人、さっき僕を半分本気で攻撃して様子を見てたな。


「…」


どこから持ってきたのか。階段からヴァミリオンドラゴンがパジャマ姿でやってきた。


「楽しそうだなあ」


そんなことを思ってる。大人の辛さが、今、なんだか分かってきたよ。これも父親になる試練として受け取った。

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